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GT500クラス ランキングTOPのau TOM’S GR Supra。
2023年のSUPER GTは、ついに最終戦を迎えることとなった。モビリティリゾートもてぎを舞台とする大一番は、全車ノーウェイトで臨んで、真の実力を問うレースでもある。そして、またチャンピオンを決める戦いでもある。ポール・トゥ・ウィンを飾れば、21ポイント獲得できるため、前回のオートポリスまではGT500クラスも、GT300クラスもまだ多くのチームに王座獲得の権利が残されていたが、いざレースが終わってみると限りなく候補のチームは絞られた。
GT500クラスは3チームだけに、そしてGT300クラスは2チームだけに絞られ、しかもポイントリーダーに圧倒的有利な状況になっている。チャンピオン獲得の条件を、主に進めていこう。
ポイントリーダーが、そのまま逃げ切り可能!?
前回はサクセスウェイトが半減されたとはいえ、49kgもの重さが足枷となって予選ではQ1突破ならず、12番手からのスタートだったau TOM’S GR Supraの坪井翔/宮田莉朋組。オートポリスでは初めての450kmレースで、じわりじわりと順位を上げて、ゴールまであと10周というところでトップに浮上、まさに大逆転で第2戦富士以来の2勝目を挙げた。
「未知数で挑んだ」と坪井は語るもペースは良く、オーバーテイクの連続に「今日は絶対に勝つ」とピットで見守りつつ確信していたという宮田。自身もオーバーテイクの連発で実現させたのは見事の一言だった。その結果、ランキングでもトップに浮上。
第7戦で見事な逆転勝利を果たしたau TOM’S GR Supra。
3位でゴールしたNiterra MOTUL Zの千代勝正/高星明誠組、そして2位でゴールしたARTA NSX-GT・16号車の福住仁嶺/大津弘樹組だけに逆転の権利が、順当に残されることになった。それぞれau TOM’S GR Supraとの差は7ポイント、16ポイントだ。
当たり前だが、坪井と宮田は勝てば決まる。しかし、それ以下の成績だったとしたら? 千代と高星が勝っても、ポイントリーダーは2位なら逃げ切りとなる。同様に福住と大津が勝っても、6位以上であれば大丈夫だ。
ちなみに、もてぎとの相性はどうだろう?昨年の最終戦でいえば、3チームとも表彰台には上がれていない。千代と高星の4位が最上位で、しかも他の2チームは組み合わせも異なっている。このあたりは参考になりそうもない。
では、同じくノーウェイトだった開幕戦の岡山は? 予選、決勝とも2位だったのがNiterra MOTUL Z。しかし、この時の決勝は気まぐれな天候変化に翻弄されていた。タイヤ交換のタイミング、選択などチームの下した判断で明暗も分かれており、そういった意味でも優っていたのは間違いない。
しかし、予選こそ12番手ながら激しく追い上げて、終盤にトップに立ったのが、au TOM’S GR Supraだったというのも見逃せない。ピットでのタイヤ交換直後にホイールが外れ、リタイアしてしまったという事実はあるにせよ。結果、ノーウェイトで挑んだ次の第2戦富士では優勝。これが坪井と宮田に有利だと思われる理由である。今年は速さより、強さのあったシーズンだっただけに!
去り行くものに、最高の花道を…
SUPER GTラストランとなる立川祐路。
チャンピオン決定は優勝では決まらず…ということで、こうなったらいいなというシチュエーションは、やはりZENT CERUMO GR Supraの立川祐路/石浦宏明組の優勝だろう。ご存知のとおり、今回が立川にとって最後のSUPER GTとなる。1996年にデビューして以来19勝を挙げ、2001年と2005年、そして2013年にシリーズチャンピオンを獲得。24回も奪ったポールポジションは歴代最多。
ここ3年ほど勝っていないが、何か「勝利の女神」が微笑んでくれるような気がしてならない。最後の一戦で区切り良い20勝目をマークして、惜しまれつつ幕を閉じるというのが立川らしくはあるまいか。
またマシンとしても、ホンダNSX-GTがラストレースになる。来シーズンからシビックにスイッチされるからだ。まして、もてぎはホンダにとってのホームコース。ここで最後を締めるのが至上命令とされているはず。ホンダ勢の総力戦となりそうだ。
その差、20ポイント。奇跡は起こるか?
悲願のチャンピオンを目指す埼玉トヨペットGB GR Supra GT
第6戦SUGOの優勝でGT300クラスのランキングトップに立った、埼玉トヨペットGB GR Supra GTの吉田広樹/川合孝汰組が、前回のオートポリスでも勝って、悲願のチャンピオンに王手をかけた。前回のサクセスウェイトは半減されたといっても75kgに及び、昨年も勝っているコースではあったが、吉田自身、「450kmはオートポリスでは初めてだし、重くなっているから」と予選を予想していたが、まさに裏腹の展開となった。
吉田と川合を止められるのは、もはやmuta Racing GR86 GTの堤優威/平良響組だけで、20ポイントも離されているため、逆転の条件はポール・トゥ・ウィンのみで、しかも相手がノーポイントに終わった場合に限られる。逆の言い方をすれば、堤と平良がポールポジションを逃せば、土曜日のうちにチャンピオンが決まることになる。
だが、muta Racing GR86 GTがポールポジションを獲得する可能性は、決して低くない。9月上旬にGT300クラスはもてぎで合同テストを行なっており、その時に1分47秒707を記して最速だったのは、このマシンだからだ。もちろん、今年の9月といえば、まだ猛暑の盛り。今はもう、涼しいを通り越して寒いぐらいだから、気象的な条件は圧倒的に異なるものの、チームにはしっかりアジャストしてくるだけのポテンシャルがある。
しかし、埼玉トヨペットGB GR Supra GTはここまでの7戦でリタイアは一戦のみ。残る6戦はすべてポイント獲得に成功している。よほどのことがない限り、ノーポイントに終わる確率の方が圧倒的に低そうだ。
チャンピオンは獲れなかったからこそ、最後を勝って決めたいというチームは極めて多い。いや、思わないチームの方が圧倒的に少ないのでは? 昨年はARTA NSX GT3が勝っており、その意味では目下ランキング5位で、勝つかノーポイントのUPGARAGE NSX GT3の小林崇志/小出峻組。鈴鹿、SUGOと不運な展開が続き、連覇達成ならなかったリアライズ日産メカニックチャレンジGT-RのJ.P.デ・オリベイラ/名取鉄平組。雨にはめっぽう強いミシュランタイヤを履くStudie BMW M4の荒聖治/ブルーノ・スペングラー組は、このふたりで表彰台に上がったことはまだない。さらにはLEON PYRAMID AMGの蒲生尚弥/篠原拓朗組。蒲生の挙げた5勝のうち、3勝はもてぎで挙げているという相性の良さ。どのチームが勝っても、おかしくなさそうだ。
まずは両クラスともアクシデントなく、それでいてオーバーテイクの連続という展開を期待したい。劇的なチャンピオンも大いに希望! 誰もがすっきりと、シーズンを終えられれば最高である。
文:秦 直之
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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