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堤優威選手(No.2 muta Racing GR86 GT)「タイヤ無交換をやり切り、タイヤを持たせられたことが勝因」 | SUPER GT 2024 第1戦 岡山【SUPER GT あの瞬間】
SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子開幕戦で勝利したNo. 2 muta Racing GR86 GT
「あのとき、何があったの?」__ レースウィークの出来事、ドライバーに話してもらいたいと思いませんか? タフなレースを終えたドライバーに改めて話を聞く「SUPER GT あの瞬間」。2024年シーズンもレースの舞台裏に着目し、ドライバーの気持ちをコラムでお伝えします!
昨シーズンは3回の2位獲得ながら、タイトルを逃して悔しい思いをしたNo. 2 muta Racing GR86 GT。今年こそGT300クラスチャンピオンを! と強い気持ちで初戦に臨むこととなった。決勝はタイヤ無交換によるタフな戦いを制して勝利した堤優威選手選手に、その“舞台裏”を語ってもらう。
── 開幕戦でクラス優勝を達成。最先良いスタートになりました。
堤 優威(以下、堤):僕自身、三年目のmuta Racing INGINGで二勝目かな? 僕自身二年ぶりの優勝だったんですけども、2023年のシーズンが勝てそうで勝てない、なおかつシリーズチャンピオンまであと一歩(ランキング2位)というところで非常に悔しいシーズンを過ごしました。「2024年は絶対チャンピオンを獲りに行く」という強い気持ちで、チーム一丸となって迎えた開幕戦でしたが、今年から予選方式が変わり、各チームいろいろ難しいところはたくさんあったと思います。今回は僕ら2号車にとって非常にいい予選方式だったし、またタイヤ無交換で行った決勝の展開もそうですが、いろいろ重なってなんとか逃げ切れた形で、非常に嬉しく思います。
── 平良 響選手とのコンビ初優勝となりましたが、レース後、ふたりでお祝いはしたのですか?
堤:平良選手はSUPER GT参戦してから初めての優勝ということで、非常に喜んでました。「どこかでお祝いしましょうよ」って言ってましたが、まだそんな時間がないので、レース後、加藤(寛規)監督にお寿司をおごってもらって帰りました。岡山駅のお寿司屋さんのカウンターで、3人で並んで食べましたね。
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堤 優威選手(No.2 muta Racing GR86 GT)「タイヤを持たせられたことが勝因」
── 昨シーズンはランキング2位と悔しい結果でした。タイトル獲得に向けて、堤選手自身はどのような準備をしてきましたか?
堤:昨年の最終戦の予選でポールポジションを獲って終われたので、速さにはすごい自信があったし、今年、チャンピオンを獲るために(自分が)特にしたことはないんです。ただ、速いからといって油断はせず、逆に気を引き締めて開幕戦を迎えるという感じでした。チームのみんなもそんな気持ちで挑んでいたと思います。
── 平良手とはコンビ2年目。ドライバー同士のコミュニケーションもずいぶん潤滑になっているように感じます。周りから“兄弟みたい”と言われることも増えたのでは?
堤:平良選手とは歳も近く、ふたりともまだ20代同士。趣味とか、結構気が合うところもあるし、沖縄出身の彼はゆったりしているというか、独特な雰囲気があって非常に可愛らしいところが多いんです。去年からプライベートでも遊んでいるし、チームワークとしてはすごくいいと思います。今回の岡山では、髪色を変えてくるあたりとか真似してますし(笑)、非常に仲がいいと思われてます。実際に仲もいいですね。
── 公式練習から予選に向け、2号車としてどうアプローチしていこうという話になりましたか?
堤:公式練習のザルトは4番手で、確か(チームベストタイムは)僕が走行開始10分ぐらいで出したタイムでしたが、(前方車両に)引っかかったもの。それがなければトップのスバル(No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT)と同じぐらいだったと思うので、チームとしては前向きでした。あと、今回からタイヤの持ち込み数が4セットに変更されたのですが、僕らはちょっと硬いタイヤを選んでいました。決勝での(タイヤ)無交換だったり、予選のQ1、Q2を走るに当たって、硬いタイヤで速く走れるようにという考えだったので、予選に向けて、練習走行中に決勝のロングデータを見ることができたし、GT300クラスの専有走行では、ニュータイヤを入れてそれぞれ予選のシミュレーションもできたので、タイヤ選択もいい流れでできました。
No. 2 muta Racing GR86 GT
── 予選Q1のB組では、担当した平良選手がトップタイム。続くQ2のグループ1には堤選手が出走し、アタックを担当。ユーズドタイヤでの初アタックはどんな感じがしましたか?
