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モーター スポーツ コラム 2022年9月29日

サクセスウェイトが半減するオートポリス。だがしかし…

SUPER GT by 秦 直之
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昨年のオートポリス大会は、ARTA NSX-GTが圧勝した。

前回のプレビューで予想したとおり、スポーツランドSUGOではセーフティカーもFCY(フルコースイエロー)も1回ずつ出た。だが、いずれもレース序盤だったこと、そして短時間であったことで、レース展開に影響を及ぼすことはなかった。それ以上の影響が、あれほどまで天候変化によってもたらされようとは、思いもしなかったというのが本音である。

レース中に降ってきた雨が、絶えず勢いを変化させ、時にはやんだりもしたことで、下される判断がいかに重要か、大いに理解してもらえたのではないか?状況を改めて説明すると、途中で降ってきて、急に路面を激しく濡らし、いったんはやんで路面を乾かせた。なのに、終盤になって、また降り出すという…。まったくもって意地悪だ。

さて今回、シリーズ第7戦はオートポリスが舞台となる。阿蘇山中に位置する高地のサーキットで、地形を活かしたテクニカルレイアウトは、ドライバーにも非常に好評である一方で、タイヤへの攻撃性も極めて高く、タイヤマネージメント重要性は他のサーキット以上。ドライコンディションが保たれたとしても、状況によっては2ピット必要とされることさえある。

今回はサクセスウェイト半減のレースではあるが、それをもう、レースを占う要素としなくてもいいのでは、と思うのはSUGOも同じようにアップダウンに富んだテクニカルレイアウトだったのに、絶対と言えるほどの影響を及ぼさなかったからだ。今回、半減と言えども50kgオーバーのチームはGT500クラスで2チーム、GT300クラスで4チーム存在するが、やはりこれまで同様、結果を残してしまうのではないか。

天候変化を完璧に読み切った、CRAFTSPORTS MOTUL Zが2勝目挙げる

第6戦を制したCRAFTSPORTS MOTUL Z。

改めて前回のレースを振り返ってみたい。優勝したのは予選11番手だった、千代勝正/高星明誠組のCRAFTSPORTS MOTUL Zだ。グリッドにマシンが並べられる頃、小雨が降り始めて、各チーム、ウェットタイヤを持ち込むも、この時はすぐにやんでいた。が、スタートから10周ほどしたところで再び降り始めて、やがてコースを水浸しにした。ほとんどの車両がピットでウェットタイヤに改める間、コース上にステイし続けていたのが、笹原右京/大湯都史樹組のRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTと松田次生/ロニー・クインタレッリ組のMOTUL AUTECH Zで、やがてトップ、2番手に浮上する。

そんな中、GT300クラスでもステイしていた車両がコースアウト。これでFCYが出され、その直前にウェットタイヤに交換できたことで、この2台がマージンを得たかと思われた。しかし、路面が徐々に乾いていく状況でも、なかなかタイムに変化がなかったのがCRAFTSPORTS MOTUL Z。そこで規定いっぱいの周回まで千代を走らせ、そして高星にはドライタイヤを授けることに。この対応が的確だったことで、CRAFTSPORTS MOTUL Zはトップをキープ。また雨は降り始めるも、高星はペースを落とさず。そのまま逃げ切って今季2勝目を挙げるとともに、ランキングでもトップに躍り出た。2位はMOTUL AUTECH Zで、3位はRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTが獲得。

つまり、我慢が必要だったのだ。天候変化に素早く対応し、3ストップを選んだチームもあったが、ことごとく順位を下げてもいた。裏を返せば、特にCRAFTSPORTS MOTUL ZやMOTUL AUTECH Zが履く、ミシュランタイヤが幅広く対応できていたというのもある。逆もまた然り。対応できなかったから、あえて積極的に行かざるを得なかったとも。

山の中のオートポリスも天候が変わりやすい

予選での速さは際立っているが、決勝で結果を残したいWedsSport ADVAN GR Supra。

オートポリスの天気もまた気まぐれだ。何せよく霧が出る。実際には周辺の高度からすれば、雲も同然であるから、いったん出ると居座り続ける。雨を降らせて、ようやく霧は晴れ、止むとまた霧が……という繰り返しが過去に何度もあった。週末の天気は、今のところ悪くなさそうだが、下山してみると雨が降った形跡など少しもなかったのに、というサーキットでもあるから油断ならぬ。とにかく気まぐれな天気なら、また翻弄される可能性もあり、ミシュラン勢がまた有利にレースを進めるかもしれない。

