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昨シーズンの第3戦ではCRAFTSPORTS MOTUL Zが劇的な優勝を遂げた
全8戦で争われるSUPER GTの、第3戦の舞台は鈴鹿サーキットだ。天下に名だたるテクニカルコースとして知られ、その難易度からドラマチックな展開となりやすい。たとえば、昨年の第3戦では前戦の大クラッシュから不死鳥のように蘇った、CRAFTSPORTS MOTUL Zの千代勝正/高星明誠組が優勝を飾り、第5戦では予選最下位からカルソニックIMPUL Zの平峰一貴/ベルトラン・バゲット組が優勝といった具合に。果たして、今回はどんなドラマが待ち構えているのだろう?
今年のGT500クラスは“リベンジ”がテーマ? となれば、あのチームが……
活躍が期待されるリアライズコーポレーション
富士スピードウェイで繰り広げられた第2戦は、STANLEY NSX-GTの山本尚貴/牧野任祐組がポールポジションを獲得。決勝レースでも序盤をリードするも、2番手で食らいついていたau TOM’SGR Supraの坪井翔/宮田莉朋組が、最初のピットストップを素早く済ませてポジションを入れ替えると、そのまま逃げ切って優勝を飾っている。
この2台に共通するのは、いずれもサクセスウェイトを積んでいないことだった。逆に開幕戦を制したMOTUL AUTECH Zの松田次生/ロニー・クインタレッリ組は、42kg積んで7位に終わっている。逆に言えば、これは正しい戦い方。重い状態で、少しでも多くのポイントを稼ぐことが、シリーズを通じて重要になってくるからだ。
3位となったAstemo NSX-GTの塚越広大/松下信治組も、サクセスウェイトは8kgだったことを思えば、シリーズ序盤戦は軽さが武器になる。第4戦以降の中盤戦は、各車それなりに積むようになって状況も変わるだろうが、こと今回に関しては軽さを、展開を占う要素としてもいいだろう。
GT500クラスで唯一、現状サクセスウェイトを積んでいないのはリアライズコーポレーションADVAN Zの佐々木大樹/平手晃平組。ここを大本命としたい。もちろん根拠もある。前回のレースは終盤まで3番手を走っていたからだ。450kmレースということで、2回の給油が義務づけられていたが、ドライバー交代やタイヤ交換に関しては規制なし。
そこで100周を均等割にせず、1回目は早めにしたチームもあった中、リアライズコーポレーションADVAN Zは39周目、78周目にピットイン。圧倒的なタイヤのロングライフが、これで証明されたことになる。抑えて走って中位に留まっていたわけではないから、速さもあった。ただ、不運だったのはゴールまであと5周というところで、GT300車両との接触があり、打ちどころが悪かった。ちょうどオイルクーラーの位置する部分で、ピットに自力で戻ってはきたが、レース続行はかなわず。
今年のGT500クラスは、“リベンジ”がメインテーマなのかも。それは前回のau TOM’SGR Supraの優勝で実証されている。たまたま……というなかれ。現在のGT500クラスは実力が伯仲しているため、軽さはもちろんのこと、「悔しさをバネにして」こそ差が生じるのだ。まして、ニッサン勢と鈴鹿の相性は極めて良く、2020年から目下5連勝中。MOTUL AUTECH Zの松田組、Niterra MOTUL Zの千代組はランキングのトップ、2位につけるも、サクセスウェイトは50kg、42kgではよほど展開に恵まれない限り、優勝は難しそう。
同じようにサクセスウェイトに苦しんでいないのは、2kgの#16 ARTA NSX-GTを駆る福住仁嶺/大津弘樹組、Modulo NSX-GTの伊沢拓也/太田格之進組、そして4kgのWedsSport ADVAN GR Supraの国本雄資/阪口晴南組といったところ。特に#16 ARTA NSX-GTは、序盤に2番手を走行するも、給油中の作業違反でドライビングスルーペナルティ課せられ、10位でゴールするのが精いっぱいだった。ここも“リベンジ”の対象となるだろう。
GT300クラスのテストでは、SUBARU BRZ R&D SPORTが最速
混戦が予想されるGT300クラス
