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モーター スポーツ コラム 2024年3月8日

2024スーパーフォーミュラ開幕戦プレビュー|実質“冬の鈴鹿”で迎える開幕戦で勢力図が変わるか? 注目のJuju、デビュー戦での課題は?

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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注目を一身に集めているJuju

いよいよ開幕を迎える2024全日本スーパーフォーミュラ選手権。いつもは3月に公式テストが行われ、4月からシーズンスタートいう流れが定着していたが、今年はF1日本グランプリの開催が4月になったこともあり、例年よりも1ヶ月早い3月9日・10日にカレンダー設定された。舞台となるのは鈴鹿サーキット。同地での開幕は2019年以来となる。

【実質“冬開幕”の2024スーパーフォーミュラ。勢力図にも変化が?】

暦の上では3月は春であるものの、この時期の鈴鹿サーキットは“実質冬”と言っても良いほどの寒さ。毎年3月初旬の恒例イベントだったモータースポーツ感謝デーでは、過去に雪がちらついたこともあった。

最新の天気予報によると、週末は両日とも雨の心配は少なくて済みそうだが、最新の天気予報の各日最高気温は予選日(9日)が8℃、決勝日(10日)が9℃と、2月に開催された公式合同テストよりも低温のコンディション下でレースが行われていくことになりそうだ。

ここまで気温が低くなると気になってくるのはタイヤのウォーミングアップ。同じように気温と路面温度が低かったこともあり、タイムアタックにタイミングが計測2周目(ピットアウト→ウォームアップ→アタック)と計測3周目(ピットアウト→ウォームアップ×2周→アタック)で分かれていた印象だ。

スーパーフォーミュラの場合、Q1が10分、Q2が7分と限られている。その中で、いかにベストなコンディションでタイムアタックできるかが、予選順位だけでなく今回の開幕戦の結果を大きく左右する要素となりそうだ。もちろん、前方がクリアな状態でタイムアタックに臨めるか……いわゆる“トラフィック”の部分も気にしなければならない。9日の予選から、色々とドラマが起きそうな気配だ。

ちなみに、スーパーフォーミュラは比較的気温が低いと空気密度が上がってダウンフォースが増えるため、全体的に冬場のテストの方がタイムも上がる傾向にある。今回は、例年テストだった3月上旬が開幕戦となるため、SF23が導入されて以降の鈴鹿最速タイムである1分35秒792(2023年第3戦:大湯都史樹/TGM GrandPrix)がタイムを上回る記録も期待できそうだ。

今年もここからシリーズチャンピオンをかけた争いが始まっていくのだが、勢力図の点で見ていくと“3月の鈴鹿で開幕する”ということが、ゆくゆくはチャンピオン争いの鍵を握る可能性もあると筆者は考えている。

非常にレベルが高く、予選・決勝ともに僅差の戦いが繰り広げられているスーパーフォーミュラ。それゆえに、気温が2~3℃変わるだけでもマシンの動きに微妙な変化が生じ、それがタイムに影響してくる。

先日の公式合同テストで2日間トータルでのトップタイムを記録した山下健太(KONDO RACING)も「冬のテストで調子が良くても、いざ開幕するとその通りにいかない。これまで何度も裏切られてきているから、楽観視できない」と語っていた。実際に山下以外にも、冬のテストでトップタイムを記録するなど好調な走りをみせていたチームやドライバーが、シーズン開幕を迎えると予選でトップ5に入れないというようなことが何度も起きてきた。

山下健太(KONDO RACING)

ただ、今回は公式合同テストと開幕戦のコンディションが同じ“気温10℃台で寒い”という点で共通しているため、テストの時と同じような勢力図になる可能性も十分あり得る。

その点を踏まえて勢力図を予想すると、公式合同テストで常に速かったDOCOMO TEAM DANDELION RACINGの牧野任祐と太田格之進だ。

冬場の速さだけではなく、昨シーズン途中からチームとして大きなきっかけを掴んでおり、その良い流れを今も維持できている。昨年の最終戦で太田が初優勝したのはもちろん、牧野も第8戦で予選3番手につけており、今回も上位争いの中心的存在になりそうだ。

あとは例年の開幕前テストで速さを見せる山下に加え、PONOS NAKAJIMA RACING(山本尚貴、佐藤蓮)やKids com Team KCMGも、開幕前のテストではいつも上位にいる印象だっただけに、まずは土曜日の予選でどのポジションにつけるのかに注目したい。

これに対し、チームタイトル3連覇を狙うTEAM MUGEN。公式合同テストでは上位につける場面があったほか、ドライコンディションとなった2日目には決勝レースを想定したロングランのテストを淡々とこなしていた。この抜かりない準備が、開幕戦でどう発揮されるのかも、目が離せないポイントだ。

各陣営とも「開幕戦のコンディションに合わせられるかが、一番重要」という結論に至っているようだが、例年の開幕戦とは異なる勢力図になりそうな予感が……少なからずあるのは確かだ。

いずれにしても、スーパーフォーミュラは年間7大会(全9戦)ということで、シリーズチャンピオンを獲得する上で“流れを引き寄せる”というのは、とても重要な要素だ。過去のシーズンを見てきても、開幕戦で勢いをつけたチームとドライバーが、そのままチャンピオン獲得に突き進んでいくことが比較的多い。

