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モーター スポーツ コラム 2023年7月31日

直前のラインナップ変更など、勢力図は日々変わる?それも含めて8耐だ | FIM 世界耐久選手権(EWC) 2023 第3戦 鈴鹿8時間耐久ロードレース プレビュー

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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Team HRC

Team HRC

鈴鹿サーキット(三重県)で開催される真夏の祭典「鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)」。2023年8月4日(金)〜8月6日(日)に開催される伝統の耐久レースは今年で44回目の大会を迎えます。

FIM世界耐久選手権(FIM EWC)を放送・配信するJ SPORTSでは今年も「鈴鹿8耐」を生中継。その放送をさらに楽しんでいただくために、FIM EWCのレギュラーチームを含めたプレビューを今回はお届けしましょう。

前回のプレビュー記事「HRCの速さは当然!伏兵はAstemoとオートレース宇部?〜鈴鹿8耐合同テストを終えて〜」でも書いた通り、優勝候補はホンダワークス「Team HRC」です。「ホンダCBR1000RR−RSP」という最強ワークスマシンを使用する唯一のフルワークスチームで、昨年はカワサキワークス「Kawasaki Racing Team」が完全にお手上げ状態で白旗を揚げる圧倒的な速さを見せました。今年もその強さとスピードは変わらないでしょう。

しかしながら、「Team HRC」は直前になってチーム体制の変更をプレスリリースにて発表しました。まず、チーム名が「Team HRC with 日本郵便」に変更。今年、全日本ST1000で高橋巧が日本郵便のスポンサードを受けるチームで走っていることもあり、スポンサーが付きました。

その高橋巧を軸としてスーパーバイク世界選手権に参戦中のイケル・レクオーナ、チャビ・ビエルゲの3人のラインナップを発表していましたが、イケル・レクオーナが急遽、同週末開催のMotoGPに代役参戦することになり、怪我から回復してテスト走行で好調な走りを披露した長島哲太が加入。高橋巧/チャビ・ビエルゲ/長島哲太というトリオにライダーラインナップを変更してきました。

今季、スーパーバイク世界選手権では勢いが今ひとつという感じのレクオーナをMotoGPに参戦させる。昨年、彼は鈴鹿8耐を経験しているだけにセオリーで行けば彼が鈴鹿8耐を走るべきなのでは?と言えますが、彼がMotoGP経験者であること、そしてライダーのモチベーションアップという意味でのMotoGP起用なのでしょう。

逆に今季ベストリザルト3位を獲得しているチャビ・ビエルゲにとっては鈴鹿8耐・初出場で結果を残し、自分自身をアピールするビッグチャンスです。外国人ライダー2人の起用ですと、お互い意識して頑張りすぎてしまう部分もあるかと思いますので、日本人ベテラン2人+外国人というラインナップになったことで、より不安要素が少なくなったとも言えますね。やっぱり盤石です。

「#33 Team HRC with 日本郵便」に対抗するのは簡単なことではありません。しかし、ライバルたちは自分達のベストを尽くすことで、もしかすると、という漁夫の利を狙って闘うことになります。対抗馬として一番に名前を挙げたいのはヤマハワークスと同等のマシンを使用しているとされる「#7 YART YAMAHA」(マーヴィン・フリッツ/ニッコロ・カネパ/カレル・ハニカ)でしょう。

FIM EWCのレギュラーチームとして過去にも鈴鹿8耐で好成績を残してきた「YART YAMAHA」はヤマハ発動機が最高のプライオリティを置く体制になっています。彼らが使う「ヤマハYZF−R1」は表向きにはワークスマシンと謳っていませんが、ライバルチームのライダーいわく「NIPPOコーナー(旧ダンロップコーナー)での動きなんかは全日本のワークスマシンにそっくり」ということですし、タイヤもブリヂストンユーザーですから、ほぼ同じパッケージなのでしょう。テスト走行時にはヤマハワークスの技術陣もピットに多数詰めていました。

「YART YAMAHA」はFIM EWC第2戦・スパ24時間で優勝。ついに24時間レースでもこのパッケージのマシンが優勝を果たしました。スパでの優勝で1点差ながらランキング首位に浮上した「YART YAMAHA」の鈴鹿8耐での目標は最低でも2位表彰台で鈴鹿8耐を終えること。昨年は転倒で残念な結果となりましたが、ワールドチャピオン獲得に向けてはそういうミスを無くしたいところです。2位争いの主役になることは間違いありません。

