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モーター スポーツ コラム 2022年9月16日

富士での悪夢を乗り越えて……待ちに待った歓喜の瞬間

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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前戦の悪夢を断ち切って優勝を掴んだNo.4 グッドスマイル 初音ミクAMG。

2022シーズンのSUPER GTは、GT500クラスが大混戦となり注目を集めているが、GT300クラスも見どころの多い後半戦になりつつある。ここまで5戦を終えて、No.56 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rが安定してポイントを稼ぎ、ランキング首位をリードし、それをNo.10 TANAX GAINER GT-R、No.61 SUBARU BRZ R&D SPORTが追いかける展開となっているが、第5戦鈴鹿では注目の1台が待望の復活を遂げ、ランキング上位に進出してきた。No.4 グッドスマイル 初音ミクAMGだ。

当初は“痛車GTカー”として注目を集めた初音ミクのマシンだが、2011年、2014年、2017年と3度のシリーズチャンピオンを獲得し、今ではGT300クラスに欠かせない名門チームのひとつとして知られている。しかし、結果を見ると2017年の開幕戦を最後に優勝から遠ざかっており、特に今シーズンはBoPの影響もあってか、開幕戦の岡山でポイントを獲得して以降、苦しいレース展開が続いていた。

その中で迎えた第4戦富士では、予選から力強い走りをみせて3番手を獲得すると、決勝レース途中にトップに立つと、一時は後続に20秒以上の大差をつけた。全く危なげない走りをみせ、誰もが4号車の優勝を信じて疑っていなかった。

だが、レースというものは残酷で、誰もが勝てると思った瞬間に、予期せぬ不運が襲いかかってくる。この時の4号車がまさにそうだった。残り20周を切ったところで、左フロントタイヤにトラブルが発生。緊急ピットインを余儀なくされた。すぐにタイヤを交換してコースに復帰するが、優勝争いから脱落し、結果は13位。過去にも、富士ではタイヤトラブルに見舞われた経験があった4号車だが、それが起きないようにと気をつけていたが……今回もタイヤトラブルは起きてしまった。

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目前まで迫っていた5年ぶりの優勝が、一瞬にして潰えてしまい、レース後の4号車ピットは、落胆という言葉だけでは収まりきらないくらいの雰囲気となっていた。マシンの特性やBoPなどを考えると、この富士を最大のチャンスと捉えていた4号車。それだけに、そのチャンスを失ったショックは大きかった。

それから3週間後の第5戦鈴鹿。サクセスウェイトの軽さも活かし、予選で5番手をつけると、決勝でも富士大会を彷彿とさせるような追い上げ、33周目にトップに浮上。レース後半にはアクシデント発生に伴いセーフティカーが導入されるなどの波乱もあったが、4号車はその手前で2度目のピットストップを終え、ことなきを得た。

No.4 グッドスマイル 初音ミクAMG。

あとは、ゴールまで突き進むだけだが、ドライバーの谷口信輝、片岡龍也をはじめチーム全員の頭の中には“富士での悪夢”がよぎっていた。実際、最終スティントを担当していた谷口も「最終ラップの最終セクターまで疑っていました。とにかく無事にゴールまでいきたいと、祈りながら、タイヤマネジメントもしながら、ゴールまでクルマを運びました」と語るほど。実際には残り4周あたりから振動も出始めていたという。最後の最後まで余裕はなかったのだが、マシンとタイヤはトラブルを起こすことなく、無事にトップチェッカー。3週間前のどんよりした空気とは違い、レース後のチームや、4号車を応援する多くのファンは歓喜に満ちていた。

ドライバーの2人は嬉しさというよりも、安堵感の方が大きかった様子。これでシリーズランキングでも5番手まで浮上したが、経験豊富な2人はチャンピオン争いを冷静に分析している。

「今回、僕たちが勝ったからといって『我々が強い』とは今のところは思えないです。とはいえ、嬉しい誤算で、勝てる気もしなかったところで勝てたので、今のところチャンピオンシップに対しての展望とかも『獲るぞ!』みたいな感じはないのですが、それも“嬉しい誤算”になったらいいなと思っています」(谷口)

「ここまであまりポイントを獲れていなかったこともあって、チャンピオンシップという意味ではかなり厳しいのかなと思っていて、正直シリーズのことはあまり考えていません。ただ、前回からこのように好調になってきているので、とにかく残りのレースは全力で戦うのみです」(片岡)

とはいえ、こうして勝利を飾ったことで、ランキングも上位に来たことは確か。トップの56号車とは14ポイントの差がついているが、残り3戦での逆転は十分可能な範囲と言える。混沌としているGT300のチャンピオン争いに、この4号車がどう絡んでくるのか? 今週末のSUGO大会も含めて、目が離せないところだ。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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