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モーター スポーツ コラム 2023年3月7日

阪口晴南選手(No.19 WedsSport ADVAN GR Supra)「チーム2年目、今季の抱負」| 2023年 SUPER GT年男 新春インタビュー【年男、跳ねる!】

モータースポーツコラム by 島村 元子
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宮田莉朋選手(写真中央右)

宮田莉朋選手(写真中央右)

例年よりも寒さ厳しいオフシーズンとなっているが、2023シリーズ開幕に向けて水面下では着々と準備を進めているSUPER GT参戦ドライバーたち。今シーズンこそ優勝、そしてチャンピオンを! とそれぞれが大きな野望に向け、気持ちを新たに取り組んでいることだろう。

そこで、今年の干支である“卯”にちなみ、卯年生まれの年男ドライバーをピックアップ! 今シーズンの目標はもちろん、年男の話やプライベートに至るまで、オフシーズンだからこそ聞ける話題にググッと迫ってみた。

第2回目はTGR TEAM WedsSport BANDOHの阪口晴南選手。昨シーズンは全8戦中4戦でポールポジションを獲得したNo.19 WedsSport ADVAN GR Supraだが、うち3度は阪口選手がアタックを担当、まさに“水を得た魚”状態だったことは記憶に新しい。今回は、今シーズンこそ優勝を! と意気込む最新の声をお届けしよう。

チーム2年目、今季の抱負

──2023年シーズンに向け、ドライバーとしての目標をお聞かせください。
阪口晴南:去年はポールポジションを獲って活躍できるときもあったんですが、優勝することができなかったので、まずドライバーとしては、しっかり優勝するのが今年の自分の目標かなと思います。

──目標達成に向けて、なにか意識して新たに取り組んだことはありますか?
阪口:自分のスタイルや考え方を大きく変えるつもりはないし、これまでやってきたことは自分の中でもしっかり自信があるので、いかに自分の力を引き出せるか、いろんな知識や話を聞いたり取り入れたりして今シーズンに準備したという形です。なので、大きく変えたことはありませんは、さらにクルマの理解を深めていったシーズンオフだったかなと思います。

──シーズン中のような“現場第一”の状況から距離を置くことで、いろんなことが見えてきたということですか?
阪口:普段の日常生活のなかでふと思いつくこともあるので、すぐチームのエンジニアさんに質問してみたりだとか、“こういうのがあるんですけど”ってアイデアを伝えてみたりとか、そういうのは増えたかなと思います。走り以外でも考えないといけないこともドライバーの仕事のひとつだと思うので、自分が速く走るのはもちろんですが、チーム全体として底上げできるような意見も言う必要があるかなと思ってます。

──19号車でのシーズン2年目を迎えます。昨年の経験を踏まえ、 今年やり遂げたいことやチームドライバーとしてどんな存在になっていきたいですか?
阪口:去年はルーキーっていうか、(GT500クラスフル参戦)1年目で(TGR TEAM WedsSport BANDOHに)入らせてもらい、チームの皆さんだったり坂東(正敬)監督だったり、(コンビを組む)国本(雄資)さんに引っ張ってもらいながらやってたんですけど、早い段階からしっかりチームに溶け込んでいってる感じはあったし、シーズン中盤からどんどん自分の意見も伝えていたので、そのあたりは継続しながらやっていかないといけないなと思います。2年目なので1年目よりももっと精度の高い意見を求められてくると思うので、責任を持って取り組んでいきたいなと思ってます。監督はとても気さくな方で、たくさん話してくださいます。(サーキットでの)移動中や食事のときもたくさん話してくれるので非常に助かっていますし、国本さんも去年ほぼ初めてお話しするぐらいの間柄だったんですけど、最初からすごく気さくで優しくて、へんに先輩感を出さないというか……。長年、国本さんがされてきた経験ゆえの意見も僕にとってはすごくプラスになっています。国本さんも僕の話だったり意見っていうのをしっかり聞いてくれるような方です。

──チームでは、これまでルーキードライバーを迎える際に“個性的な”歓迎がありました。ところが昨シーズンは、それがなかったと思うのですが!?
阪口:特になかったと思いますけど……。あくまで僕の意見なんですけど、最初、ちょっと優等生というかそういうイメージを(監督の)マサさんが僕に対して持ってたと思うんです。“もっと自分の意見を言ったりとか、ガンガン来ていいから”みたいなことを最初のテストが始まる前に言ってくれたんですが、そのテストが終わった頃には、“あれ? そんな感じじゃないな、こいつ”っていうふうに多分思われたみたい。”ガンガン言ってくるな、この大阪人”」みたいな感じです(笑)。なので、すごく信頼してくださってるのかなっていうふうに思ってます。

今年は年男! 充実のプライベートでレースも万全!?

