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No.88 Weibo Primez ランボルギーニ GT3 小暮卓史選手&元嶋佑弥選手 | 2022年 SUPER GT特別企画「相方のこと教えてもらっていいですか?」
SUPER GT by 島村 元子No.88 Weibo Primez ランボルギーニ GT3 小暮卓史選手&元嶋佑弥選手
SUPER GTに参戦するドライバーは、コンビを組む“相方”とどんな関係を構築しているのだろう? 同じクルマに乗るとはいえ、ライバルには違いないから緊張感バチバチなのか、それとも頼れる仲間だからなんでも語り合っているのか……果たして!?
そこで、サーキットを離れたドライバーふたりにzoomで“遠隔取材”。レースウィークでは聞き出せないようなあんなこと、こんなことを語ってもらった。
第3弾は、“天然キャラ”でお馴染み!? の小暮卓史選手とその相方である元嶋佑弥選手をご紹介。ひと回り近い年齢の差からにじみ出る“ほんわか”とした関係性である一方、ドライバーの本能として不可欠な“負けん気”も見え隠れするなど、ともにいい刺激を受けていること間違いなし。そんなふたりのトークからチラリと覗く“素顔”をお届けしよう。
──まず最初に自己紹介ならぬ、“他己紹介”で相方を語ってください。
小暮卓史(以下、K):僕の印象からすると、いろんな面でストイックなところがすごくあるドライバー。レースから外れると自転車を一生懸命やってるので、トレーニング内容とか……身体の追い込み方とか知識もそうですけど、普段の生活も……今まで組んできたドライバーと比べて結構ストイックにやってるなという印象がありますね。自転車に乗ってる量がもう尋常じゃない。確か、1日200キロ、300キロとか余裕で走っちゃうんですよ。そういうのを聞くと、一般の僕からするとあり得ないというか、飛び抜けてるんじゃないかなっていう気はしますけどね。
元嶋佑弥(以下、M):多分皆さんもご存じだと思うんですけど、まぁ速いですね。 まずスピード……ほんとに一番驚いたのは、今まで一緒に組んだドライバーの中で、「ちょっとこれは見えないな」っていうタイムを出したりとか、そういう飛び抜けたスピードを……一緒に組んで何度も見せつけられて。で、毎戦というか、ほんといつも走り終わったらずーっとデータチェックしてて。今でも速さをずーっと追求し続けてる。自分も小暮選手より遅いって(周りから)見られないように、必死になっていつも走ってます。 なので、スピードっていう部分ですごい選手だなと思う。ほんと尊敬してます。
K:こっちも負けないように必死だけど(笑)。
──元嶋選手にとって、小暮選手は“憧れ”の存在でもあるわけですか!?
M:そうですね。僕、小暮選手と組んでほんとに良かったって思うのは、切磋琢磨してお互い速さを追求してるなかで、やっぱり歳が離れてるっていうのもあるとは思うんですけど、決して僕のことを蹴落とそうとせずにもっともっと僕が良くなるように、良くなるように、ってすごい気を遣ってくれて……。その中でお互い速さを追求してやれてるので、すごくやりやすいんです。ほんと成長させてもらえる環境で、今レースをさせてもらってるなって感じてます。
No.88 Weibo Primez ランボルギーニ GT3
──元嶋選手の褒め言葉に、小暮選手は照れ笑い状態ですね。
K:ははは。まぁ僕からすると、ホンダを出て、チャンスを……JLOCに与えてもらって(※1)、やっぱ若い元嶋選手と自分の力がどこまで通用するかっていう部分で、チャレンジっていうか。やっぱり速いドライバーが一緒にいるとすごく刺激にもなりますし、すごくやりがいがありますよね。僕らは歳が離れてるので、ドライバーとしてもずっと同じカテゴリー(クラス)で戦ってきたドライバーじゃないので。またここまで歳が離れてるドライバーと組んだこともなかったので、いろいろ刺激をもらえて、まだまだ若いドライバーにもやっぱり負けたくないっていうのもありますし。いろいろプレッシャーと刺激はもらってます。
※1:小暮のSUPER GTデビューは2003年(当時は全日本GT選手権)。初年度からGT500クラスにて参戦。2010年にはロイック・デュバルとともにシリーズチャンピオン(No.18 ウイダー HSV-010)となる。2004年はフォーミュラレース参戦に専念したが、2005年から2018年までGT500クラスで参戦を続け、2019年にJLOCへ加入した。
──自分だけが知っていると思う、もしくは間違いなく知っている相方のとっておきの“マル秘”情報があれば教えてください。
K:マル秘ってほどでもないんですけど、さっき言ったように皆さんが想像している以上にストイックな人間っていうのと、 あと、これはよくチーム(ドライバー)4人で(サーキットから)帰っていくときにクルマの中で話すんですけど……僕が驚いたのは、料理ができる、しかも一番びっくりしたのは、自分で燻製を作ってるっていう……これはマジでびっくりした。多分誰も知らないと思う。そこは面白いっていうか、僕としては結構衝撃を受けました。料理はまだわかるんですけど、燻製まで作るってなかなかすごいと思います。
M:まあ、もともと料理も……自転車に乗ってたり、そのトレーニングをするところで、ちょっと食事も追求したいなってところから始めたんですけど、やり出したらなんか楽しくなっちゃって。なんでもやりたくなる性格なんで……お酒も好きで、それでちょっと自分で燻製やってみたりとか。なんでもちょっと行きすぎる傾向にあるんで(苦笑)。
──ちなみに作るのは何の燻製ですか?