堤:GT300とGT500両クラスのQ1のあとは、路面コンディションの向上がすごいあるんです。公式練習でシミュレーションもしたんですが、そのときとは全然違う路面でした。Q1のタイムを見てもみんな速かったですよね。平良選手も(1分)25秒985と速いタイムを出していたので、路面コンディションがいいんだろうなと思ったんですが、そのなかで中古タイヤでアタックするのが初めてだったので、手探りではありましたが自分のなかではほぼ完璧なアタックができました。
── そう思えば思うほど、Q1とQ2のタイム合算の結果として、65号車との0.067秒差はとても悔しい思いがしたのでは?
堤:正直、ライバルはスバルかなと思っていたんですが、LEON(No.65 LEON PYRAMID AMG)の蒲生(尚弥)選手が非常に速いタイムで……。もう中古タイヤであんなタイムを出されたら無理だよね、って言うぐらい速いタイムを出されちゃった。自分的にほぼ全力でアタックしたし。まぁ敢えて言うと、ベストタイムのときのセクター3でちょっとリヤが出てしまったので、それがなければ勝てた(速かった)かな。悔しい気持ちはありましたが、シリーズ争いを考えても予選2位は別に悪くない結果なので、自分たちの全力を出し切ったという意味では、良かったと思います。
── 去年はポールポジションを獲っても2位という結果があったので、今年は逆に「2位から優勝!」と話していました。まさに有限実行の勝利でした。ずばり今回の勝因は?
堤:ブリヂストンタイヤさんのおかげです。もちろん、クルマやブレーキはじめ、いろいろと進化しているんですが、GT300クラスでは、今回ブリヂストンタイヤ勢が結構上位に来ていました。もちろん、コンディションの関係もあると思いますが、タイヤ無交換をやり切って、なおかつタイヤを持たせられた、そこが勝因かなと思います。
── 32周終わりでピットイン。このタイミングは作戦どおりでしたか?
堤:ピットウィンドウとしてはもう少し早めに入れたんですが、ペースも悪くなかったし、LEONに付いていけていたので、もうちょっと(ピットインのタイミングを)引っ張ろうかという考えもありました。でも、GT500クラス車両が間に入って少し差が開いたこと、さらに数周後、ピット作業を終えてコースに戻ったGT300クラスのグループが前にいたことで、LEONがそこに捕まってタイムロスをしていたんです。それを見て、ピットに入ることになりました。チームの判断も良かったです。
── 昨年は決勝で迷わずタイヤ無交換を選択するチームも多かったのですが、レギュレーションが変わった初戦では、GT300クラスといえどもコンディション次第で何が起こるかわからないという心配要素がありました。どんな思いで走り始めましたか?
堤:正直、レース中のコンディションだったり、今年からGT300クラスにもCNF(カーボンニュートラル燃料)……GT300クラスも合成燃料50%を混合したもの(GTA R50)を使うようになって、ちょっと路面コンディションが今までより難しいコンディションになって。そのなかでの無交換には大きな不安もあったし、セカンドドライバーとしては本当に(タイヤが)持つのかなっていう印象があったんです。でも、いいクルマとタイヤのおかげでなんとか持たせることができて良かったです。作戦としては、(タイヤ)無交換だけでなく、他のライバル勢の動き次第では、タイヤを換えてもいいかなという感じでした。そうしたら、埼玉(No.52 Green Brave GR Supra GT)が(2号車より先に)無交換で(コースに復帰して)結構いいタイムで走っていたので、僕らも無交換じゃないと前に出られないということで無交換になったんです。ピットから出ると、路面コンディションの悪さと、中古タイヤ……なおかつそこにガソリンを積むわけで、チェッカーまで持たせるためにガソリン量が多いし、本当にこれであと40周? 45周ぐらい持つのか? と思いながらアウトラップを走りましたね。
── コースに復帰すると、同じくタイヤ無交換の52号車が65号車を押さえてくれていました。65号車だけでなく、52号車も迫ってくる、という気持ちもあったかと思います。
堤:こんな長い間、無交換で走ったことがなかったので落ち着かなかったですね。基本的に、埼玉は去年からすごいロングのペースが速かったし、実際(レース中の)タイムも速かった。少しのミスやGT500クラス車両が連なってきて状況が悪くなったりすると、タイムが一気に1秒、2秒とか落ちちゃうし、そうなるとあっという間に追いつかれるような距離感だったんです。でも、トップ走ってると、他の車両が結構優しく抜いてってくれるし、避けてくれたりとか、非常に走りやすい環境でもありました。
── 終盤、65号車が2位に上がってきました。タイム差はありましたが、どのあたりから上手くレースをコントロールできそうだという気持ちになりましたか?