──ところで、今年は年男ですね。卯年生まれは、「もの静か、繊細、温厚な性格で忍耐強くて努力家」なんだとか。ご自身もそう思いますか?
阪口:もの静かではないとは思いますけど。ただ、“温厚”っていう言葉が正しいかどうかわからないけど、普段はあんまり怒ることはないかなと思いますね。結構、なんでも“まぁいいか”っていうふうに思う性格なので。たとえば、人に言われて傷つくこととか人に言われて怒りたくなるようなことでも、まぁいいかなっていうふうに思うタイプなので、そういうところは少し当てはまってるかなぁとは思いますが、静かではないと思いますね。忍耐は……みんな(レーシングドライバーは)あるんじゃないですか。やっぱり我慢強くないと、ドライバーとして良くないと思うんで、そこは自信はあると思いますけど。“努力家”かぁ……難しいっすね。うーん、レースをがんばることが別に努力だと思ってないんで。レースのことに対する勉強だったりとか学習みたいなことは努力だと思ってなくて、面白くて調べたりとかレースの動画を見たりしてるので、あんまり努力してこの業界でがんばってるっていう感じではなくて、ただ好きだからこの業界にいるみたいな感じですね。

───「好きだからこの業界にいる」ということですが、一家揃ってモータースポーツに長らく関わっているので、“生まれたときから”(※1)という部分があるかもしれません。

阪口:確かにそうなんですけど、昔より今のほうがレースが好きですね。意外と他の選手はカート時代が楽しかったとかプロになる前が楽しかったっていう人が多いんですが、僕はここ2年くらいが一番楽しいかなって思ってます。ここ3年ぐらいですかね……自分のことを認めてくれる環境で走れているっていうか、自分のことを認めてくれてプロとしてちゃんと扱ってくれて、もちろんそれに対してこっちも責任がたくさんあって……自分がミスだったりカッコ悪い走りをするとプロとしてダメだっていうプレッシャーもあるんですけど、逆に期待してくれる人たちに対して結果や良い走りで返すっていうことが好きなのかなって思いますね。もちろん小さいときから(モータースポーツを)やってて親の期待とかを背負って走ってるのはもちろんあったんですけど、プロになって期待してくれる人たちが増えていくなかで、その期待に応えられたときのうれしさが大きいからなのか、とても最近やりがいを感じていて……。一番レースと向き合えてるかなっていうふうに思いますね。うまく説明できないんですけど、この3〜4年はどんどん自分がレースに対して向き合えてるなっていう感触があります。

※1:祖父は2輪でワークスライダーや4輪でのレースキャリアを持ち、カートショップ「アキランド」を設立。現在は、父が代表を務める。伯父の阪口良平もレーシングドライバー。

──また、うさぎは飛び跳ねる姿から躍進、向上のシンボルでもあるそうです。昨年は結婚という大きな変化もありましたが、公私問わず年男としての抱負を教えてください。
阪口:自分含め、身の周りの人が健康な一年であればいいなと思います。(結婚を機に)住んでるところも大阪から岡山になりましたし、いろいろ変わって大変なことがもっとあるかなと思ったんですけど、意外と今の暮らしは気に入ってますし、レースにも集中できる環境を家で作ってくれてるのでその辺りはとても感謝してます。レースに集中できてるなと思いますね。

──前回の年男は12歳のとき。振り返って、当時の“若き阪口晴南さん”に、今どんな声をかけてあげたいですか?
阪口:小学6年生ですかね!? メッセージか……難しいなぁ。めちゃくちゃカートをやってたと思うんで、土日はもう100パーセントサーキットにいたし。平日も学校休んで行ったりしてたので、そのときはそのときで忙しいスケジュールをこなしていたと思うんですけど、もしプロになったらもっと厳しいというか、すごいスケジュールになって(レースに向けて)緊張だったり……本当に大変な世界なんだろうなっていう“莫大な不安”じゃないですけど、自分がドライバーになれるかちょっと心配な時期だったような気がするんです。だけど、“意外とうまくいってます”っていうのは伝えたいですね(笑)。感受性豊かな時期じゃないですか、10歳くらいから16歳ぐらいって。今から考えれば必要のない不安っていうのに駆られる時期だと思うんで、そういったことはあんまり気にしなくて“レースをシンプルに楽しんでほしい”っていうことを伝えたいですね。

──では、次の年男……36歳になったとき、どんな人になっていたいと思いますか?
阪口:がっつり日本のトップカテゴリーで走っていたいと思います。で、そのあいだに何回もシリーズチャンピオンを獲得しておきたいです!

