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日本人ライダーで参戦するチーム・エトワールに期待! | FIM 世界耐久選手権(EWC) 2024 第2戦 スパ・フランコルシャン8時間耐久ロードレース プレビュー
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシFIM 世界耐久選手権(EWC) 2024 第2戦 スパ・フランコルシャン8時間耐久ロードレース
「鈴鹿8時間耐久ロードレース」(鈴鹿8耐)を含む全4戦で争うFIM EWC(世界耐久選手権)の第2戦がベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットで開催されます。「J SPORTS」では今季も4戦で開催される2輪の耐久レースシリーズを放送。今回は6月8日(土)に開催されるFIM EWC第2戦「スパ・フランコルシャン8時間耐久レース」のプレビューをお届けしましょう。
レースイベントのタイトルの通り、今年のスパは24時間レース改め8時間レースに短縮されました。2022年、23年と2年開催されたスパ24時間でしたが、流石に1シーズン4戦中3戦が24時間レースとなるとコスト面はもちろん、マシンへの負担が大きいこともあるのか、今季はフランスでの第1戦ル・マン、第4戦ボルドール(ポールリカール)が24時間レース、そして第2戦スパフランコルシャン、第3戦鈴鹿が8時間レースというシリーズ構成に改められました。
24時間耐久レースはマシンへの負担も大きく、パーツのライフサイクル的にもほとんどが使い終わってしまうことになるでしょう。次のレースに向けては多くのパーツを新しいものに交換せねばならず、レースから2週間後に鈴鹿8耐の合同テストがあり、さらに今年は6週間で鈴鹿8耐本番がやってくることになりますから、ヨーロッパのレギュラーチームは準備が大変です。
シリーズとしてはできる限り鈴鹿8耐をスキップせずに全戦出場して欲しいという意図があるでしょう。近年はコロナ禍だったこともあり、鈴鹿8耐に参加する年間参戦チームは少なめでした。円安の今だからこそ海外チームは鈴鹿に来たいはずですよね。今年はポイントの割合的にも鈴鹿8耐はスキップできない状況ですから、夏の8耐には昨年以上の年間エントリーチームの参加が期待されています。
さて、4月のル・マンで開幕したFIM EWC。ル・マン24時間レースは稀に見るサバイバル戦となりました。序盤から優勝候補の「F.C.C. TSR Honda France」(ホンダ)、「Yoshimura SERT Motul」(スズキ)らのトップチームに転倒が発生し、「YART YAMAHA」(ヤマハ)がレースをリード。8時間経過時点では「YART YAMAHA」(ヤマハ)がトップを走行します。
しかし、夜明け前の16時間経過を迎える直前にトップを走行する「YART YAMAHA」(ヤマハ)が転倒。序盤の転倒で優勝から遠ざかったかに見えていた「Yoshimura SERT Motul」(スズキ)がトップを奪い、淡々と2位を走行していた「BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」(BMW)に1周差をつけて逃げ切り優勝を果たしました。転倒しても諦めずにトップを奪いにいく、まさに24時間耐久レースのスピリットに溢れた「Yoshimura SERT Motul」(スズキ)の優勝でした。
「Yoshimura SERT Motul」は今年、MotoGPのテストライダーなど長年スズキを支えたシルヴァン・ギュントーリが離脱して「BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」に移籍。戦力的には厳しくなったところに、昨年の鈴鹿8耐に「オートレース宇部 Racing Team」から出場して高評価を得たダン・リンフットを加入させました。昨年の鈴鹿でも安定した走りを披露したリンフットの活躍はかなり大きかったと思います。スズキがワークス活動を行なっていないためメーカー側からのアップデートが無い状態。苦境の中、さらに有力ライダーを欠くという事態を見事に救いました。
一方で、ライダー編成を変えずに挑んだ「F.C.C. TSR Honda France」でしたが、マシンのダメージを修復できずにリタイア。僅か5点の獲得に留まり、ランキング11位に沈んでしまいました。もうここから8時間レース2つ、そして最終戦のボルドール24時間で表彰台を狙う位置に常にいないとシリーズチャンピオンは厳しい状態に追い込まれたのです。
