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第8戦を制した関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)
2レース制で行われた2022全日本スーパーフォーミュラ選手権のもてぎ大会。1日目の第7戦では山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)の感動的な復活劇が話題となったが、翌日にドライコンディションで行われた第8戦では、一転してチームメイト同士による熱いバトルが繰り広げられた。
予選でポールポジションを獲得したのは、大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)。前日はチームメイトの山本尚貴がポール・トゥ・ウィンを果たすなど、ナカジマレーシングが復調の兆しをみせる週末となった。
また、大湯自身にとっても、国内トップフォーミュラで“最速の称号”のひとつであるポールポジション獲得は、長年夢見ていた。前日もチームメイトに敗れ悔しい表情を見せていたが、第8戦の予選では一転して、パルクフェルメでは喜びを爆発させていた。
念願のポールポジション獲得した大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)
午後の決勝レースでは、その大湯がスタートからレースをリードするが、後方では関口雄飛と平川亮による激しいポジション争いが繰り広げられていた。
今季は、なかなか予選で上位に食い込むことができていなかったcarenex TEAM IMPUL勢。しかし今回は2台とも予選Q2進出を果たし、平川は6番手、関口は7番手からスタートし、序盤から抜きつ抜かれつの闘志あふれるバトルを展開した。
チームメイト同士のバトルをすると、万が一アクシデントが起きた時に、2台ともリタイアという結果になりかねない。そのため、特に最近のF1がそうなのだが、チームメイト同士が直接ポジションを争うようなことを避けるような指示を出すのが常だ。しかしチームインパルはそういったことは一切せず、2台それぞれがベストだと思うレース運びをさせる。
そのため、レース戦略に対しても、“片方が早めにピットに入れる作戦だから、もう片方は後半まで引っ張る”という2台セットで戦略を組み立てるという考え方ではなく、それぞれがベストだと思う戦略で戦わせる。このレースでは、関口がピットウィンドウが開いた10周目にタイヤ交換を済ませる戦略をとったのに対し、逆に平川はレース終盤の30周目までピットストップを引っ張った。
一見すると、チームがあらかじめミーティングを行って決め打ちで戦略を分けたようにみえがちだが、実際にはそうではない。これについては星野一樹監督代行も「お互いが『これなら勝てる』というベストだと思う作戦を、それぞれの号車のチームがやった結果です」と、記者会見で話していた。
全く別々の戦略をとった2台だが、残り3周になって、2台はコース上で再び相対した。
10周目のピットインでアンダーカットを狙った関口は、目論見通り順位を上げていき、31周目にトップに浮上。しかし、その過程でライバルを抜くためにオーバーテイクシステムを使い、タイヤのピークグリップも落ちている状態だった。
19号車の関口と20号車の平川は、抜きつ抜かれつのバトルを繰り広げた。
一方の平川は、終盤まで引っ張ってピットストップを行うも、コースに復帰した時は4番手。それでも交換直後でグリップのあるタイヤと、オーバーテイクシステムを駆使して、野尻智紀(TEAM MUGEN)、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)を攻略し、その後もトップを目指して関口を1周1秒ずつ詰めていく勢いで追いかけた。
そして、最大の見せ場となった37周目のファイナルラップ。両者の差は0.5秒。この時点で関口の残OTSは43秒なのに対し、後方の平川は残57秒ということで、両者ともに“ワンチャンス”をかけた勝負になることが予想された。
先に動きを見せたのは関口。直前に平川が牧野を5コーナーで仕留めていたこともあり、5コーナーの進入を警戒して、メインストレートに入ったところでOTSを発動させた。その読みは外れることとなり、コース後半では“弾切れ”になってしまう。
一方の平川は90度コーナーに焦点を絞り、それを逆算して5コーナー付近からOTSのスイッチを入れた。
その結果、2台は90度コーナーでサイドバイサイドとなり、そのまま直角コーナーを通過。平川は外側の縁石しかスペースが残っていなかったが、それでもアクセルを緩めることをしなかった。
関口にとっては2019年以来となる優勝がかかっている。対する平川は逆転チャンピオンのために1ポイントでも多くほしい。2人の勝利に対する想いがぶつかった瞬間だった。
結果、関口がポジションを守りきりトップチェッカー。前述の通り2019年第2戦以来となる優勝を飾った。
「とにかくブレーキングでとことん付き合っていこうと決めていて、ただでトップは渡したくなかった」という関口。レース後は、全てを出し切った様子が印象的だった。
関口雄飛(左)と星野一義監督(右)
以前は何度もトップ争いに絡む活躍を見せていた関口だが、気づけば3シーズンも勝利から遠ざかっていた。前回の第6戦富士でも、トップを快走していながらタイヤが外れるトラブルに見舞われてリタイア。勝てそうで勝てない日々が続いていたが、関口自身の闘志が薄れることは全くなかった。
「どんなに遅くても、その理由が必ず、それが分かっていました。だから、自分自身はずっと自信を持ち続けていて、こうやって時が来たら勝てるとずっと思っていました。だから、3年ぶりの勝利だからとかと言って、感慨深くなることはないです」
序盤のバトルも含め、チームにとっては久しぶりとなるワンツーフィニッシュがかかっている場面においても、バトルを制限することを一切しなかったチームインパル。「チェッカーを受ける瞬間までレースをしているわけだから。2台が仲良く並んでワンツーフィニッシュをしたところで、逆に気持ち悪いだけだ」と、星野一義監督も、この時は2人に自由にバトルをさせたという。
それでも、2台が思う存分勝負をして、2台ともフィニッシュして結果を残すというのが、昨年のチャンピオンチームである“チームインパル”の強さなのだろう。
文:吉田 知弘
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吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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