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小暮卓史選手(No.88 JLOC Lamborghini GT3)「ドライバー交代をする前はすごく緊張した」 | SUPER GT 2024 第2戦 富士【SUPER GT あの瞬間】
SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子小暮卓史選手(No.88 JLOC Lamborghini GT3)【写真右】
「あのとき、何があったの?」__ レースウィークの出来事、ドライバーに話してもらいたいと思いませんか? タフなレースを終えたドライバーに改めて話を聞く「SUPER GT あの瞬間」。2024年シーズンもレースの舞台裏に着目し、ドライバーの気持ちをコラムでお伝えします!
昨シーズン最終戦でチーム移籍後初優勝を果たしたNo.88 JLOC Lamborghini GT3の小暮卓史選手。今シーズンはさらにクルマのポテンシャルが向上、開幕戦から手応えある戦いを見せている。迎えた第2戦富士では、予選から速さを披露して独走勝利。元嶋佑弥選手とともにGT300クラスで初のポール・トゥ・フィニッシュを達成した。今シーズン、チーム悲願のクラス王者目指す小暮選手に勝因を訊いた。
── 昨年の最終戦に続いて、GT300クラスでの自身2勝目はポール・トゥ・ウィンという理想的な形でしたね。
小暮卓史(以下、小暮):この状況を作ってくれた則竹(功雄)代表をはじめ、チームの方々には本当に感謝してます。個人的にもうれしいですし、昨年度の最終戦の優勝からあまり時間が経っていないなかで優勝できたので、多少の驚きもあります。とにかく、いろんなことに感謝ですし、ほんとにうれしいですよね。
── ポール・トゥ・ウィンも、2018年の岡山(No.17 KEIHIN NSX−GT)以来です。
小暮:そうですね。今年の予選方式になって、ポールポジションはどちらかの選手だけでなく、ふたりで獲ったことになるので、今までのSUPER GTとはちょっと意味合いが違ってきますよね。ふたりが協力しあって獲ったことになるので、余計にうれしいです。
── まず公式練習ではトップからわずか0.086秒差の2番手。予選はQ1担当の元嶋選手がグループトップ通過。Q2担当の小暮選手はユーズドタイヤで、Q1のタイムも上回るタイムをマーク。どんなアタックでしたか?
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小暮卓史選手(No.88 JLOC Lamborghini GT3)「ドライバー交代をする前はすごく緊張した」 | SUPER GT 2024 第2戦 富士【 #SUPERGT あの瞬間】
小暮:富士は、僕が得意としているサーキットではないのですが、相方の元嶋選手はすごく相性がいいと言うか、富士が速く、得意にしるんです。なので、Q1で元嶋選手が結構いいタイムでトップだったので、僕としてはかなりプレッシャーを感じましたし、ドキドキしたんです。ただ、実際走って大きなミスもなくしっかり走れたので。特に(予選結果は)ふたりの合算タイムなんですが、自分がトップで終えられるっていうのはデカいと思うので、結果的にトップが獲れてすごくホッとしました。
── そのぐらいプレッシャーがあったんですね。
ポールポジションを獲得
小暮:ありましたね。やはり後乗り(Q2担当)のドライバーは特にそうなのかもしれないですが、初めに乗る(Q1担当)ドライバーのタイムに目が行っちゃうので、自分でコケない(失敗しない)ようにと、良からぬことをいろいろ考えてしまうので。特に相方がトップで通過したら、自分自身もなんかやっぱりトップで通過したいと思うのが普通なので。
── 岡山とはアタックする順番が変わりました。岡山では、小暮選手がQ1を担当。今回なぜ変わったのですか?
小暮:昨年度までは僕がQ2を担当することがすごく多かったんです。今年はQ1担当がニュータイヤを履くっていう状況なので、やはり得意なドライバーが(Q1を担当して)ニュータイヤを履こう、と。もちろん、Q2も重要なのでなんとも言えないところなんですが、今回の富士に関して言うと、元嶋選手がすごく得意で好きなサーキットだと言ったので、元嶋選手がQ1に行ったんです。
── 昨シーズンの第4戦富士でクルマがEVO2にアップデート。その後迎える初の富士戦でしたが、クルマはどう進化・変化していますか?
小暮:今回までにテストが何回かあったので、テストのデータを元に、タイヤを含めてアジャストしました。あと、ルーバー……ラジエターからの熱の排出口のパーツを今回新たなものにしました。大きなところで言うとそのふたつですかね。クルマ自体はどんどんセッティングを煮詰めていますが、EVO2用のルーバーが本来あったんですが、(第1戦岡山では)まだついてない状態だったんです。 今回、それを装着したんです。
── 装着パーツというのが、例の”あれ”ですか? 則竹代表が前日に名古屋のセントレア空港まで取りに行ったという?
小暮:そうです、そうです! (則竹代表に)取りに行っていただきました。(パーツがサーキットに)到着したのがもう結構夕方遅くて。で、チームの人たちが早速フィッティング作業して、着けてつけてくれたんですけど、すんなり着くものでもないし。パーツが到着したのがギリギリっていうか……もし、次の日だったら、もう(レースに)間に合ってなかったわけです。なので取りに行ってくれた則竹さんにも感謝したいですね。
── 今回のレースは、SUPER GT初の3時間という時間制のレースになりましたが、チームとしての戦略はどのようなものでしたか? 意識したライバルはいましたか?