ランキング首位は「Yoshimura SERT Motul」(スズキ)=61点、2位に「YART YAMAHA」(ヤマハ)=52点、3位に「BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」(BMW)=51点と開幕戦のル・マンを終えた時点では割とポイント差が少ない状態です。上位3チームにとってスパ8時間は非常に重要。スプリント耐久的なレースの中、ハイペースで走行し優勝を狙ってくることでしょう。ドライコンディションであれば、日本のブリヂストンを履く「Yoshimura SERT Motul」、「YART YAMAHA」、そして「F.C.C. TSR Honda France」が優勢でしょう。
しかし、山間部の変わりやすい天候でお馴染みのスパでは雨のレースになったらUKダンロップのタイヤを使う「BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」が優位に立つかもしれません。EWCクラスの選手権ポイントをどのチームがリードして鈴鹿8耐に来るのか目が離せません。
EWCクラスと同時に、SST(スーパーストック)クラスの優勝争いでは日本人チームの「Team Etoile(チーム・エトワール」(BMW)に大いに期待が持てます。ル・マンでは初出場ながら一時クラス5位を走行する素晴らしいパフォーマンスを披露しましたが、エースの亀井雄大が転倒し、修復不可能と判断してチームはリタイア。ほろ苦いデビュー戦となってしまいました。
しかしながら、テストや予選から日本のライダーたちは速さを披露。改めて国内の全日本ロードレースを戦うライダーたちの高いパフォーマンスを見せつけてくれていました。今回のスパ8時間は渡辺一樹、亀井雄大、大久保光というチームのエース級3名がレースを走ることになり、ル・マン以上に期待が持てるレースと言えるでしょう。渡辺一樹は昨年もFIM世界耐久選手権を戦っていましたし、大久保光は長くヨーロッパでのレースを続けています。経験豊富な2人が走ることは大きな強みです。ぜひ積極果敢なレースをしてクラス優勝を狙って欲しいものですね。
また、このチームには鈴鹿8耐に昨年から参戦し始めた「Taira Promote Racing」の若きスタッフたちが派遣され、メカニックとして活躍しているのも特徴です。Taira Promoteはチームメンバーの平均年齢が25歳ほどという超フレッシュな若手中心のチームで、今後の全日本や鈴鹿8耐を担う若者たちの集まりです。
「Team Etoile」の市川貴志代表には若い世代に多くの経験を積んでもらいたいという思いがあり、わざわざ日本からやってくる彼らを迎え入れ、共にレースを戦っています。ル・マン24時間にもその若きメンバーたちが参加していましたが、疲れも見せず、鈴鹿の地方選手権、全日本テスト、全日本ロードレース本番と自分達のレースやチーム業務をこなし、また渡欧するというタフネスぶり。若いから体力もあるのですが、ハードスケジュールでもいつも楽しそうにレースを頑張っているのも好感が持てます。上位を走る局面であれば国際映像に写るかもしれないので、日本の若きサムライたちにも注目してみてください。
そして、若きサムライといえば、日本人ライダーの一人、綿貫舞空がSSTクラスの「3 ART BEST OF BIKE」(ヤマハ)から参戦し、ル・マンでクラス3位表彰台を獲得しました。世界耐久のSSTクラスでは渥美心(現Yoshimura SERT Motulリザーブライダー)以来の表彰台。ル・マンではEWCクラスで3位になった渡辺一馬以来の日本人の表彰台でした。
綿貫舞空は昨年まで全日本ST1000クラスに参戦。非常に小柄なライダーで、日本では1000ccクラスでなかなか結果が残せませんでした。ヨーロッパのライダーたちとライディングポジションを合わすのはさらに大変かと思いますが、そんな中で粘り強い走りで結果を出しました。今回のスパは急坂オールージュをはじめ難所だらけのコース。シリーズの中でも特異なレイアウトのコースですが、ぜひここでも結果を残して今後に繋げて行って欲しいですね。
第3戦・鈴鹿8耐に向けても、Team HRC(ホンダワークス)から現役MotoGPライダーのヨハン・ザルコの参戦が決定したり、スズキがエクスペリメンタル(実験車)クラスでワークス参戦したりと色々話題も増えてきています。近年、鈴鹿8耐でも重要度が高まるFIM EWC年間参戦チームのポテンシャルを知るという意味でもスパ8時間は見逃せないレースと言えますね。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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