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モーター スポーツ コラム 2024年6月27日

キャシディが世界チャンピオン獲得に向けて勝ちたい1戦 | FIA フォーミュラE世界選手権 2024 第13戦&14戦 ポートランド プレビュー

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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現在ランキングトップのニック・キャシディ(ジャガー)

現在ランキングトップのニック・キャシディ(ジャガー)

残すところ2ラウンド4レースとシーズンが大詰めの「フォーミュラE世界選手権」。電気自動車のフォーミュラカーシリーズの記念すべき10年目のシーズンを制するのはいったい誰か?今回はアメリカ合衆国・ポートランドで開催される「Portland e-prix」のプレビューをお届けしましょう。

前戦の上海(中国)に続いて、今回の舞台もパーマネント(常設)コースでの開催です。今季の「フォーミュラE」は常設サーキットでの開催が増加。ポートランド(アメリカ)での開催は昨年に続いて2回目となります。インディカーシリーズの開催地としても知られ、2018年には佐藤琢磨が優勝したことでも有名。インディカーで使用するグランプリコースより少し長い3.19kmのコースレイアウトを使い、今年は2レース制で開催されます。

昨年1レースのみ開催されたポートランドのレースで優勝したのはニック・キャシディ(ジャガー)。昨年はジャガーサテライトチームのエンヴィジョン・ジャガーで走っていましたが、チャンピオン獲得への希望をつなぐシーズン3勝目をここポートランドでマークしました。

唯一のポートランドウイナーでもあるニック・キャシディ(ジャガー)は今季からワークスチームの「ジャガー」に昇進。もらい事故でノーポイントになってしまったレースもありましたが序盤から表彰台の常連となり、ベルリンでは今季2勝目をマーク。コンスタントにポイントを重ねてシリーズランキング首位につけています。

追いかけるパスカル・ヴェアライン(ポルシェ)は前戦・上海の第12戦ではリアタイアを後方のマシンに引っ掛けられてタイヤにダメージを負い緊急ピットイン。ポイント獲得圏内から陥落し、今季2度目のノーポイントレースを作ってしまいました。これでニック・キャシディ(ジャガー)=167点、2位のパスカル・ヴェアライン(ポルシェ)=142点とその差は25点に拡大。状況によってはポートランドでチャンピオン決定の可能性も出てきました。

ニック・キャシディ(ジャガー)

ニック・キャシディ(ジャガー)

ポートランドの第14戦を終えて両者の間に59点の差がつけば、ニック・キャシディ(ジャガー)のチャンピオンが決定します。両者とも安定して上位フィニッシュするトップドライバーですから、ポートランドでのチャンピオン決定は現実的ではありませんが、ニック・キャシディ(ジャガー)にとっては昨年の優勝に続き今季3勝目、4勝目を飾りたいコース。崖っぷちに立ったパスカル・ヴェアライン(ポルシェ)にとってはなんとしてもキャシディの前でフィニッシュしなければならない闘いです。

ランキング3位は上海で優勝したミッチ・エヴァンス(ジャガー)=132点、4位はオリバー・ローランド(ニッサン)=131点とこちらはポートランドの成績次第ではチャンピオン争いから脱落してしまう可能性が高まってきました。今季もウイナーが8人誕生し、レースごとに戦況が変わる状況は変わりありませんから、ここで勝利して最終ラウンドのロンドンに望みを繋げたいところでしょう。

チャンピオン争いを展開するドライバーたちにとって厄介な存在が、後半戦になって急に調子を上げてきている伏兵たちです。シーズン前半戦は思ったような結果が得られずチャンピオン争いからは脱落状態の選手が上位フィニッシュを果たすと逆転のチャンスが潰えてしまうからです。

上海の第12戦で表彰台を獲得したのはジェイク・ヒューズ(マクラーレン・ニッサン)。今季2年目のシーズンとなるヒューズは上海で通算3回目のポールポジションを獲得。一発の速さを決勝での強さに活かせずにいましたが、上海でようやくフォーミュラE初表彰台となる2位フィニッシュを果たしました。

ヒューズは昨年のポートランドで決勝での結果は残せなかったものの、予選ではトップ8のデュエルに進出。マクラーレン・ニッサンは2台ともデュエル進出を果たしているので良い結果が期待できそうです。

昨年は初開催だったということもあり、ポートランドでは予選でインディカー関連のチーム「マクラーレン・ニッサン」「DSペンスキー」「アンドレッティ・ポルシェ」らが躍進。インディカーで持っている路面データの強みが結果に出た形となりました。しかし今季は2年目ということもあり、その優位性はリセットされるかもしれません。

ただ、「アンドレッティ・ポルシェ」に今季移籍したノルマン・ナトは予選番長という印象が強いのですが、彼も上海・第12戦で今季初表彰台を獲得しました。ニッサンドライバーだった昨年もデュエル進出を果たしていますし、良いデータがあるはずのアンドレッティからの参戦ですからチームとしても期待でしょう。

日本のレースファンとしてはやはりニック・キャシディ(ジャガー)のチャンピオン争いが気になるところでしょう。ポートランドの1コーナーはF1イタリアGPのモンツァのようなシケインになっており、インディカーでは接触事故発生が恒例。キャシディにとって人生で最も重要なレースになるかもしれない一戦をお見逃しなく。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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