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モーター スポーツ コラム 2022年12月1日

平峰一貴選手(No.12 カルソニックIMPUL Z)「クルマに乗り込んだら緊張なんか忘れて、勝手に身体が動いていた」 | SUPER GT第8戦

SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子
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TEAM IMPUL

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レースでの出来事をドライバー自身に振り返ってもらう「SUPER GT あの瞬間」。レースでの秘話、ドライバーのホンネを“深掘り”し、映像とコラムでお届けします!

TEAM IMPULといえば、ホシノレーシング。また、カルソニックブルーのマシンを思い浮かべるレースファンは数知れない。かつて“日本一速い男”と呼ばれた星野一義監督が牽引するチームは、ついに今シーズンのシリーズタイトル獲得を達成。2022年シーズン最後の「SUPER GTあの瞬間」では、27年ぶりの戴冠に貢献したドライバーのひとりである平峰一貴をクローズアップし、タフなシーズン、そして最終戦もてぎでの心中を語ってもらった。そんななか、取材直前に届いた“お祝い品”を披露してもらうも……。

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──チャンピオンになって10日ほど経ちました。王座についた決勝日と比べ、チャンピオンになった実感はより湧いてきましたか?

平峰一貴:正直、チャンピオンを獲ったっていう実感が10日経っても全然……。自分がチャンピオンなんだっていうのは、まだ実感がなくて、ただ、なんかいろんなSNSを見てると、“インパルがチャンピオンを獲った”なんていうのを目にするんで、それを見て、“あぁ、チャンピオンになったんだな”って。インパルがチャンピオンを獲ったことと、また、一緒にレースをやってきたブリヂストンさんともチャンピオンを獲れてうれしいなっていう気持ちがあります。

日曜のレース後は、(コンビを組むベルトラン)バゲットさんと一緒に帰ってきて、バゲットさんとバゲットさんのマネージャーさん、バゲットさんのお父さんの4人で一緒に祝勝会をやってたんですが、“もうそろそろ帰るね”って言ったのは、確か深夜1時半とか2時ぐらいだったと思うんですよね。(家に)帰ってきたときはホッとした感じでしたが、全然寝れなくて。何時だったっけな? 僕、山本尚貴(No.100 STANLEY NSX-GT)さんとインスタで連絡取り合ってたんですよ。山本さんにスタンプ送ったら、“お前、まだ起きてるのか”って(返信があった)……“寝れないです”なんて言って(苦笑)。とりあえず荷物とか開けてゆっくりしようかなと思ったけど、もう全然寝れなくて。耳も“ポーン”ってずっと鳴ってて。興奮状態のままだから、“寝れないな”と思って、もう身を任せて過ごしていた感じでした。

──第7戦が終わった時点で、ランキングトップの3号車(CRAFTSPORTS MOTUL Z)とは2.5点差。レースウィークに向けて、どのような気持ちでサーキット入りしましたか?

平峰:SUGO、オーポリ(オートポリス)……結構もうそのぐらいからずっと、“最後の2、3ヶ月はツラいだろうな”と思ってたんですけど、多分みんな一緒だと思って。最終戦に向けて、3号車に対して2.5ポイント差でもてぎに入ることになって、その前もやっぱりいろいろ緊張とかプレッシャーもあったんですけど、どうしたってプレッシャーが来るんだから、楽しもうかなっていうふうに思って。で、どんな状況になってもすぐに気持ちを切り替えられるように、いろんな準備をしてきました。チームも準備をいっぱいしてきてくれてたんで、その思いを乗せてしっかり走れるようにしておかないと、って思ってました。まあまあの……いや、結構なプレッシャーはかかってましたね。

基本的にはしっかりトレーニングをして、あとはきっちり休んで……。無駄な時間を過ごさないってことを、つねに心がけてました。トレーニングするときはしっかりトレーニングする、休むときはしっかり休む。自分の走りであったり去年のデータとか、いろいろ見ながらどんな走りをしてたっけなって思い出しながら、あと、去年(のもてぎ戦は)、8号車(ARTA NSX-GT)が勝っていたので、もてぎは特にホンダが強いだろうなと思ってて。その車載映像を最初から最後まで何回か……2回か3回ぐらいは見直したのかな。で、どういう走りが必要なのか、ホンダはどこが速いのか、逆に12号車はどこが遅かったかをしっかり見直していました。全体的に、ドライビングの研究が多かったかなと思います。

──今シーズンは、バゲット選手との新コンビで第2戦富士で初表彰台に上がり、第4戦富士で2位、第5戦鈴鹿で初優勝と流れができていくなかで、どのあたりから“タイトルが獲れるかも”と強く意識し始めたのでしょうか?

