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公式練習のクラッシュから奇跡の復活、決勝では逆転優勝を果たした17号車。
SUPER GT第7戦。舞台は九州のオートポリス。
週末は好天に恵まれ、10月というのに夏日の連続。阿蘇の外輪山に位置する当地は、天候に悩まされることが多かったのに、今年は異例でしたね。
土曜日の午前中に行われる公式練習走行では、多くのドライバーがグリップ不足を口にしていた。富士スピードウェイや鈴鹿サーキットと比較するとイベント数が少なく、コースの路面はグリーン状態。緑色ということではなくて、アスファルトそのままと説明すれば、ご理解いただけますかね。そして、クルマが走行、周回を重ねる毎にグリップが高まる。それは、タイヤのラバーがコース路面に付着して<ラバーグリップ>が増すから。今回は大丈夫でしたけれど、ラバーグリップがついた後に雨が降ると路面はまたグリーンに戻ってしまう。
2時間の練習走行の間でも路面の状況は変化、タイムが出るようになっていった。セッションの終盤、予選へ向けて最終チェック&プッシュしていたAstemo NSX-GT 17号車がスピンし、クラッシュ。フロントからバリアに突っ込んでしまったため、エンジン前のカウルや補器類を破損してしまった。予選まで、約3時間半。この時間内で修復できるのか。ピットに戻されたクルマにメカニックさんたちが素早く取り付く。ピット内は蜂の巣を突いたような凄い状況。ドライブしていた松下信治選手がピットの奥でその様子を見守っていた。NSX勢のポイントランキングトップとしては、なんとしても予選に間に合わせないとならない。メカさんが彼に言ったそうだ「これくらい絶対に直してやるから。走りに集中して、何も気にせずに待ってくれ」と。
予選が数分後に始まる。そこには、カラーリングされていないカーボンブラックのフロントカウルを装着された17号車があった。メカさんたちの迅速で懸命な作業で間に合った。「間に合わないと思っていたけれど、間に合わせてくれた」と金石勝智監督が目を赤くしてポツリと言った。Q1を7番手で突破。そしてQ2で4番手。NSXの最上位、2列目のグリッドから決勝をスタートした。序盤で3位へ。第1スティントは、ミニマムラップ。ピット作業でまたしてもメカさんのパフォーマンスが光る。全車がピットストップを終えると、当然のようにトップを快走する17号車がいた。そして2位に大差をつけてゴールへ。
勝利に歓喜するドライバー二人と監督。その喜びは、頼もしいメカさんたちがもたらしてくれた最高の喜びだった。
文:高橋 二朗
高橋 二朗
日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。
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