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今大会でWRC史上最年少優勝獲得を狙うロバンペラ。
ニュージーランドはオーストラリアに近い2つの主たる島で構成され北島はオークランド、南島はウエリントンが代表的な都市です。両国は共に英国連邦を構成し、英語を話すのでお互いに相手国人を冷やかしと親密感を混ぜ合わしたような感覚でオージー/キウイと呼び合っています。ニュージーランドには人口より多くの羊が飼育されるとも言われ牧畜で知られています。ここで行われるラリーはグラベル。丘陵沿いの路面はカーブの部分は側に傾斜がつけられておりスムーズな路面も相まってラリー車がまるでダンスを舞っているように見える場面もあります。
WRCの歴史の中でニュージーランドはケニア、アルゼンチン、オーストラリアなどと共にヨーロッパ地域外の中核ラリーの地位を占めていました。しかし90年代に年間12戦程度の殆どを常連のクラシックラリーのみで回すことに反対する動きがFIA内部で活発化した結果、18ラリーを3つのグループに分けて3年間に1回お休みする方式でなんとか妥協点を見出しました。最もネームバリューの高いモンテも例外なく3度に一度はお休みになりました。モンテの主催者はこの案に反発してWRCを一時脱退、IRCなる別シリーズに参加してしまいました。ローテーション・システムも消化不良で終了し、その間FIAではラリー委員会を2つの委員会に分割し、WRCの案件のみを扱う“WRC委員会”とその他のラリーを扱う“ラリー委員会”に分割しWRC委員会ではカレンダーの決定には“興業的価値”や“世界観”を含んだ価値観を導入することにしました。
世界選手権の“世界”とは何か、少なくとも5大陸はカバーすべきとの意見はごもっともであり、何故アジアが抜けているのか、生産車ベースのスポーツなのに世界のメーカーの中から参加者が極端に少ない(現在はトップクラスでトヨタ、ヒョンデ、フォードのみ)、など議論百出です。私も現在の参加メーカーに少なくともあと3社、フランス、ドイツ、イタリアが加われば立派な世界選手権と言えると思います。ラリー開催は易しいものでなく、資金の調達、人材の確保、環境問題の解決等々それぞれ大仕事です。世界の経済市況や今回のコロナ禍のような出来事にどうしても左右されてしまいます。
ニュージーランドはこのような議論に最も影響を受けたラリーです。オーストラリアと比較され、どちらか一つでいいだろうと言われ続けてきました。組織の弱体化もあって2012年以降WRCシリーズから脱落、2020年に復帰の予定でしたがコロナのため延期となり今年久方ぶりの復帰です。ニュージーランドは面白い記録を持っています。2007年SS350キロ走行後グロンホルムが2位のローブに10分の3秒差で優勝。2011年ヨルダン・ラリーでオジェが10分の2秒差で勝利するまで僅少差ナンバーワン優勝でした。
今回のラリーは金曜日SS6本(3本の2回走行)ロングSSでSS3/6は31.48kmのロングコースで今年のWRCシリーズ最長です。しかもこの日は中間サービスなし。中間サービスは土曜日のみ。チャンピオンシップを激しく争うトヨタはロバンペラ、エバンスに加え今回はオジェを起用。ヒョンデはタナク、ヌーヴィル、ソルベルグ。トヨタはチームから勝田選手が参戦します。フォードはブリーン、グリーンスミス、フルモーの出場です。
ラリー概要は下記のとおりです。
SS本数 | SS km | Liaison km | Total km | |
---|---|---|---|---|
L-1 (9/28-30) | 7 | 160.34 km | 539.63 km | 699.97 km |
L-2 (10/1) | 6 | 88.28 km | 451.64km | 539.92 km |
L-3 (10/2) | 4 | 31.18 km | 108.90 km | 140.08 km |
Total | 17 | 279.80 km | 1100.17 km | 1379.97 km |
*今回はWRCカレンダーに関わる昔の話を書いてみました。多少理屈っぽい文章になりました。お詫びします。以上福井敏雄
文:福井敏雄
福井 敏雄
1960年代から欧州トヨタの輸出部員としてブリュッセルに駐在。1968年、トヨタ初参戦となったモンテカルロからラリー活動をサポート。トヨタ・モータースポーツ部のラリー担当部長、TTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ)副社長を歴任し、1995年までのトヨタのWRC圧勝劇を実現させた。
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