平峰:もちろん、シーズンはじめからチャンピオンを獲りに行くつもりではいたんですけど、(タイトルが)獲れるなというか、もう腹を括らないと……いよいよ本当にチャンピオンが目の前に来たなと思ったのは、鈴鹿の優勝のときでした。あそこでライバル(3号車)と10ポイント離れたんですけど、(以後の結果次第で)一瞬でひっくり返されるだろうなと思ったし、タイトルを獲りに行くには、あとは自分たちがしっかり安定してポイントを取らないといけないだろうなと思ったんです。鈴鹿以降はチャンピオン獲得にフォーカスしていかないとなって思いました。個人的にも、メンタル的にはだいぶ変わったかなと思います。挑戦することもそうだし、忍耐力でも。苦しい時もあったんですが、そういう時に何をしないといけないとか、平常心を保つとか。そういうことにも変化がありました。

──鈴鹿の優勝でサクセスウェイトも重くなり(第6戦SUGOでクラス最重量の89kgを搭載)、SUGOそしてオートポリスでは予選で苦戦しましたが、決勝で5位、6位という形で入賞連続。12号車としての底力が発揮されたと思います。

平峰:(サクセスウェイト搭載に加え、燃料流量)リストリクター(の調整)がSUGOでは3ランク(ダウン)になり、 オーポリでも1ランク(ダウン)だったんで、やっぱり“燃リス”が結構効いてたかなというのはありますね。結構ツラかったんですけど、でも、自分たちが持ってる底力でライバルたちとしっかり戦えるなという自信を持って走ってました。最後の3戦……もてぎに来るまでのSUGOとオーポリに関してはツラい感じではあったんですけど、それ以上に結構チーム力がスゴかったし。特に星野一樹さんが(テクニカルアドバイザーとして)今年から(チームに)入ってくれて、底上げにすごい協力してくれて。チャンピオンに導いてくれたのは一樹さんだと思ってますし、後半戦はツラかったけど、一樹さんの助けがあって乗り越えれたかなって思いますね。

レース直後に星野一樹さんと抱き合って喜ぶ平峰選手

レース直後に星野一樹さんと抱き合って喜ぶ平峰選手

──そのもてぎの予選日ではいつも以上に集中しているのか、顔の表情がかなり険しく見えました。その中でバゲット選手がQ2で3番手のタイムを出して好位置からスタートできることになりましたが、決勝前夜はよく眠ることができましたか?

平峰:あのねぇ……予選は本当にキツかったんです。もうなんか、“平峰、大丈夫か?”って逆に言われるぐらい。いつもはあそこまで緊張することはないんですけど、あの予選はすごい大事だったんで。なんとか(Q1を)通れたんで良かったと思ってたんですけど、僕は(Q1)アタックしたときにちょっと失敗したとこがあって……。レースには正直自信があって、自分の力を出し切れるという自信はあったんですが、予選に関しては、特に17号車(Astemo NSX-GT)と3号車の前には絶対にいないといけないというのがあったんで、すごいプレッシャーでした。で、バゲットさんが3位に入ってくれてすごくうれしかったし、アタックもすごくカッコよかった。なので、決勝はもうやり切るだけだし、土曜日の夜はもう爆睡しました! もうすっげぇ爆睡してました。多分、イビキかいてたと思います(笑)。予選に関しては、予選までのフリー走行であったりとかいろんな流れがあったし、それこそ時間を無駄にしないっていうのと足踏みしないっていうことがすごい大切だったんで、その辺で結構神経を使ってましたね。

──レースでは、スタート担当のバゲット選手が得意のスタートダッシュで19号車(WedsSport ADVAN GR Supra)をハードプッシュ。一方で、17号車がうしろから追い立ててくるという攻防戦にもなり、それをどう見守っていましたか?

平峰:19号車とのバトルに関しては、そんなに心配してなかったです。“うゎ、いつも通りの走りをやってる。すっげえな”って思っていました。チャンピオン争いしてるのに19号車にそんな勢いで行っちゃう!? " みたいな。でも、(バゲットは)クラッシュしないんですよね。彼の“紙一重的”な戦いぶりっていうのは、本当にカッコいいなと思っていつも見てるし、尊敬してます。17号車もね、去年(12号車で)一緒に組んでた松下(信治)が来てたんですが、彼らふたりのバトルも見ていていい刺激をもらいましたし、“ふたりともすげえな”と思ってました。バゲットさんに関しては、全然安心して見てましたよ。それよりも、自分のスティントのほうが心配だったんで、“早く出番来てくれっ、早く終わらしてくれ”って思ってました(苦笑)。

──23周終わりで前を走る100号車を筆頭に12号車、14号車の3台がピットイン。3台は順位を変えることなくなくコースに戻りました。同時ピットインでのコース復帰になりましたが、どういう気持ちでコースに向かいましたか? つねに前後を意識してたのか、とにかく自分自身だけのことを集中してたのか、どのような感じでしたか?

