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宮田莉朋
いよいよ10月28日・29日に開催が迫った全日本スーパーフォーミュラ選手権の鈴鹿大会。今回は28日(土)に第8戦、29日(日)に第9戦が行われる2レース制フォーマットで実施される。
今シーズンからJ SPORTS以外にもABEMA TVで決勝レースの全戦生中継が始まった他、日向坂46の富田鈴花さんがMCを務める情報番組なども盛り上がっているなど、例年以上に多くの方が国内トップフォーミュラを観るようになっている印象だ。
その中で始まるSF2023年シーズンFinalとなる “鈴鹿決戦”。注目のドライバーズチャンピオン争いは、宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)、リアム・ローソン(TEAM MUGEN)、野尻智紀(TEAM MUGEN)の3人が有力候補となっている。
その中で、第7戦もてぎを終えて94ポイントでランキング首位につけている宮田は、第3戦鈴鹿での初優勝を皮切りに勢いに乗っている印象。坪井翔とコンビを組んで参戦するSUPER GTでもチャンピオン争いに加わる活躍を見せている。
SUPER GT第7戦オートポリスでは見事な逆転優勝を果たした。
さらに今年6月にはTGR-WECチャレンジドライバーに選出され、ルマン24時間レースに帯同。9月のWEC富士6時間では代役としてLMGTE Amクラスに参戦し、クラス表彰台を獲得する活躍を見せた。
すっかり、トヨタ陣営を代表するエースドライバーとして定着し、徐々に活躍の場を日本から世界に広げつつある宮田。だが、彼のレースキャリアを振り返ると決して順風満帆だったということはなく、時には屈辱を味わい、苦悩する日々も経験してきた。
ただ、それらを自らの力と自信に変え、日本最速の座に王手をかけるまでに成長してきた。
元F1ドライバーで、現在はSUPER GTのTGR TEAM ENEOS ROOKIEでチーム監督を務める高木虎之介氏が率いるカートチームに入り、メキメキと腕を磨いた宮田。2015年に4輪レースデビューを果たすと2016年にはFIA-F4シリーズチャンピオンを獲得した。2017年には角田裕毅、大湯都史樹、笹原右京など強力なドライバーたちが参戦するなかで2年連続のチャンピオンを獲得。前年王者が翌年もFIA-F4に参戦するという異例の体制とはなったが、しっかりと結果を残した。
2016年にFIA-F4シリーズチャンピオンを獲得した。
また、2017シーズンは全日本F3選手権(現スーパーフォーミュラ・ライツ)にも参戦。5度の2位表彰台を獲得するも、優勝を手にすることはできずランキング4位。2018年は坪井とチャンピオン争いを繰り広げるも、シーズン2勝に留まりランキング2位で終えた。
ここまで、多くのドライバーがF3を3シーズン戦って、次なるステップを掴んできた。それだけに、宮田にとって2019シーズンはトップフォーミュラに上がれるか否かがかかる“勝負の1年”だった。
開幕前から大本命は宮田と言われていたが、そこに最大のライバルが現れる。そう、現在フォーミュラEで活躍中のサッシャ・フェネストラズだ。
この年はB-Max Racing Teamと欧州で参戦経験のあるMotoparkがタッグを組み、強力な体制を整えた。フェネストラズも日本での初レースではあるものの、いきなり速さをみせて開幕戦で優勝を飾った。それに対し第2戦で宮田も勝利を奪うなど、このシーズンは2人による一進一退のトップ争いが毎回繰り広げられ、パドックも例年にないほどの緊迫感が漂っていた。
特にチャンピオン決定の舞台となったもてぎラウンドでは、お互いが最後まで攻め合う大接戦となった。結果的にフェネストラズが逃げ切って2019年シーズンのチャンピオンを獲得。王座に一歩届かず、悔し涙を流した宮田。ただ、当時から一貫して“ある目標”を口にしていた。
「僕は世界の舞台に行きたい」
そんな宮田が脚光を浴びる時がやってくる。2020年のスーパーフォーミュラ第2戦岡山大会だ。この年は新型コロナウイルス感染拡大に伴う様々な措置が取られていた時期、TOM’Sの36号車でレギュラードライバーを務めていた中嶋一貴が、兼務していたWEC(FIA世界耐久選手権)後の帰国後、一定期間は自主待機をしなければいけないルールがあった。この岡山大会も、その期間に重なり、宮田は代役としてスーパーフォーミュラデビューを果たした。
2020年のスーパーフォーミュラ第2戦にてトップフォーミュラをデビューした宮田莉朋。
まさに“ぶっつけ本番”という状態だったが、Q1BグループとQ2で連続してトップタイムを記録。いきなりポールポジションかと思われたが、最終のQ3で平川亮に敗れ2番グリッドとなった。予選後の記者会見では悔しい表情をみせたが、関係者やファンの間で宮田に対する評価が一気に上がった1日だった。