さて、昨年のレースである。優勝を飾ったのは、野尻智紀/福住仁嶺組のARTA NSX-GTで、2位の立川祐路/石浦宏明組のZENT CERUMO GR Supraを30秒近く引き離した。冒頭で、重さはもう関係なさそうと評したが、舌の根も乾かぬうちに前言撤回。この2台はサクセスウェイト21kgと16kgである。もともと地力のあるチームであるのに、今年はどうにも展開に恵まれずにいるだけに、そろそろ結果を残してもおかしくないからだ。

ことZENT CERUMO GR Supraは前回予選2番手で、4回目のポールポジションを奪った、国本雄資/坂口晴南組のWedsSport ADVAN GR Supraを、スタート直後に小気味よく抜いていた。あのまま天候がそのままであれば、トップを守り続けていたかもしれない。だが、彼らには運が足りない。「そろそろ発散しないと、やっていられないよ!」、今はそんな心境ではあるまいか。「無念ポイント」があるとすれば、今回が還元されるタイミングになるかもしれない。

GT300クラスの方が、さらにサクセスウェイトに関係なく

第6戦でGR86にとって初優勝を獲得したmuta Racing GR86 GT。

前回のGT300クラスでは、加藤寛規/堤優威組のmuta Racing GR86 GTが優勝。これはまた、ニューマシンのGR86にとっても初優勝だった。シーズン序盤は産みの苦しみをさんざん味わっていたが、それが逆に功を奏して21kgのサクセスウェイトであったことが、勝因のひとつともなったが、このチームもまたタイヤ戦術は抜群だった。早めのウェットタイヤへの交換もさることながら、加藤選手から堤選手への交代をギリギリまで遅らせ、ドライタイヤに交換。このタイミングが絶妙だったし、再び降り出した雨にも難なく対応していたからだ。

だが、それにしても…である。GT500クラスに増して、このクラスのランキング上位陣は、重さを苦にしていなかった。新田守男/高木真一組のK-tunes RC F GT3がポールポジションを奪って、高木が最多記録更新で沸いたのも束の間、重量不足で失格に。それで繰り上がったのは89kg積んでいた井口卓人/山内英輝のSUBARU BRZ R&D SPORTだ。山内はSUGOで4年連続のPP獲得。いかに相性がいいにせよ、この段階で「どうなっているんだ」と思ったものだ。

決勝ではSUBARU BRZ R&D SPORTSは、タイヤ選択を見誤った一台。それでも8位でゴールしてポイント獲得に成功する。そして、サクセスウェイトのおかげで雨の中、トラクションが良くかかるようになったんじゃないかとまで思わせたのは、藤波清斗/J.P.デ・オリベイラ組のリアライズ日産自動車大学校GT-Rだ。100kg積んでQ1を通り、JP選手のペナルティポイントの蓄積で4グリッド降格となっても、12番手からスタート。それで最終的には4位である。

さらに富田竜一郎/大草りき組のTANAX GAINER GT-Rも、93kg積んで3位でゴール。その結果、リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rに4ポイント差にまで迫ってきた。が、今回はエース富田不在の一戦でもある。あらかじめの契約により、海外レース出場を優先しなくてはならず、大草は第3ドライバーとして登録されている塩津佑介との参戦となる。ルーキー塩津は公式練習こそ走ってはいるが、予選、決勝は今回がデビューとなる。果たして、どんな走りを見せてくれるのか注目されるが、こればかりは蓋を開けてみないと分からない。

一方、昨年は嵯峨宏紀/中山友貴組のPRIUS GTが優勝しているが、残酷な話であるが、再現はよほどのことがなければないだろう。今年のハイブリッド車両に対するBoPは、あまりに厳しすぎるからだ。

それはさておき、過去の例からしてもコーナリング自慢のGT300車両に有利なのは明らかで、SUBARU BRZ R&D SPORTやmuta Racing GR86 GTに、引き続き活躍の可能性は十分ある。その上でリアライズ日産メカニックチャレンジもしぶとくレースを進めていく。最終戦に向けて、チャンピオン候補は絞られそうだが、順位に大きな変動はなさそうだ。

文:秦 直之

秦 直之

秦 直之

大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。

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