平峰:(待機中は)“もう早く出番が来てくれ”って思ってたんですけど、実際にバゲットさんがピットロードからブーって戻ってくると、“うわっ、来ちゃったぜ。自分の出番”みたいな感じだったんです(苦笑)。でも、いざクルマに乗り込んだら、もうそんな緊張なんか忘れて、やることをしっかりやるだけって感じだったんです。もう勝手に身体が動いてましたね。あの時から完全に集中モードに入ってました。走っているときは自分のことも考えてましたし、前の山本さん(100号車)だけでなく、うしろからヤマケン(山下健太:14号車)が来てるのは認識していたんで、前後を気にしながら走っている感じでした。特にチャンピオン経験者に挟まれて走るっていうのは、めちゃくちゃ面白いなと思ってたんですよね。すごい楽しんでました。もちろんプレッシャーもたくさんあったし、“まだかな、まだかな。早く終わりたいな”とか、“(周回遅れのGT)300がこの周に来るな”と思ったり、意外と楽しんでましたね。

──楽しむ中で、100号を車抜いて勝っちゃえ! っていう気持ちはなかったのですか?

平峰:何回かあったんですよね。(前が)近づいてきたから仕掛けたいなと思ってたんですけど、でも、正直、僕らに100号車を抜けそうなパフォーマンスはなかったんですよね。速さがなかったんです。山本さんにコントロールされてるなっていう感じもあったたし。近づいたり離れたりはしてたんですけど、それを何回か繰り返してるうちに、“あ、これコントロールされてるな”と思ったんですよね。だから、無理に仕掛ける必要はないと思いました。ただ、もし100号車がもうどうしようもない感じで(スピードが)落ちてきたら仕掛けないといけないんで、その準備は割とできていたつもりです。でも、明らかに100号車のほうが全然速かったですね。

──迎えたファイナルラップは、どんな思いで走ったのでしょうか?

平峰:残り3ラップとか、2ラップのときと全然変わらないです。 もう(最後の)1周だから流すとかそんなこともなくて、チェッカーを受けるまではとにかく集中切らさずにって感じでしたね。完全に集中して、ずっとゾーンに入ってる感じでした。去年(の第7戦もてぎ戦は)、最終ラップでガス欠症状が出ちゃってるんで気は抜けないですよ。あの時は結構ダメージがデカかったし。普通のレースで負けちゃうより、ものすっごいなんか……身体も結構、あの時は追い込んでたんで。トップ走ってて、“いける(勝てる)んじゃねえか”って、あの時は思っていたんですよ。うしろから8号車の野尻(智紀)君が来てたんで、“抑えるぜ!”って自信もあったのに最終ラップでガス欠して……。そのあと、もう本当にダメージがデカかった。その時のこと考えると、“絶対に最終ラップが終わるまでは気を抜かない”っていうのをレースウィークに入る前から決めていたんです。チェッカーを受けるまでは、ずっと全開で行くって感じでした。

僕、“GT500のチャンピオンを獲る”って僕の人生の師匠に伝えてから、7〜8年は経つのかな!? その時からいろいろなことがあったんですけど、何人かの人にたくさんお世話になったので……。チェッカーを受けたとき、その人たちの顔が浮かんできて、涙がぶわって出てきたんです。力がすごい入ってたのかわからないですけど、全部の力を出し切ったなっていう感じでしたね。クルマを降りたあとも力が入らなくて、なかなかメルメットを脱げませんでした。

──結果、星野一義監督はもちろん、チームにも27年ぶりの王座(※1)をプレゼントすることになりました。舞台を整えてくださった星野監督に改めて、どんな気持ちを伝えたいですか?
※1:TEAM IMPULは、SUPER GTシリーズの前身である全日本GT選手権で1994、95年に連覇。今回はそれ以来となる戴冠。

