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ランキングTOPの3号車Niterra MOTUL Z。
2023年のSUPER GTも、いよいよ残すは2戦。オートポリスが舞台となるシリーズ第7戦は、サクセスウェイトが半減される一戦である。それでもランキング上位陣は重いまま。GT500クラスではNiterra MOTUL Zの千代勝正/高星明誠組が51kg、GT300クラスでは埼玉トヨペットGB GR Supra GTの吉田広樹/川合孝汰組が75kgも積んで臨むことになる。ことGT300クラスは50kg超えが5チームもいるのだから、このあたりは引き続き我慢を要するはずだ。
しかし、そうは言いながら好結果を残せたチームが、最終戦をより有利な状況で迎えることとなる。まして今回は、オートポリスでは初めての450kmレースだ。セオリーや常識を覆すような展開にならないとは限らない。もちろん、今回もまた給油を伴うピットストップは、5週目以降に2度義務づけられている。
SUGOで起きてしまった、ふたつの事件
スポーツランドSUGOで開催された第6戦。
スポーツランドSUGOでの第6戦では、ふたつのセンセーショナルな事件が発生した。まずはレース中。中盤のピットロード入口付近で、ピットインしようとしていたGT300クラスのリアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rと、GT500クラスでバトルの最中だったSTANLEY NSX GTが接触。コントロールを失ったSTANLEY NSX GTは、スタンド側のタイヤバリアにヒットして大破してしまったのだ。山本に意識があることは、すぐアナウンスされたが、その後の精密検査の結果、外傷性環軸亜脱臼、および中心性脊髄損傷という診断結果により、今年の残り全レースを欠場することとなった。
また、結果としてリアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rに危険行為があったとして、ペナルティが課せられたものの、筆者としてはドライバー双方に非はなかったと思う。偶然と不運が重なっただけだと。これ以上の私見は留めるが、山本の欠場によって昨年、GT300クラスをARTA NSX GT3で戦っていた木村偉織が代役として起用されることになった。
そして、もうひとつの事件はレース後に。GT500クラス、GT300クラスともに優勝チームが失格になってしまったのだ。理由はそれぞれ「スキッドブロック厚み規定違反」と「最低地上高違反」で、関係者によれば、ともに「髪の毛1本ほど」足りなかったのだという。
この件に関しても、私見を挟むつもりはないが、チームやドライバーといった当事者のみならず、ファンの落胆ぶりも想像に余りある。まして、両クラスとも大逆転勝利で感動的だったから、なおのこと。
これら、ふたつの事件がチャンピオンシップに影響を及ぼさないはずがない。誰にも後味の悪さを残さなければいいのだが……。
オートポリスでは、ホンダ勢が来る?
8号車ARTA NSX GT。
前回のSUGOで優勝を飾ったのは、ARTA NSX GT 8号車の野尻智紀/大湯都史樹組。その時のサクセスウェイトが23kgだったことからも分かるとおり、今年は歯車が噛み合わない展開が続いていたが、ようやく本領を発揮した。ポールポジションからスタートし、終盤にAstemo NSX GTの塚越広大/松下信治組の逆転を許したとはいえ、前述の事件によって「複雑な心境でした」と野尻は語るも、自信を取り戻したのは間違いない。その結果、ランキングも13位から7位に浮上した。
一方、ランキングトップに躍り出るはずだったAstimo NSX GTは、開幕戦以来のポイント獲得も途切れ、ランキングも6位から10位に後退。だが、塚越と松下は昨年のオートポリスを制して相性は抜群。2位もSTANLEY NSX GTが獲得しており、どうやらホンダ勢との相性も良さそう。
今回の推しは、圧倒的にこのホンダ勢3台! サクセスウェイトもARTA NSX GT 8号車は32kg、STANLEY NSX GTが31kg、そしてAstimo NSX GTに至っては29kgと、勝った昨年の34kgより軽いのだ。
もっともSTANLEY NSX GTに関しては、GT500車両初ドライブとなる木村が、どれだけ適応力を見せるかにもかかっている。ただ、伝統的にホンダ勢の若手ドライバーは、こういういきなりの機会にピカリと光る走りを見せることが多い。さらに初めて若手を牽引する立場となる、牧野任祐の手腕にも期待がかかる。ARTA NSX GTの勢い、Astimo NSX GTのリベンジとともに注目してほしい。
昨年は埼玉トヨペットGB GR Supra GTが優勝、さて今年は?