開幕目前! 近づく事前テストに向けて

──1月の鈴鹿サーキットでのテストは、雪になって残念ながらほとんど走れませんでした。その後、2月15〜16日に富士スピードウェイでヨコハマタイヤのプライベートテストがありましたが、現状(※2)の手応えをお聞かせください。
阪口:(富士のテストでは)路面も濡れずに2日間とも走れて、まぁいいテストだったかなと思います。特に2日目の午前はそこそこ日も出てくれたので路温は少し上がったかなっていうコンディションでの(タイヤの)評価がちゃんとできたので、そこは良かったかなと思ってます。(KONDO RACINGの24号車と)2台で走ってたので、当然トラフィックなんてないですし、もう自分たちのやりたいように時間使ってやらせてくれたのでかなり良かったですね。

※2:取材は2月17日に実施。

──昨シーズンはヨコハマタイヤとしてのポテンシャルアップを見せる機会が多くありましたが、今回のテストでも新たな期待を感じることはありましたか?
阪口:去年、周りから見ても僕たち(ヨコハマタイヤとして)の課題はわかりやすかったと思いますが、逆に強みもあったので、この辺りをしっかりと精査して今年に臨むつもりです。実は、テスト2日目にはひとつふたついいアイテムが見つかったので……。ちょっと期待してもいいんじゃないかなって今のところ思ってます。当然、(タイヤ性能として予選での)一発(の速さ)とロング(での耐久性)っていうのはイコールだったりイコールじゃなかったりするので、(ポールポジションを)“獲った・獲られた”っていうことを僕たちの中でしっかりと理解してやっていかないといけないなとも思ってますが、傾向として、“これは決勝に対して期待していいんじゃないか”っていう方向が2日目(のテストで)見えたので、かなりプラスな材料だったかなと思ってます。

──この先、開幕までにどんなことをフォーカスして準備すべきだと思いますか?
阪口:時間に限りのあるテストのなかで時間を有効に活用したいです。今持ってるアイデアのなかに結構いいところがあると思ってるので、その判断を間違えたくないっていうのが自分の中であって……。もう僕らは“数打って、アタリを探す”っていう次元にいなくて、しっかりと高い次元で(タイヤの)評価ができていると思ってるので、自分たちのやってきたものだったりアイデアに自信を持ちたいです。しっかり腰を据えてテストをして、確認を重ねていきたいなと思っています。ヨコハマタイヤさんも僕たちも……24号車の皆さんもそうだと思いますけど、去年1年は(4度のポールポジション獲得により)レース結果以上の自信みたいなものをチーム一同で得られたと思ってるので、今年は意識が変わってますし、その分期待感もすごく強いと思うので、必ず安定して日曜日の(レース)結果残さないといけないなと思ってます。あと、シンプルな話ですけど、ライバル勢も間違いなくレベルアップしてくるのでその度合いもこっちのほうが2ステップ、3ステップ(先に)行けるかっていうところだと思うんで……。今年は簡単に予選をやられる(ライバルに先行される)可能性だってあるのでその辺りは引き締めてがんばりたいですね。

──期待が膨らむなかで迎える開幕戦・岡山、ずばりどこを狙いますか?
阪口:岡山は……簡単ではないと思ってて。結構、僕たちにとっては難しいレースになるんじゃないかなと正直思ってるんですけど、そこでしっかりと上位争いして終われたら中盤戦はかなり期待していいと思うんで、そういう意味では自分たちの今のポジションっていうのがどこにあるかをしっかり確かめるためにも重要なレースになるんじゃないかなって思ってます。なので、暑い時期の鈴鹿だったり、富士だったりっていうところでもしっかり結果残したいというイメージがありますね。

──では、シーズン開幕を心待ちにしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
阪口:去年もたくさんの応を本当ありがとうございました。現地に来てくださってたくさん手を振ってくださったり、チームのグッズやウェア身に着けてピットウォークに来てくださって、すごく僕たちの励みになったし力になりました。今年もできればサーキットに足を運んでいただいて、間近で応援してもらえたらと思います。必ず目立って、カッコいいところ見せてがんばりたいと思います。応援してください!

──最後に恒例の「この24時間であった幸せなこと」は?
阪口:なんですかね(笑)……上手な睡眠を取れたことかな。昨日の晩は遠征から帰ってきた日だったんで、しっかり寝れたなって。時間じゃなくて(眠りの)質が良かったんです。朝起きたとき、幸せなのかな? 分かりませんけど(笑)……健康的な朝だなと思いました。

文:島村元子

島村元子

島村 元子

日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。

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