堤:もう後半……というか残り5周ぐらいですかね。(49周終わりで)LEONがピットに入り、タイヤ交換してうしろに出てきたときには20秒ぐらい差があったんです。そのときは、まだ間に埼玉がいたので、「(52号車の)吉田(広樹)さん、ブロック頑張って!」と思いながら、僕も頑張って走ってたんです。でも予想以上に速いペースで(65号車の)蒲生君が追い上げてきて。もし、GT500クラス車両や周回遅れのGT300クラス車両に捕まったら、あっという間に追いつかれてすぐ抜かれるだろうなと思っていたので、安心できたのは残り4、5周ぐらいになってからだった気がします。
── 今回、レースウィークを通じて気温、路面温度が上がったこともタフな条件になりましたね。
堤:どのチームもあんなに暑くなるとは予想してなかったと思います。タイヤ選択はレース直前に変えれるものではなくて、1ヶ月前あたりからタイヤ屋さんと相談して、こういうレンジ(のタイヤ)を持ち込むって決めていますから。今回は、本当に予想以上に暑かったので、各チームすごい大変だったと思います。決勝では、埼玉のタイヤ(パフォーマンス)が落ち始めたのを聞いて、僕も(タイヤを)セーブしてたんですけど、本当残り2、3周かな? ぐらいからもう明らかに落ちてきちゃいました。(終盤の)FCYとか最初のSC(セーフティカー)がなかったら、ヤバかったなっていう感じです。最初のSCの時間も結構長かったですし、僕のスティントの途中のFCY……5号車(マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号)がちょっと動けなくなったときのFCYも、結果的には僕らにとって助けになりましたね。
マシンから降りて平良選手と喜びを分かち合う堤選手
── 外から見てると、今回は理想的なレース運びで独走の勝利、という状態でしたが、実際は、ヒヤヒヤドキドキ、大変な思いをしたわけですね。
堤:チームからも「安心して見てた」と言われたんですが、僕自身はもう常にフルプッシュだし、無線で「もっとプッシュして」って言われてるときは、「もうフルプッシュだよ」って返したかったけど、もうそれも言い返せないぐらいで(笑)。路面状況がすごく悪くて滑るし、非常に難しい状況で。もう、いっぱいいっぱいなんだけど、と思いながら走ってました。本当に疲れましたね。
── 堤選手にとっては孤独な戦いだったかもしれませんね。つらい展開を抑え切り、待ちに待った2年ぶりの優勝になったので、嬉しさは倍増だったのではないですか?
堤:やっと勝てたっていう印象が非常に大きいですが、展開的に、勝って当たり前と周りは思っているはずです。僕らとしても、大きなミスだったり不運がなければ勝てる展開だったので、嬉しさもありますけど、やはりほっとした気持ちが大きいですね。
── 続く第2戦富士は3時間という時間レースです。どのような戦いにしたいですか?2連勝の可能性もありそうですか?
堤:昨年までサクセスウェイトが1ポイントにつき3kgでしたが、今年から2kgに減って、第2戦は40kgちょい(実際は44kg)を載せるのですが、比較的富士は、僕らが得意としてるサーキット。ウェイト積んでいてもタイヤのマネジメントできるので、レース距離がロングになればなるほどいいのかなという風に考えています。今年、CNFやタイヤの持ち込み数など条件が変わったので、ちょっと難しいところもあるだけに予想はつかないけれど、ウェイトを積んでの長いレースは得意としてるので、なんとか大量ポイント獲得を狙って頑張りたいと思います。2連勝できればいいですけど、そんな簡単にはうまくいかないと思います。ただ、ブリヂストンタイヤ勢としては、今の予選方式は非常に有利だと思います。なので、そこを活かして前からスタートして、 展開によっては勝てたら嬉しいなっていうところですね。
── では、最後に、この企画恒例の質問を。今シーズンは「今、一番興味や関心のあること」を教えてください!
堤:興味というか関心というか、髪色落とさないようなカラーシャンプー、一番いいの教えてくださいっていうところですかね(笑)。今、すごい金髪になっちゃって……誰かに聞くのがいいかなって思ったんですけど、日産の3号車に乗っている高星(明誠)選手……ミツくんに、ちょっとアドバイスをいただきたいなってぐらい色落ちをしてるので、ちょっとそこが 興味あるというか、ヘルプな状態です。なんか開幕戦だから(チームの)mutaカラーというか、マシンのカラーに染めたんですが、色落ちしちゃってもうそんな雰囲気もないです。優勝だから金ということでちょうど良かったんですが、ゲン担ぎじゃないですけど、染めて勝ったんで染めなきゃなっていう気もしてます(笑)。(平良と)ふたりで次の富士は何色にしようか、ちょっと迷ってるんですけど、髪が抜ける前に遊ぼうかなって思って。人生最後のブリーチだと思います。
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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