ランキングTOPの52号車埼玉トヨペットGB スープラ。
天国から地獄へ、とはよく使われる表現だが、さらに天国へ、ということになるとは思いもしなかった。それがまさに前回のGT300クラス。埼玉トヨペットGB スープラが最終ラップの最終コーナーをトップで駆け抜けるはずが、突然の失速。その脇を小林崇志/小出峻組のUPGARAGE NSX GTがすり抜け、トップでチェッカーを受けた。サクセスウェイトを100kgも積んで、我慢どころか2連勝を果たしたかと思われた。
しかし、結果は前述のとおり。ゴール後、吉田は自分がいらぬ作業をしてしまったからかもしれないと、号泣したことから一転。UPGARAGE NSX GT3に失格の裁定が下り、埼玉トヨペットGB GR Supra GTに優勝が戻ってきた。その結果、ランキングでもトップに。
しかし、前回のUPGARAGE NSX GT3は、いささか神がかっていたとはいえまいか? 繰り返していうが、100kg積んでなお予選Q1で小林がトップに立ち、少なくとも2位でゴールできたという事実。このチームはここまで勝つか、ノーポイント。それだけセッティングも攻めているのだろう。埼玉トヨペットGB GR Supra GTより軽い60kgだから、ではなく、60kgなのに、という今回も期待できるかもしれない。もちろん、その逆も大アリだが。
ちなみに昨年勝っているのは、他ならぬ埼玉トヨペットGB GR Supra GTなのだが、昨年より重たく、しかも450kmレースということもあり、同じようなわけにはいかないだろうと吉田自身は予想している。なお、このチームには第4戦の車両火災でチームが活動を休止した、野中誠太が第3ドライバーとして加わる。そこに何か化学変化が生じると、話は違ってくるかもしれないが。
では、昨年2位のSUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人/山内英輝組はどうだ? 現時点でのサクセスウェイトは47kgで、昨年より4kg軽い。昨年はポールポジションも奪っており、2021年は決勝で3位。と来たら、次は……ということになる。少なくても、ポールポジションは狙いに来るだろう。山内が、それまで最多記録を保持していたK-tunes RC F GT3の高木真一から奪い去ったばかりの記録を、前回で並び替えされているだけに。まして、今年はここまで未勝利とあって、テクニカルコースを得意とするマシンだけに、やはり優勝も狙いに来る!
他にも勝っていないが、ランキング上位につけるという点では、muta Racing GR86 GTの堤優威/平良響組、LEON PYRAMID AMGの蒲生尚弥/篠原拓朗組も要チェックのチーム。いずれも底力を備えるも、展開に恵まれずにいる上に、ともに今回も監督を務める加藤寛規と黒澤治樹が第3ドライバーを兼ねている。もし、レギュラードライバーに何かが起こっても、カバーできるようにと「転ばぬ先の杖」であって、実際にドライブすることはないにしても、そこまで構えるのは結果に対する貪欲な姿勢ゆえだ。
そして450kmレースであるがゆえの戦い方だが、早めのピットストップを行うチームは、オートポリスであっても必ず出る。ただ、このコースはタイヤに厳しく、しっかりマネージメントしないと容赦なく痛めつけることで知られている。燃費的には大丈夫でもタイヤが悲鳴を上げて、スティント終盤にスローダウンということもあり得るので、いきなり展開が動く可能性も。今、見ている光景が最後まで続くことが、他のコース以上に少ないとだけ伝えておきたい。
文:秦 直之
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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