2020年シーズンはレギュラー参戦したスーパーフォーミュラ・ライツでチャンピオンを獲得し、2021年からスーパーフォーミュラのレギュラードライバーに昇格し、開幕戦から順調にポイントを獲得していったが、表彰台には手が届かない。この年、先述と同じ理由で中嶋が参戦できないレースをジュリアーノ・アレジが代役で参戦し、第3戦オートポリスで初優勝を記録した。
フォーミュラカーのレースは各カテゴリーで経験を積んできた宮田だが、途中にピットストップを行うなど戦略面も重視されるスーパーフォーミュラで「どう戦っていくのが良いのか?」を試行錯誤する日々が続いたという。中嶋のように経験豊富なチームメイトがいれば、そこから学ぶこともできたが……コロナ禍で変則的な体制にならざるを得なかったことにより、それが叶わなかった。
並行して参戦しているSUPER GTでもポールポジション獲得など速さは見せるが、優勝に手が届かず。坪井翔や山下健太がコンスタントに成績を残していくなかで、どこか自分だけが遠回りしているように感じる瞬間もあったという。
それでも、宮田は前を向いて挑戦し続けることを止めなかった。
「僕は世界の舞台に行きたい」
この言葉こそが、彼の原動力だった。
2022年は力強さを見せ始め、予選でも最前列のグリッドを獲得するようになるが、決勝ではタイヤ交換で手間取ってしまうことが多く、勝機を失うレースもあった。それは2023年の開幕富士大会でも起きたが、“このままでは本当にまずい”と、宮田自身も御殿場のファクトリーに足を運んでチームとミーティングを繰り返した。
マシンのセットアップに関しても、今年からSF23に変わったことで、シーズン前のテストでは苦戦をしていたようだが、自分のアイディアも積極的にチームに伝え、突破口を見出していく。
そんな中で迎えた第3戦鈴鹿。予選でトラックリミット(走路外走行)をとられてしまい、該当のラップタイムが削除されて12番手からのスタートとなるが、持ち前の好ペースで順位を上げていき、アクシデントによるセーフティカー導入のタイミングに合わせてピットイン。ここでチームも完璧な作業で宮田を繰り出した。
3番手でコースに復帰した宮田は、それまでのバトルでオーバーテイクシステム(OTS)を使い込んでいたこともあり、52秒を残してレース再開を迎える。前を走るリアム・ローソンと坪井は100秒以上OTSを残していたこともあり、状況は不利かと思われたが、彼らよりもタイヤが新しい部分の利点を活かして、次々とオーバーテイクを決め、悲願の初優勝を飾った。
2023年第3戦で悲願の初優勝を飾った。
パルクフェルメで何度もガッツポーズを繰り返した宮田。ここまで喜びを爆発させたのは、おそらく初めてではなかったであろうか。それだけ、彼にとって鈴鹿での1戦がターニングポイントになったような気がする。その後のレースをみても、自信を持って走り、勝負どころで躊躇なく仕掛けていく姿が随所でみられている。
なかでも特筆したいのが、10月14日・15日に行われたSUPER GT第7戦オートポリス。最終スティントで強力なライバルがいるなかを的確な判断でチャンスを見つけ出して、次々と追い抜いていき逆転優勝を飾った。
そして、彼が常々言ってきた「世界に行きたい」という夢を実現する扉が、ついに開く。今季途中にTGR WECチャレンジドライバーに選抜された。詳しい発表は何もない状態だが、おそらく来季以降はWECへの本格参戦に向けて動き出していくのではないかと予想される。
世界への切符を確実に掴むためにも、スーパーフォーミュラのタイトルは是が非でも欲しいところ。第5戦SUGO以降、ランキング首位を維持していることもあり、彼に対してチャンピオン争いに関するメディアからの質問も自然と増えていったが、当の本人は「ポイントランキングのことはあまり気にしていない」と答えてきた。
それでも、アプリ『SFgo』での無線の聞くと、第6戦富士のチェッカー後に「(レース中)ホンダと競って、どこが遅いというのが明確に分かったので(それを)しっかりフィードバックしたいので、TRDさんをはじめ皆さんご協力をお願いします。シリーズチャンピオン獲りに行きたいです」と力強く話していた宮田。第7戦もてぎのチェッカー後も「最終戦(チャンピオンを)獲りに行けるように頑張るので、これからもサポートをお願いします」と、チームスタッフに無線で話していた。
8ポイントリードで鈴鹿での2連戦に臨む宮田。4月の第3戦でも速さを見せていたことを考えると、やや優勢な印象もあるが、TEAM MUGENの2台もシーズン中盤で力をつけてきている。最後まで気が抜けない戦いになることは間違いないだろうし、この2連戦は絶対に取りこぼすことが許されない。
目標と語り続けた世界の舞台へ進むため……宮田にとって“勝負の週末”が、いよいよ始まろうとしている。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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