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SUPER GTラストランとなる立川祐路。
いよいよ今週末は2023 SUPER GTシリーズの最終戦がモビリティリゾートもてぎで開催される。GT500・GT300クラスともにチャンピオン決定の大一番となるのだが、この最終戦は絶対に見逃せない“ラストラン”が3つある。
【立川祐路、いよいよGT500ラストラン】
まずは、今シーズン途中にGT500引退を表明した立川祐路だ。全日本GT選手権時代の1999年からフル参戦を開始し、およそ四半世紀にわたって国内トップカテゴリーの第一線で活躍し続けてきた。
7月末に引退を発表し、8月の第4戦富士から「応援してくれたファンの皆さんの想いに応える走りをしたい」と、各レースでアツい走りを披露。特に第7戦オートポリスでは、序盤から何度もオーバーテイクを決める力強い走りをみせ、多くのファンを魅了した。
また、大会期間中は、これまで応援してくれたファンへの感謝を込めて、ピットウォークを中心に、1人でも多くのファンと接する機会を持とうとしている。さらに各大会ではイベント広場でトークショーも実施し、そのサーキットにしか来られないというファンの方たちにも、感謝の想いを伝えていた。
引退発表後、各Rdで引退記念の展示が行われていた
これまでは、それぞれのサーキットでラストランを行なってきたが、今週末のもてぎ大会は、自身のレース人生において、その大半を占めてきたシリーズを戦う“最後の1戦”となる。もちろん、レースということで予想だにしないトラブルやアクシデントに見舞われる可能性もあるが、この1戦だけは何事もなく、立川らしい走りを期待したいところだ。
予選日には引退セレモニーが行なわれるほか、今回もイベント広場でトークショーの開催予定。現地へ行かれるファンはもちろん、J SPORTSでご覧の方も、最後の勇姿を目に焼き付けてほしい。
【2代目NSX-GTラストラン】
NSXのラストをチャンピオンで飾りたいNo.16 ARTA MUGEN NSX-GT
続いてのラストランは、NSX-GTだ。ホンダは2024年からのGT500参戦車両とシビックTYPE R-GTにすることを発表。夏頃からテスト走行も始まり、準備が進められている。その一方で、NSX CONCEPT-GTから10年にわたって活躍してきた、2代目NSX-GTが今年いっぱいでGT500クラス参戦終了となる。
ホンダのフラッグシップモデルとして、多くのファンを魅了してきたNSX-GT。2014年から導入された共通モノコック規定では、フロント側にエンジンを搭載することが原則とされていたが、市販車と同様にミッドシップに配置。なかなかライバルを上回るパフォーマンスを引き出せず、相当苦労した時もあったが、ひとつひとつ改善していき、2018年と2020年にはチャンピオンを獲得。その後も、毎年のように最終戦までチャンピオン争いを繰り広げる活躍を見せた。
今回はNo.16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)がランキング3番手につけており、ポイント差は離れているが、逆転のチャンスが残っている。何より、ホンダ勢で戦うドライバーそれぞれに、NSX-GTへの想い入れがあり、最後は良い形で終えたいと、皆が口を揃えて言っている。
その中で、見逃せないジンクスがひとつある。現行規定が導入され、NSX-GTもFR化することとなった2020年。そこから昨年まで5回レースが開催(コロナ禍で2020年と2021年は年2回開催)されているが、いずれもホンダNSX-GTが勝利している。以前はストップ&ゴータイプのもてぎが、NSX-GTにとって不得意なのではないかと言われていた時期もあったが、特にFR化してからは相性が良い様子。今回は全車ノーウェイトになることもあり、各チームとも優勝を狙っていることだろう。
ホンダのホームコースで、NSX-GTが有終の美を飾れるか、こちらも見逃せない。
【ミシュランタイヤ、GT500クラスラストラン】
逆転で王者奪取を狙うNo.3 Niterra MOTUL Z
そして、3つ目のラストランが、GT500クラスに長年タイヤサプライヤーとして参戦してきたミシュランだ。彼らがGT500に参戦を開始したのはJGTC時代の1999年。今ではニッサン勢とのコンビネーションが定着しているが、以前はトヨタ車、ホンダ車で参戦するチームにもタイヤを供給し、今では世界的にも珍しくなっている複数のタイヤメーカーが参戦する“タイヤコンペティション”のレースで奮闘してきた。
特に2010年代は、ライバルを凌ぐ強さを発揮。2011年から2015年までの間に4度のシリーズチャンピオン獲得に貢献した。
また、新しいタイプのウエットタイヤを開発。従来のそれとは異なる溝のパターンを採用し、特に雨量が少なめの時に圧倒的なパフォーマンスを披露している。昨年の第6戦SUGOや、今年の第1戦岡山・第4戦富士のように「雨が降ったら、ミシュランが強い」と周囲に言われるほど。加えて、夏場の暑い時期のコンディションで速さを見せるというのも以前から言われてきたことで、毎シーズンのように夏場のレースで活躍を見せてきた。
しかし、第3戦鈴鹿を前に今季限りでGT500クラスへの参戦休止を発表。シリーズ全体に大きな衝撃が走った瞬間だった。なお、GT300クラスについては来季以降もタイヤを供給するという。
その発表リリースの中で「応援いただくファンの皆様のご期待に沿えるよう、チームのシリーズチャンピオンに向け最終戦、最終ラップまで邁進します」と力強いコメントを発表。第7戦を終えてNo.3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)がトップから7ポイント差のランキング2番手につけている。3号車の2人は昨年、あと一歩のところでチャンピオンを逃し、悔し涙を流した。今年は同じもてぎを舞台に、嬉し涙に変えることができるか。注目の1戦を迎える。
今年も、もてぎを舞台で1年を締めくくるSUPER GT。振り返ると、大きなアクシデントが相次いだシーズンでもあった。前回のオートポリスでは素晴らしいレース展開になり、多くのファンが熱狂したと思うが、一歩間違えば、第3戦鈴鹿や第6戦SUGOのようなことになる可能性はある。
いま一度、SUPER GTに関わる関係者や、レースを見守るファンも、それらを肝に銘じて週末のレースに臨んでほしいと思っている。それと同時に、2023年シーズンを締めくくるにふさわしい熱戦が繰り広げられることを、期待したい。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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