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モーター スポーツ コラム 2022年8月3日

鈴鹿8耐を生中継!伝統のオートバイ耐久レースの歴史、そして醍醐味とは?

モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシ
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知っておきたい鈴鹿8耐の歴史

知っておきたい鈴鹿8耐の歴史や基礎知識

3年ぶりとなる「コカ・コーラ鈴鹿8時間耐久ロードレース」(鈴鹿8耐)が帰ってきます。「J SPORTS」では2022年8月7日(日)に開催される決勝レースの模様を初めて生中継!

今回は鈴鹿8耐の中継を視聴していただく前に、ぜひ知っておきたい歴史や基礎知識をご紹介しましょう。

まずは歴史から。「鈴鹿8耐」は1978年(昭和53年)に始まった耐久レースで、コロナ禍の2年の休止を経て、今年で43回目の大会を迎えます。初回開催の1978年当時の時代背景を振り返ると、1970年代は国内の自動車・オートバイメーカーが排気ガス規制などの環境問題への対応に追われ、さらに石油危機もあり、モータースポーツが一時停滞していた時代でした。

その閉塞感を打ち破ろうと、新しい耐久レースとして企画されたのが「鈴鹿8耐」です。当時、ホンダはヨーロッパで人気を集めていた耐久レースにホンダRCB1000のワークスマシンを参戦させていました。「不沈艦」と呼ばれるほど圧倒的な強さを見せていたワークスマシンを日本のオートバイファンにお披露目したい、という本田宗一郎の思いもあって鈴鹿8耐は生まれました。

しかし、当時は台数集めに非常に苦労したそうです。イベントとして形にするため、スプリントレース用のレース専用バイク(今でいうMoto2のようなマシン)も出場可能とし、とにかく「ごった煮感」の強い手探りの耐久レースでした。市販車ベースと違い、そういったレース専用バイクにはライトが装着されていません。しかし、鈴鹿サーキットはどこにもない耐久レースを目指すべく、「夜の時間にゴールし、打ち上げ花火で締め括る」という演出にこだわったのです。

「懐中電灯をテープで固定してでも良いから、とにかく夜間走行でゴールするレースをやらせてくれ」と参加チームを説得したのが、当時のチーフオフィシャルの藤井璋美(ふじい・てるよし)。現在、FIM世界耐久選手権に「F.C.C. TSR Honda France」として参戦するTSRの藤井正和監督の実父です。藤井璋美の情熱がチームに理解され、11時30分スタート、19時30分ゴールという伝統の8時間フォーマットで1978年の第1回大会が行われました。

その第1回大会で最強ホンダワークスの優勝と見られた予想を覆し、初代ウイナーになったのが「ポップ吉村」こと吉村秀雄率いるプライベートチーム「ヨシムラ」のスズキGS1000。レース中の度重なるトラブルに即座に対処し、真夏の8時間を最初に制したのは巨大メーカーのワークスチームではなく、独自のノウハウでレースを戦うレース屋「ヨシムラ」だったのです。

この「ヨシムラ」のドラマチックな優勝は鈴鹿8耐の人気に火をつけました。その後、日本には空前のバイクブームが訪れ、オートバイは当時の若い男性の必須アイテムに。バイクの売上に直結する宣伝ツールとして鈴鹿8耐が注目され、ついに1985年にはヤマハワークスが参戦。当時の伝説のグランプリライダー、ケニー・ロバーツが驚きのスピードを披露しながら、ホンダワークスや海外の耐久チームを凌駕しました。

しかし、この1985年のレースにはとんでもないドラマが待っていました。トップを快走したヤマハワークスのFZR750が残り30分でストップ。国内屈指の人気を誇ったトップライダー、平忠彦がホームストレートでマシンを止める姿は鈴鹿8耐の史上最大のドラマとしても今も語り継がれています。

真夏の耐久レースが生み出す、信じられないドラマの舞台として鈴鹿8耐は人気を不動のものとし、国内4大メーカーが覇権を争う国内最大級のレースイベントへと発展していきました。

2000年代以降は国内のオートバイ市場の売上が減り、メーカーもモータースポーツを通じた宣伝をグローバルにシフトし、鈴鹿8耐でのワークスチームによる参戦は減りましたが、2019年にはカワサキワークス「Kawasaki Racing Team」が優勝を飾り、今季はその対抗馬としてホンダワークス「Team HRC」が最強マシン、ホンダCBR1000RR−Rで対抗するなど、ワークス対決は今も鈴鹿8耐の最大の注目ポイントと言えます。

近年はFIM世界耐久選手権の最終戦に設定され、そのお祭りイベント的な部分が再評価されつつある鈴鹿8耐。コロナ禍で2年休止となりましたが、国内のオートバイ売上は伸びており、今年のレースが盛り上がれば、今後さらなるワークスチームが参戦する可能性もあるでしょう。

今年はコロナ禍とウクライナ戦争の影響により、来日する海外チームが減少し、出場台数は45台と例年に比べて少なめではありますが、その分、1チーム、1チームが色んな局面でクローズアップされやすい鈴鹿8耐になるでしょう。現地観戦する人たちのチケットの売れ行きもコロナ前の2019年並み、それ以上と聞いています。3年ぶりとなる鈴鹿8耐に対する期待度を感じる事実ですね。

現在もコロナ禍は続いているので、今年は来場を諦めた方もいらっしゃるでしょう。年に1度しか開催されない特別な耐久レース「鈴鹿8耐」を是非テレビの前でもお楽しみ頂き、ぜひそのドラマに酔いしれて頂き、さらにバイクレースを好きになってもらえれば嬉しいです。

文:辻野ヒロシ

辻野 ヒロシ

辻野 ヒロシ

1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。

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