小暮:同じヨコハマ勢としては4号車(グッドスマイル 初音ミク AMG)が近く(予選2位)にいましたし、彼らは決勝レースが速い、強い、という意識がありました。実際やっぱりレースも速かったですね。それだけでなく、56号車(リアライズ日産メカニックチャレンジGT−R)も来るだろうし、手強いライバルになるだろうなと思っていました。また、ブリヂストン勢でが実際に52号車(Green Brave GR Supra GT)がタイヤを交換しなかったし。僕たちの戦略は、(ファーストスティントに続いて)セカンドステントを元嶋選手、最後のスティントを僕が担当するという形で、ひとりのドライバーが2時間以上乗っちゃいけないので、そこらへんを調整しつつ、とりあえず周りのクルマとの状況を見ながら戦略を進めていこうという流れでした。
── レース展開を見る限りは、チームとして理想的な形で、後続とのマージンも開いていたように見受けられました。一方、優勝会見では、元嶋選手が「20秒以上後ろのクルマとマージンがなければピットストップでタイヤを4本替えない」みたいな話があったと話していましたね。
小暮:うしろ(後続車)とのマージンが少ないときは2本交換ですが、マージンを築けたのならば4本交換した方が確実ですよね。4本交換の戦略を採れるためにも、うしろとマージンを築くようにチームからはオーダーを受けていました。元嶋選手が(十分なマージンを)築いてくれたら僕のスティントでも4本交換ができるので、心の中で「マージンを築いてきてくれ」という思いでいましたね。
── 後続との差も開き、文句なしの理想的なレース展開だったと思いますが、残り1時間、自分自身のスティントとなれば、プレッシャーも大きくなりましたか?
小暮:最後まで気が抜けないですし、自分が何かしてどうにかなってしまったら、もうすべてが台無しなのでプレッシャーはありました。どんどんどんどん築き上げてきたおのが積み重なって、最後に優勝……というふうに手が届くわけで、それを壊すわけにもいかない。むしろもっと積み上げていきたいという思いもありました。なので、やはり交代する前はすごく緊張しました。ただ、実際にヘルメットを被ってドライバー交代をして乗り出したら、もう走るだけ、集中するだけなので、いつも通り走りました。クルマもすごく速かったので、ギリギリのところでプッシュをして。でも、いろんなことを考えながら走ってました。タイヤを壊さないようにとか、クルマを壊さないように、燃費も……悪くならないようにっていうようなことをいろいろ考えながら。後続とは余裕があったので、確実に走ることができたんじゃないかなと思います。
── 元嶋選手は、小暮選手が走ってるときが一番ドキドキしたと優勝会見で言っていました。コース上では、ヒヤリとしたり、ドキリとしたりすることはなかったですか?
小暮:乗ってからはあまりなかったですね。ただ、自分たちのペースがすごく速かったので……。これはありがたいことなんですけど、周回遅れのクルマがいたときは、やっぱりドキドキしましたね。抜かすときにタイムロスも多少するじゃないですか。結果として、うしろ(後続車)が近づいてくるので、そこらへんはちょっと唯一ドギマギしたところではあったんですけど、それ意外は普通に淡々と走ってました。特には問題はなかったです。
── 改めて今回の勝因はどこにあるとお考えですか?
小暮:まずはクルマのパフォーマンスが高かったこと。それと、タイヤマッチングがすごく良かった。このふたつがものすごくデカいですよね。今回はヨコハマタイヤさんがすごくがんばってくれて、いいタイヤを提供してくれました。クルマもさきほど言ったように、則竹さんが取りに行ってくれたパーツ含め、全体がちょっとずつ高いレベルに上がったことで、結果的にすごくハイレベルのポテンシャルになったこともデカかった。もちろん、元嶋選手や僕はミスなくクルマの能力を発揮できたことも大きいとは思うんですが、やはりクルマがポテンシャル以上の力を……(出してくれた)。僕たちが乗っているクルマのポテンシャルが高いっていうのがすごくデカい(要因)です。
No.88 JLOC Lamborghini GT3
── 次の鈴鹿は52kgのサクセスウェイトで再び3時間レースとなります。どんなレースにしたいですか?
小暮:今回の優勝でポイントも多く獲れたので、ここからまた違う戦いが始まるんじゃないですかね。重いながらも粘り強く、諦めないでどこまでポイントを増やしていけるか、だと思います。ただ、優勝できたので、心理的ストレスは少なくなりました(笑)。ただ、シリーズ(タイトル)を考えると、全然気は抜けなくて。特に鈴鹿は(サクセスウェイトが)52kgなんですけど、むしろこの重い状態でどこまでいけるのかがポイントだと思います。ちょっとでもセッティング(を活かして)有利になるように仕上げたいです。
── では、最後に。今一番興味・関心のあることは何か、教えてください。
小暮:僕、オートバイに乗るんですよ。で、オートバイのツーリングによく行くんですが、今まで片道250kmぐらい、1日で500kmぐらい走ってたんですね。ただ、最近日帰りでしか行ってないので、泊まりでどこまで行けるのかなっていうことにすごく興味ありますね。バイクは全然速く走るわけじゃなく、トコトコトコトコゆったりゆったり走るんですけどね。
── ちなみに、今、乗ってるバイクは?
小暮:いろいろあります。今一番ハマってるのは、ちょっと古くて……ツーリングに行くときはスズキのGSX1400というやつが多いんですけど、ヤマハのTZRという、もう昔のね、後方排気の2ストロークのバイクですかね、それを買いまして。すごく官能的なバイクでハマってます。チューニングとかはできないんですけど、走り終わった後はカウル拭いたりとかホイールを磨いたり、キレイにして満足感を得てます。
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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