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開幕戦で圧勝したTGR TEAM au TOM’Sの36号車
2024年のSUPER GTシリーズが開幕しました。
ボクのピットレポート担当は、主にGT500クラス。
そのクラス優勝は、TGR TEAM au TOM’Sの36号車。まさに圧倒的な速さと強さは、強烈でした。約1ヶ月前の公式テストとは気温、路面コンディション、特に温度は別物。それを読み、セットアップし、タイヤメーカーが供給してくれたタイヤとのマッチングを図ることに最も成功したことで圧巻の優勝を飾った。
新しいタイヤセット数規定、予選方式に対しても、他を圧倒してポールポジションを獲得してみせた。Q1を担当した山下健太選手が4番手だったが、Q2の坪井翔選手がQ1のタイムを更新して、合算タイムでトップへ。それもアタックラップの1コーナーでアウト側に左リヤを脱輪してバランスを崩し大きくタイムロスしながらもその後のセクターでタイムアップしていた。1コーナーのシーンを見た誰もが【終わった】と思った。コントロールラインを通過してトップに立ったその瞬間、観客席のファン以上にチーム内から怒涛のような歓声が沸いていた。
ポールポジションインタビューで満面の笑顔の坪井選手とその横には喜び30%、悔しさ70%のヤマケンがいた。新たな予選システムは、このようなドライバーによるチーム内で悲喜交々が起こる。レーシングドライバーの性。負けたくないというDNAはどうしょうもない。そこにある明と暗。
5番手グリッドからスタートしたTGR TEAM ENEOS ROOKIEの14号車は、岡山国際サーキットで2022年、2021年の開幕戦を制していて、岡山には自信を持っているチーム。同じメーカーのタイヤを装着しているクルマのなかで一番ソフトなタイヤを選択していた。序盤でトップに立つ展開を考えていたのだろう。しかし、1コーナーで他車と接触、モスS周辺で追突されて右リヤを大破してピットへ戻ってきた。スタートドライバーの大嶋和也選手は、チームのピットウォールで憮然とした表情で修復作業を見つめていた。レース後、追突したTEAM IMPULのベルトラン・バゲット選手がチームのスタッフに付き添われながら詫びに…。
11番手グリッドからスタートしたTGR TEAM Deloitte TOM’Sの37号車は、スタートドライバーの笹原右京選手がスタートから52周まで引っ張るという他チームとは逆の作戦で7位まで順位を上げた。そして終盤を受け持ったジュリアーノ・アレジ選手が快調なペースで順位アップをトライ。ヘアピンコーナーでNISMO NDDPの3号車に並んだ。しかし、その先、リボルバーコーナー手前でアウト側に押し出されるかたちでパッシングならず。ペースが良かっただけにそこで順位アップできていたなら5位フィニッシュも可能だったかもしれない。こちらもレース後に三宅淳詞と監督が詫びに来るというシーンがあった。
勝利の光が作り出す影は、勝負の世界では必然。
文:高橋 二朗
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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