平峰:27年ぶりって言われるんですけど……。このあいだ一樹さんとバゲットさんらとメシ食ったんですけど、一樹さんが言うには、当時はドライバーがひとり……影山(正彦)さんひとりのチャンピオンで、その頃は自社メンテ(ナンス)じゃなかったみたいで……。今回は、インパルが自分たちでメンテをしてチャンピオンになったから、初めて(のチャンピオン)みたいな感じなんだよって言ってくれたんですよね。監督もすごい喜んでくれましたが、そこに自分もいられたし、貢献できたというのがすごく大きなことです。

(インパルとは)今年で3年目ですけど、監督には2020年からどうしようもない僕をずっと使ってもらい、感謝、感謝です。感謝してもしきれないっていうのが正直なところですね。つねに走りに関しても、取り組み方に関しても、すごく厳しく接してくれましたし、その厳しさを受け止めて戦ってこれました。もちろん監督だけじゃなく、チームも僕がガムシャラにやってる姿を見て、がんばれ、がんばれって言ってくれたんで……。監督がそういう熱い方なんで、やっぱりチームのみんなも熱い方なんですよね。みんなすごく厳しいけど優しいし、それぞれ個々の仕事に全力で取り組んで支え合ってるので、本当にすばらしいチームに巡り合えて良かったなって思います。だから監督にもお礼をたくさん言いたいんですけど、一樹さん、高橋(紳一郎)工場長と大駅(俊臣)エンジニア、メカニックのみんなにも感謝してます。

──改めてシーズンを振り返ると山あり谷ありだったと思うんですが、一番印象に残っているのは?

平峰:鈴鹿の優勝がやっぱり大きかったですね。そこから……それまでも表彰台をしっかり獲得できたことが、大きかったかなと思います。 今年全部で4回乗ったのかな!? (シリーズ戦の)半分、表彰台に乗ってるし、その中で1回優勝できたのはデカいと思います。本当はもう1回勝ちたかったんですけど、優勝っていうのはタイミングで巡ってくるような感じなので。でも、やっぱり今年はチーム力がすごく高かったと思います。

12号車 カルソニック IMPUL Z

12号車 カルソニック IMPUL Z

──ちょっと気が早いのですが、ディフェンディングチャンピオンとして2023年のシーズンをどのように戦っていきたいと思いますか?

平峰:チャンピオンの獲り方を僕は経験できたので、来年に関してはその経験を生かしていきたい。今年チャンピオンは獲れましたが、自分としてダメだったところはあるので、そこをしっかり見直して来年に繋げないといけないっていうのと、あとは、チャンピオンを獲ったから、さらに違うプレッシャーが押し寄せてくると思うので、しっかり準備をして、トレーニングをして……いろんな人たちの意見を聞きながら、いろんなことを吸収して戦っていきたいと思います。その上で、来年もチャンピオンを獲れたらいいなと思います。

──ところで、この取材直前に“とっておき”のお祝い品が届いたそうですね。見せていただけますか?

平峰:はい、鹿の角です! 僕ね、動物大好きなんですよ。動物が大好きでよく北海道行くんですけど、北海道に行ったら鹿サンがいっぱいいるんですよ! 角は伸びるとポロっと落ちるんです。その落ちたものを送ってくれる人がいてね。どんどん生えて、生え切ったら最後はポロンって落ちるんですよ。“その辺にいっぱい落ちてるから送ってあげようか”って言ってもらって、送ってもらったんです。

鹿の角を手に語り始めた平峰選手。途端に目がキラキラとしはじめ、テンションアップ! 角にまつわる“ウンチク”も飛び出すなど、もう止まりません!

平峰:角には(根本の)ザラザラした黒いところと(先の)白いところがあります。白いのは、痒くなって木などに角をこするからなんです。こすってたら白くツルツルになるんです。角を見てるとテンションが上がりますね。これをお家の玄関に置いて飾ってるんです。用事があって北海道に行くときには、鹿にも会いに行くんですが、なんとか近づこうと思っても野生なんでやっぱ逃げちゃうんですよね。最初、“勝ったら角を送ってあげる”と言われたんで、“じゃあ勝ってやる!”って。(優勝した)鈴鹿のあとに1本送ってもらったので、今回はチャンピオンを獲ったから今日(もう1本)来たんです。うれしいなぁ。

……2本の鹿の角を手にした平峰選手、おもむろに自身の頭にあてがって、もうすっかり鹿になりきってるような……。この様子は、ぜひ動画にてお楽しみください!

無料動画

【SUPER GT あの瞬間】SUPER GT 2022 第8戦:平峰一貴 選手(No.12 カルソニックIMPUL Z)

文:島村元子

島村元子

島村 元子

日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。

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