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モーター スポーツ コラム 2024年3月23日

勢力図が大幅変化!カワサキがランキング首位に | FIM スーパーバイク世界選手権 2024 第2戦 カタルーニャ プレビュー

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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アレックス・ロウズ

サム・ロウズと健闘を讃えあうアレックス・ロウズ(左)

市販スポーツバイクをベースにしたモンスターマシンが争う「FIMスーパーバイク世界選手権(WSBK)」は2月末にフィリップアイランド(オーストラリア)で開幕。3月22日(金)〜24日(日)には第2戦がスペインのバルセロナ近郊にあるカタルーニャサーキットで開催されます。今季もJ SPORTSでは全12ラウンド(36レース)を生放送。今回は第2戦・カタルーニャ(バルセロナ)のレースプレビューをお届けします。

さて、開幕戦のフィリップアイランドはご覧いただけましたでしょうか? シーズンが蓋を開けてみての状況は開幕前の皆さんの予想と合致していましたか?

おそらくほとんどの方の予想を覆す結果になったと思います。史上稀に見る接戦と予測不能な混戦。今シーズンのWSBKは本当にワクワクする展開になりそうと予感させる開幕戦でしたね。

まず予想外だった要素としては、チャンピオンであるアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)の苦戦でしょう。去年まであれだけの速さを見せ、ストレート区間で大きなアドバンテージを持っていたドゥカティとバウティスタでしたが、勝つのはバウティスタとなんとなく分かる状況は無くなったように感じます。

今季からWSBKは新レギュレーションとしてライダーの体重に対するハンディキャップを設定。基準の体重は80kgとなり、体重が規定よりも軽いライダーは車両に決められたバラスト(おもり)を積まなくてはいけなくなりました。軽く小柄なライダーの優位性を抑え、大柄なライダーでも戦えるように調整しようというものです。しかしながら、これは体重が軽く小柄なバウティスタにとっては迷惑以外の何物でもありません。

そんなバウティスタはバラストを積むくらいならと体重増加のために筋トレ強化を行い、フィジカル面をパワーアップしてきたのです。小柄だったから勝てたと言わせないとばかりにレース2では優勝争いを展開。鼻差でアレックス・ロウズ(カワサキ)に敗れ2位となったものの、課せられたハンディキャップを打ち破る素晴らしいレースを展開しました。

波乱の要素2つ目はトップライダーの大型移籍が相次いだことによる勢力図の変化です。ジョナサン・レイがカワサキからヤマハに移籍。トプラク・ラズガットリオグルがカワサキからヤマハに移籍。そしてアクセル・バサーニもドゥカティからカワサキへと移籍しました。

移籍の後は新しい相棒(バイク)に慣れるまでに苦労するのが付き物ですが、特に苦戦したのはジョナサン・レイ(ヤマハ)でした。テストから上位に食い込んでこなかったレイでしたが、なんとまさかの3レース連続のノーポイントで終わるという結果に。チームメイトのアンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)が優勝争いを展開して2位が2回という結果を残しましたから、レイの苦戦はかなり深刻です。

トプラク・ラズガットリオグル(BMW)もテストから好調でしたが、決勝レースでは苦戦し、表彰台はスーパーポールの3位だけ。彼の速さが光り輝くにはもう少し時間が必要かもしれないという況が見えました。

波乱の要素3つ目はスーパールーキーたちの登場です。フィリップアイランドで最も光り輝いたのは昨年の「スーパースポーツ世界選手権」の王者、ニッコロ・ブレガ(ドゥカティ)です。レース1ではなんとWSBKのデビューウインを達成するという快挙を成し遂げました。

そしてもう一人はルーキーとは言えない実力の持ち主、元MotoGPライダー、アンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)。レース1ではフロントローからホールショットを奪うなど活躍し、3位フィニッシュ。ワークスチームではない環境であるにも関わらず、今季の怖い存在になること間違いなしの実力を見せたのです。

開幕前から話題の多い2024年シーズンでしたが、あーでもない、こーでもないという予想は見事に覆った開幕戦でした。最も大きなサプライズはベテラン、アレックス・ロウズ(カワサキ)の復活でしょう。これまでジョナサン・レイ(現ヤマハ)の影に隠れ、いつ何時カワサキのシートを失ってもおかしくないくらいにレイに差をつけられていたロウズがスーパーポール、レース2と勝利するとは誰が予想できたでしょうか。レイの抜けた穴は大きく、かつての輝きを失ったかに見られていたカワサキに明るい光が差した開幕戦でした。

アレックス・ロウズ(カワサキ)は2勝をマークし、ランキング首位でヨーロッパラウンドに挑むことに。問題はここからです。フィリップアイランドでロウズは過去に優勝を飾ったこともありますし、過去の結果を見ても相性は悪くないサーキットでした。カタルーニャはスーパーポールで1度3位というのがあるくらいでめちゃくちゃ相性が良いコースではないのです。ここでもロウズが速さを見せ、低調な成績に終わったチームメイトのアクセル・バサーニ(カワサキ)も良い結果を残せるか、見てみる必要はあるでしょう。

様々な要素が絡み合い大混戦となった勢力図はまた変化し始めるのか、今季のWSBKは史上最強レベルに面白い。毎レースが見逃せない戦いになりそうです。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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