今年は国内トップフォーミュラで21年ぶりに前年チャンピオンが不在となり、空席となったカーナンバー1を奪い合うシーズンとなる。その主導権を誰が最初に掴み取るのか……本当に面白い開幕戦となりそうだ。

【世間も大注目の18歳ルーキーJuju、“デビュー戦での課題”】

Juju(TGM GrandPrix)

今シーズンのスーパーフォーミュラで一番注目を集めているのが、日本人女性ドライバーとしては初めて同シリーズに参戦をする18歳のJuju(TGM GrandPrix)だ。ヨーロッパで経験を積み、昨年はジノックスF2000フォーミュラ・トロフィーでチャンピオンに輝いた。そして2024年は大きなステップアップをすることとなり、今やF1に最も近いカテゴリーのひとつと言われているスーパーフォーミュラへのフル参戦が決まった。

開幕戦を迎える時点では、現役女子高校生ということで、テストの時から複数の地上波テレビ局や新聞社、一般スポーツメディアも現地取材に駆けつけた。もちろん、メディアミックスゾーンでは他の全ドライバーよりも多くの報道陣が連日コメントを求めて彼女を囲んでいた。

Jujuは、昨年12月のルーキーテストで3日間6セッションにフル参加し、合計で192周(SFで約6レース相当)を走破。2日目午後のセッション4では1分38秒539のベストタイムを記録し、トップの小林可夢偉(Kids com Team KCMG/1分36秒296)から2.2秒差につけ、多くの関係者からも比較的良い評価が聞こえてきた。

ルーキーテストの結果で俄然今期への期待が高まったのだが、スーパーフォーミュラはそう簡単にうまくいかないカテゴリーであることも事実だ。

2月の公式合同テストではウエットコンディションとなった1日目は2度のコースオフを喫した。さらに2日目午後のセッションでは、ピットアウト直後でタイヤが冷えている状況下でコントロールを失い、立体交差下のガードレールにクラッシュした。総合結果ではトップから3.6秒差と昨年のテストより差が広がってしまった。

本人も今は学びの段階と理解しており「ひとつずつ成長していきたい」と語っている。今後に期待したいところはあるものの、開幕戦に関しては厳しい結果が待ち構えているのではないかと思う。

あくまで筆者の見解ではあるが、デビュー戦に向けて課題として残ってしまっている項目がある。それが“決勝レースを想定したロングランのテストがほとんど出来ていない”ということだ。

昨年12月のテストを含めて全ラップタイムデータを振り返ると、1周のタイムを出しに行く“ショートラン”と呼ばれる走行が比較的多かった印象だ。

とはいえ、昨年12月のテスト初日には10周程度の連続走行を2~3度やっている。おそらく初めて乗るスーパーフォーミュラのマシンを知るための習熟走行がメインだったと思われる。ただ、決勝レースでは他車とバトルをしながら、タイヤのマネジメントや安定したペースを維持するなど、色々な要素が求められる。2月の開幕前テストが1日雨に見舞われたこともあって、その辺の経験を十分に積むことができなかった。

Juju(TGM GrandPrix)

これが、今週末のデビュー戦でどう影響するのか……あくまで外から見た見解ではあるが、スーパーフォーミュラの公式アプリ『SFgo』での彼女のオンボード映像を見ていると、開幕前テストでは他のドライバーよりもステアリングを切る量が少し多いように感じられた。特に逆バンクとデグナー2つ目でその傾向が顕著に出ていた印象だ。

そうするとタイヤへの負担増が連想され、スティントの後半が苦しくなることも予想される。昨年からスーパーフォーミュラに導入された横浜ゴムのサスティナブル素材を一部使用したタイヤは、うまくコントロールしないと後半になってペースが落ちることもあるため、レース中の走らせ方も重要な要素となってくる。

そこはJujuも「本当はロングランもやりたかったですけど、今回(開幕前テスト)はドライで走れる時間が少なくて、ロングランのテストをやるよりも、他のことを優先したところはありました。それも含めて、もう少し時間がほしかったなと思います」と、決勝レース想定のテストが十分にできていないという課題はわかっている様子だ。

いずれにしても、この開幕戦で彼女の“現時点でのポテンシャル”が明確になるため、日曜日の決勝レース(31周)が未知な部分との闘いになるのかもしれないが、最後まで走り切ってもらいたいところだ。

スーパーフォーミュラは“結果が全て”と言っても過言ではないほどシビアな世界。良い結果を残れば次のチャンスが巡ってくる一方、数シーズン参戦しても結果が残らなかった時は、ドライバーとしての評価を下げてしまうこともある。

スーパーフォーミュラを運営する日本レースプロモーションが今年強調している“イコールコンディション”でのレースだからこそ、ドライバーは言い訳ができない。それが挑戦する気持ちを掻き立てる魅力であり、生き残っていく難しさでもある。

果たして、2024年の開幕戦で“最高な結果”を残すのは誰なのか…ぜひ、ご注目いただきたい。

※追加情報※

今週末、現地でのレース観戦を予定されているファンの皆様。鈴鹿サーキットは風が吹くと気温以上に冷えるのと、風邪を防げる場所が意外と少ないため、防寒対策を徹底していただきたい。

あと、この時期は花粉の量も多いため、花粉症の方は対策をお忘れなく。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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