一方、1点差で追う昨年のチャンピオン「#1 F.C.C. TSR Honda France」(マイク・ディメッリオ/アラン・テシェ/ジョシュ・フック)はレース前から早くもピンチを迎えています。トレーニング中にジョシュ・フックが肩を負傷し、欠場が決定。代役ライダーも模索中ということですが、この猛暑の中、2人のライダーで戦わなくては行けなくなったのです。

昨年も土曜日のフリー走行でジーノ・リアが怪我を負い、2人のライダーで鈴鹿8耐を走り切りましたが、10位完走というなかなか厳しい結果に終わりました。鈴鹿を走り慣れているジョシュ・フックのパフォーマンスはチームに欠かせないものだけに、ちょっと心配です。

「#1 F.C.C. TSR Honda France」はホンダのトッププライオリティのチームではありますが、マシンは「#33 Team HRC with 日本郵便」が使用するワークスマシンとは別のもので、TSRで独自で組み上げた「ホンダCBR1000RR−R」を使用します。極端な言い方をすれば、市販車ベースのストックレース仕様に近いバイクになっていて、エンジンもスタンダード。これは24時間レースが3つあり、短いレースは鈴鹿8耐の一つだけ、というFIM EWCの年間スケジュールとポイントの比率を考慮したTSR独自の考え方によるものと言えるでしょう。

とにかく24時間レースを着実にフィニッシュすることに主眼を置いた「24時間耐久仕様車」であり、TSRがFIM EWCの年間参戦を通じて得た独自のノウハウが詰め込まれています。代役で誰かが乗るのか、2人で戦うのか、どちらにしても8時間レースに特化したマシンを作る国内プライーベーター相手にどこまで善戦できるか、チームの底力が試されます。

そして、スズキのトップチームであり、鈴鹿8耐初代ウイナーの「#12Yoshimura SERT MOTUL」(シルバン・ギュントーリ/グレッグ・ブラック/エティエンヌ・マッソン)はFIM EWCでランキング4位につけています。しかし、首位の「#7 YART YAMAHA」との間には52点もの差が開いており、逆転チャンピオンの条件はかなり厳しいと言える状態です。

昨年をもってスズキはMotoGPとFIM EWCのワークス活動が終了しており、今季はスズキワークスによる開発が止まった状態で、「#12Yoshimura SERT MOTUL」はレース活動を継続しています。もちろんヨシムラ独自でのパーツ開発やアップデートは続いているということですし、鈴鹿8耐に対してはノウハウが豊富なので、今年はおそらく鈴鹿8耐に一点集中で全力のレースをしてくるでしょう。昨年、エースのギュントーリが欠場となる中、2人で3位表彰台を獲得した底力がこのチームにはありますから、「#7 YART YAMAHA」や国内勢との戦いはかなり面白いものになると思います。

また、今季はカワサキワークス「Kawasaki Racing Team」が参戦しないことになりましたから、カワサキファンにとっては残念ですが、FIM EWC年間参戦チームとして「#11 Team Kawasaki Webike Trickstar」(渡辺一樹/ランディ・ドプニエ/グレゴリー・ルブラン)が参戦しています。FIM EWCの年間参戦チームだった「SRC Kawasaki France」のリソースを日本のTrickstarが受け継いだものの、開幕前から色々とドタバタな状態でしたが、そんな中でもしっかりポイントを獲得してランキング6位。鈴鹿8耐はとにかくシングルフィニッシュを目指し、実績を積み重ねて来季に繋げていきたいところです。

そして、海外勢で伏兵はBMWワークス「#37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM」(マーカス・レイテルベルガー/イリヤ・ミカルキク/ジェレミー・グラハニ)です。このチームは現在FIM EWCではランキング3位につけていますが、鈴鹿8耐で15連覇中のブリヂストンタイヤではなく、UKダンロップのユーザーチームとなります。鈴鹿を知り尽くすブリヂストンに対抗するのは非常に厳しいとは思いますが、上位チームのほとんどがブリヂストンの中で、雨が降ったりすれば、一気に水を得た魚のように這い上がってくる可能性があります。

今年は7月の梅雨明けからずっと良い天気が続いている日本列島。気温35度以上の猛暑が鈴鹿8耐ウィークまで続くという予報もあります。そんな中で心配なのが、ライダーの体力と怪我。路面温度が60度を超える中でアクセルを開けていくライダーたちの体力消耗は激しく、昨年のように2人で決勝を走ることになってしまうチームは本当にタフなレースになります。

天候の変化やセーフティカー導入などレースウィーク中にも刻一刻と状況が変わるタイミングがあるかもしれません。近年の鈴鹿8耐はチームとしての統率力が特に試される、非常にタフなレースになっていると感じます。テレビでご覧の皆さんもチームと一緒になって戦っている気持ちでポジティブにエールを送っていただければと思います。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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