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9メイクス19台のハイパーカー、9メイクス18台のGT3 新たなスタイルの開幕戦、カタール1812kmで優勝を遂げるのは?
モータースポーツコラム by 皆越 和也
プロトタイプカーであるメーカー主体のハイパーカークラス、同じプロトタイプカーながらほぼワンメイク状態でプライベートチームによるLM P2クラス、そしてかつてのGT2マシンをベースとするLM GTE Amクラス、この3クラスの混走により争われたFIA世界耐久選手権(WEC)は、今季大きく衣替え。ハイパーカークラスとLMGT3クラスの2クラス混走とシンプルになった。
ハイパーカークラスにはシリーズ5連覇中のTGR(トヨタ・ガズー・レーシング、2台)、プジョー(2台)、フェラーリ(3台)、ポルシェ(5台)、キャデラック(1台)、アルピーヌ(2台)に加え、新たにBMW(2台)、ランボルギーニ(1台)、そしてイソッタ(1台)が加わり、9メイクス19台と大所帯のクラスへ育った。
またLMGT3クラスは、ハイパーカーに参戦するメーカーを優先しFIAとACOが参加を認めた9メイクス系チーム(アストンマーティン、BMW、フェラーリ、マクラーレン、ランボルギーニ、フォード、レクサス=トヨタ、コルベット=GM、ポルシェ)各2台の計18台に絞られた。ここにメルセデスやアウディの姿がないのは残念だが、フォードやコルベットといったアメリカのメイクスが参加することで、北米での注目度も高まるだろう。
日本のファンが気になるのは、やはり日本のメーカー(トヨタ/レクサス)と日本人ドライバーの活躍だろう。まずTGRは7号車のドライバー、ホセ・マリア・ロペスに代えて2020年にTGRのテスト&リザーブドライバーを務めた元F1ドライバーのニック・デ・フリース(オランダ)がチームに復帰。まだ29歳と若いだけに今後の活躍に期待がかかる。7号車は小林可夢偉、8号車は平川亮と日本人ドライバーふたりに変更はない。大きく変わったのは車両のカラーリング。昨年までの赤/白/黒の歌舞伎を連想させるトリコロールからWRCのヤリス同様マットブラックをメインにした新たなカラーとなった。さらにヘッドライトの形状が変更されているので、開幕戦では細かくチェックしたい。
昨年のル・マン24時間を制したフェラーリ以外の車両も熟成を重ね性能を上げて来ているので、今年は昨年以上の接戦になる可能性は大きい。BoP(性能調整)がどんな影響をもたらすかにも注目したい。
LMGT3では日本車としてはレクサスRC Fだけがシリーズにエントリーすることができ、赤/白/黒のトリコロールとなった。
RC Fを走らせるアコーディスASPチームのカーナンバーは78と87だが、87号車にはCar Guyの木村武史がブロンズドライバーとして参加。プラチナドライバーには昨年までTGRの7号車をドライブしたJ.M.ロペスも加わり上位を狙える体制となっている。
この他、LMGT3クラスにはふたりの日本人ドライバーがエントリーしている。TFスポーツの82号車コルベットLZ06のブロンズドライバーには、昨年ル・マン・カップのシリーズ2位となったベテラン、小泉洋史が加わった。またユナイテッド・オートスポーツの95号車マクラーレン720Sのゴールドドライバーには欧州で活動しFIA F2にも出場していた25歳と若い佐藤万璃音(まりの)がエントリー。LMGT3クラスも9メイクスと賑やかになるだけに、それぞれのチームで活躍し表彰台を狙ってもらいたいものだ。
なお日本のチームであるD’station RacingはAMRワークスドライバーであり、日本のSUPERGTにもエントリーするマルコ・ソーレンセンを軸に、クレメント・マテウ、エルワン・バスタードというフランス人が加入した。
日本でも人気を誇るドライバーとしては、まずハイパーカークラス、ハーツ・チーム・ジョタの38号車ポルシェ963にはジェンソン・バトン。
AFコルセの83号車フェラーリ499Pにはロバート・クビサもいる。またLMGT3クラスでは元Moto GP王者バレンティーノ・ロッシが、チームWRTの46号車BMW M4(プラチナドライバーはマキシム・マルタンと強力)をドライブする。
さて、開幕戦はカタールのルサイル・インターナショナル・サーキットにおいて2月29日〜3月2日に「カタール1812km」として開催される。カタールという中東の国は知らなくても首都のドーハであれば、サッカーファンでなくてもご存じだろう。この時期の気温は最高でも25℃前後と比較的安定している。時差は6時間だ。1812kmという中途半端なレース距離は、カタールの建国記念日(12月18日=18/12)がその由来。1,000kmレースの約1.8倍という長距離レースであり、時間的にも最大は10時間となる。
開幕戦がいきなりの長距離であるため、車両のトラブルも発生しがちで荒れる可能性も高いが、サバイバルレースとなれば経験の多いチームが有利。6連覇を目論むTGRの戦いぶりをまずはチェックしたい。もちろんLMGT3クラスでの日本人ドライバーにも注目を!
開幕戦に先立つ前週、2月24~25日にはプロローグとして2日間の開幕直前テストが予定されていたが、海上輸送の遅延もあり26〜27日に行われた。初日はポルシェ963がトップタイムをマークしたが、このプロローグの結果を鑑みて第2弾のBoPが発表されるからか、TGRは初日は控えめなタイムで、開幕戦を予想するにはあまり参考にはならなかった。まずは2月29日に始まる開幕戦のプラクティスから各車の走りをチェックする必要がありそうだ。
J SPORTSでは、予選を3月1日、午後9時45分〜深夜0時30分、決勝を2日午後4時30分〜3日午前4時30分にJ SPORTSオンデマンドでLIVE配信、決勝はJ SPORTS 3でも生中継でお伝えする予定。
文:皆越 和也
皆越 和也
1961年熊本県出身。1980年代後半に富士スピードウェイで観戦した「WEC in JAPAN」で四輪モータースポーツに目覚め、モータースポーツ専門誌編集部等を経てフリーランスのフォトライターに。SUPER GTは全日本GT選手権がスタートした1993年より、ほとんどのレースを現場で取材している。
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