M:いろいろありますよ、ナッツとかスペアリブとか。あと卵とか、なんでもやってます。とりあえず美味しそうなものを、家のテラスみたいなところで一人でやってますね。時間はかかりますけど、まぁそれも飲みながら楽しんでます。スペアリブはスーパーで買ってきて、自分で多少ちょっと味付けて。で、キットのような箱みたいなのがあるんで、それに差し込んで燻してって感じですね。
──では、ストイックな部分がちらりと顔を見せる元嶋選手から自分だけが知っていると思う、もしくは間違いなく知っている小暮選手のとっておき情報を教えてください。
M:多分、一緒に組んだドライバー……ほとんどの方が知ってると思うんですけど、いつも小暮さんを見てると、“(クルマに)乗る前のルーティン”っていうのがすごく……。
K:あははは。それ、言う!?(苦笑)
M:はい! 絶対クルマに乗り込む前に、決まったルーティンがあるっていうことが最初すごく気になってて。最近はそれも自然な風景のひとつみたいな感じなんですけど、逆に言えば、毎回乗るときに多分ちゃんと気を引き締めて……敬意を払ってとか、そういった意味があるのかなと思ってて。まぁ乗る前のルーティンは、多分今まで(小暮と)組んだドライバーはみんな知ってますよね。
K:うん、知ってるかな。でも、元嶋とも(コンビを組んで)もう長くなってきてるから、余計印象には残ると思うけど……。外国人ドライバーは、知らないかもしれない(笑)。
M:たまにびっくりするのは、セッションがディレイとかになって、突然「セッションが始まります」みたいな……2~3分後に始まりますよ……そういうとき「どうするんだろう?」と思って見てたら、そういうときもやっぱりルーティンを欠かさずに絶対やってるので、もうヒヤヒヤして……。
K:あたふたしながらやってるよね(笑)。
M:「時間、時間!」と思いながら……でも、そういうのをすごく大事にしてるなと。
K:そう。(元嶋は)温かく見守ってくれてるけど、武藤(英紀※2)選手なんかはね……「やるんすか?やるんすか?」って直接聞いてきて……(笑)。「いいから、いいから!」みたいな……。
M:いやそこはもう声をかけちゃいけない雰囲気が出てるから。
K:あはは。でも写真、撮ってたじゃない(笑)!
M:あ、この前のテストの時にちょっと……。でも、大事ですよね。(クルマに)乗る前に、気を引き締めて……とか。
K:そういうルーティンは、もうずっと10年以上続けてますけどね。
※2:2014年、武藤英紀選手とのコンビでNo.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTをドライブした。
──ちなみに、どういうルーティンですか? とても気になるので、一例だけでも紹介いただけると……。
K:そうですね……その……ごめんなさい、あえてっていうか、そんな偉そうな……。なんていうのかな。僕、精神的に結構“波があるタイプ”のドライバーなんですよ。今まで長く乗ってても、いまだに緊張感……緊張とはまた別の……なんていうんですかね。気持ちが上下するところがあって、ルーティンも結構僕の中では難しいところがあって。うまくできなかった時点でちょっと不安になったりするところもあるんで、逆にやらない方がいいんじゃないかっていうところもあるんです。でも、やるのは簡単なことなんですよ。ルーティンで簡単なこと……気持ちが上下してるときにそれをやることによって、(クルマに)乗るまでに(気持ちが)整ってるっていうのはすごくありますね。それは、もう下手したら……さっき10年って(言ったが)10年どころじゃないですね。もうGTに乗りはじめたところからずっとやってるので。その頃はお守りとかもありましたよ。ポケットにお守りを忍ばせて……。そのお守りが、走行中どっか飛んでっちゃってクルマの中で暴れて、道上(龍※3)さんと一緒にこう……「お守りがない、ないっ」とか言って一緒に探したりとか(笑)。そういうこともあったので、お守りはやめたんですよ。だから、元嶋ほどストイックじゃないんですけど、自分の中での決まりっていうのは、やっぱりちょこちょこありますよね。
何かしらこう……なんか心に引っかかるものがあって、乗る時も「まぁルーティンができたからいいや」っていう感じになることが多いですよ。ヘルメットを被るとき……裏面をよく見るんですよね、うん。乗る前に裏面を見ますね。大したことじゃないんですけど、ちょっとしたことで気持ちがちょっと落ち着いたりとかっていうのはあります。(ヘルメットの裏には)何もないです。なんて言うんですかね、意味深なことじゃないんですよ。だから、これを意味あることとして捉えちゃうと、全然形になってないんで説明が難しいんですけど(笑)。ただ、それをやることによって自分が落ち着くってだけの話です。もしかしたら、各々のドライバーもあるかもしれないですけど。僕の場合、これでも昔よりもっと簡潔にしてるんですよ(苦笑)。
※3:道上龍とは2005年から2009年までコンビを組んだ。
──コンビ結成4年目ですが、初めて元嶋選手と会ったときの印象は?
