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写真筆者提供
沢山のモータースポーツ関係者が集った。
サーキットで毎回会う顔。
久しぶりの顔、顔。
懐かしい顔と顔が笑顔で挨拶を交わすけれど、悲しみは隠せない。
先週末に株式会社エムワイジー代表取締役の今西 豊さんの通夜、告別式が静岡県御殿場市の会場で行われました。近年これほどの規模の葬儀に出たことはなかった。会葬者の数は今西さんがどれだけの人物であったかが分かる。享年73歳。
ボクにとって今西さんは、レーシングチーム トムスのメカニックの頭として常に速いレーシングマシン、勝てるマシン作りのことばかりを考え、無私の人という存在だった。ピットで挨拶するといつも笑顔。しかし、一度マシンがトラブルでピットインした時には表情が一変してマシンに取り付き、ドライバーからコメントを聞き、指示を飛ばすが早いか、自らトラブルの原因らしい箇所へ。テストのセッションが終わるとドライバー、エンジニア、メーカーの技術者達たちの言葉に耳を傾け、自分の意見を押すわけでなく、<ハイッ>と応えると、即マシンのところに駆けつける。
トムスの創始者、舘 信秀さんが「クラッシュしても今西は、ドライバーを決して非難することはしなかった。クラッシュするようなクルマだったことを謝るんだ」とポツリ。
今西さんの下で従事していた大ベテランのメカさんたちが口々に「今西さんは、無いものは作ればいいんだといつも言っていた。今西さんが作るパーツは、依頼者の予想を超えた出来だった。でもね、今西さんは絶対に満足しないんだ。<次にはもっと良いの作るから>って言うんだ」と。トムスから独立された以後、多くのチームが今西さんのモノづくりに助けられてきた。
トムスのドライバーとして多くの経験を積んだドライバーは「レースは、2位も3位も同じ、勝たないとダメなんだと言われました。そして、勝てるクルマを作るからと言ってくれるんです」と。
今西さんの武勇伝は数知れず。生きながら伝説を持つ人物だった。
1967年に富士スピードウェイで行われた国内初の24時間レースでは、ドライバーが体力消耗してしまった時、監督の指示を受けてレーシングスーツに着替え、ヘルメットを被ってマシンに乗り込んだ。今となっては、時効のエピソードのひとつ。
会場は会葬者の、悲しみと寂しさ以上に今西さんへの感謝と尊敬の念が満たされていた。
自宅を出る時、引き出しの一番上に黒と白の市松模様のハンカチがあった。
それをポケットに入れ、今西さんへのレース終了のチェッカードフラッグとした。
今西さんお疲れ様でした。お世話になりました。ありがとうございました。
文:高橋 二朗
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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