前回のGT300クラスは、ディフェンディングチャンピオンが貫禄を見せた。リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラが、新たなパートナー名取鉄平とともにポール・トゥ・ウィンを果たしたからだ。意外にもJPは、GT300クラスで初ポール。Q1を担当することが多いからだが。そして名取にとっては、もちろん初優勝となった。
今回は66kg積んでの戦いとなるから、連勝は難しいだろうが、このチームは重くなっても、しっかりポイントを積み重ねる上手さを持っている。昨年の第3戦も同様に66kg積んで3位となっており、再現なれば連覇はかなり濃厚となる。
ちなみに、GT300クラスは5月8~9日、つまり第2戦の直後に鈴鹿でテストが行われている。これは第3戦から使われるはずだった、カーボンニュートラル燃料の事前テストの意味合いも兼ねられていたが、もちろんガソリン燃料の使用も可能。どちらを使用したか明らかにされず、2日間で別々の燃料を試していたチームもあった模様。
ただし、話は前後してしまうが、再びカーボンニュートラル燃料の採用は見送られることとなった。「そのまま使える」というのが謳い文句ではあったが、燃調などに多少なりとも調整が必要で、メーカーによって実施されたGT500クラスはともかく、プライベーターが大半を占めるGT300クラスでは、まだイコールにはならないとの判断によるようだ。
ともあれ、テストの結果は予想の材料にはなりそう。まず最速タイムを記していたのは、SUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人/山内英輝組。昨年は鈴鹿で思うような結果を残せなかったが、本来はコーナリングを得意とする車両だけに、一発だけのタイムではないはずだ。しかも、今年はここまでの2戦、苦戦を強いられており、未だサクセスウェイトは積まずに済んでいる強みもある。ここで勝たねば、王座奪還は困難になってしまうかも。
ちなみに2番時計を記したのは、DOBOT Audi R8 LMSの片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン/神晴也組。F1の経験を持つメリが、片山の刺激材料となって、相乗効果でチーム全体の底上げが図られているのは間違いない。ルーキーではあるが、神もスーパー耐久でGT4のアウディで結果を残しており、いま勢いに乗る存在でもある。このチームをダークホースとして挙げたい。
さらに面白そうなのが、apr LC500h GTの嵯峨宏紀/小高一斗/根本悠生組だ。前回は予選2番手で、決勝ではタイヤ選択の失敗もあって8番手に甘んじたが、決勝のスタートタイヤがQ2で用いられたものではなく、Q1で用いられたものだったら、状況が変わっていた可能性もあった。このあたり、今年から使用できるタイヤが1セット減ったことも影響しており、このチームだけが抱えた問題ではないにせよ、上手な選択、使い方が勝負の鍵になりそうだ。
ともあれ、ホイールベースが長くて、前後の重量バランスが理想的なLC500hは、高速コーナーを得意とするのは誰もが想像のつくところだったが、岡山の中低速コーナーや富士のセクター1も苦にしなかっただけに、鈴鹿との相性は絶対にいいはず。ヨーロッパを主戦場として、結果を確実に残してきた根本の加入効果も大きく、プリウスで戦っていた2021年の第7戦オートポリス以来となる勝利を狙いに来るはずだ。
最後に、気になる天気だが、接近している台風2号が週半ばに進路を変え、東方向に向くというのが現時点での予報である。ひょっとすると、ひょっとしてしまうかも……。少なくとも、予選が行われる土曜日に雨は免れそうもない。日曜日に傘マークがなくなったのは、安心材料ではあるが。それはそれで、ドライタイヤでぶっつけ本番にもなるわけで、それによってGT500クラス、GT300クラスともども冒頭で触れたとおり、ドラマチックな展開になってしまいそうだ。
文:秦 直之
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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