K:(JLOCで)初めてのテストで(ランボルギーニ)ウラカンに乗って。開幕前のテストで(元嶋と)自分とのタイム差が……ウラカンもすぐパッと乗れるクルマでないとはいえ、そのときタイム差があって……。あと、やっぱり歳が離れてるので単純に「やっぱ若いな」と。今までのチームメイトよりも随分若い。自分が歳とったなって思いましたよ、ほんとに(苦笑)。やっぱり(元嶋は)20代ですし、元嶋と組む前は20代のドライバーってなかなか組んでなかったですもんね。みんな30(歳)以上でしたし(※4)。あ、でも(塚越)広大がそうかも。でも、広大も(2016年に)すぐ30になったし。だから若いっていうのと、自分とのタイム差にビックリして、「うわ、これかなり苦戦するな」ってそのとき思いました。気を引き締めていかなくちゃいけないって思いましたし、自分自身は「これ、やりがいがあるな」っていうか……。いい意味での緊張感があって、ドキドキもしましたね。
※4:小暮が歳下のドライバーと組むようになったのは、2010年から。L・デュバル(28歳/2010年)、カルロ・ヴァン・ダム(26歳/2012年)、伊沢拓也(29歳/2013年)オリバー・ターベイ(28歳/2015年)と、実のところ塚越の他にも20代の“相方”はいたことになる。
──元嶋選手は、小暮選手に初めて会ったのはテストのとき? あるいはそれ以前ですか?
M:僕がプロとしてレースする前から小暮さんは大活躍してたので……もちろん一方的には知ってました。もともと僕もホンダ系の出身なんですけど、まったく面識がなくて。で、JLOCで乗るっていうことになって、初めて挨拶することになりました。(GT)500、フォーミュラ・ニッポンとか、当時でいう……トップ選手として活躍してた人ってどういう人なんだろうって。「ちょっと尖ってるのかな」とか「ちょっと怖いのかな」とか、なんか勝手に想像してたんです。テストで会って、「はじめまして」からだったんですけど、もう一番びっくりしたのは、ほんと小暮さんの……なんて言うんですかね、腰の低さにびっくりして。「もう、ぼ、ぼ、僕なんかにそんな……もっと偉そうにしてくださいよ」ってぐらい(苦笑)。ほんとにビックリして……第一印象はそこですね。
でも、そういうことがあって、最初から僕も全然緊張せずにテストも一緒にできました。それから、テストが始まってずっと興味があったのは「日本のトップドライバーってどういうドライビングするんだろう」ってこと。GT3……僕らが乗ってるFIA GT3って、やっぱり車重も重いし電子デバイスもたくさんついていて、ちょっと乗り方も独特なんですよ。多分、GT500とかそういうレーシングカーと比べても独特なので、(小暮が)どういう運転をするんだろうってすごい気になりました。最初のテストが岡山(国際サーキット)で、そのときやっぱり車重とか苦戦してたんですけど、ドライバーのみんなが結構怖いなって思うコーナー……2コーナーをすごいハイスピードコーナーでいきなり異次元の速度で走ってたんで。「こんなに(すごい速度で)行けるんだ」っていうのをはっきり覚えてますね。持ってるスピードセンスの違いにすごく驚きました。
──過去3年、コンビを組んで3位、2位という結果なので、残すはもう表彰台の真ん中ですよね? そこで、今シーズンの88号車の強みがどこにあるのか教えてください。
K:長年同じパッケージングでやらせていただいて、積み上げてきたものが一番デカいと思うんです。本来であればもっといいポジション……昨年度もそうですし、その前の年も。特に昨年は思うところ……もっといいところに行けたんじゃないかなっていうのはあるんです。チームで積み上げてきたものがあって、例えばちょっと(ボタンの)掛け方が上手くなったら、すぐポンって結果が残ると思うんですけれど。開幕戦に関しては、もう明らかにちょっと僕がもったいないことしちゃったな(※5)と。 チームにも元嶋選手にも申し訳なかったことをしちゃったんですけど、すべてが揃わないとダメだなぁと。前回の鈴鹿に関してもそうですよね、すごくクルマは速かったんですけどちょっと……(予選で)“四脱”(走路外走行)してしまったので、 そこらへんもやっぱりもったいないな。ちょっとしたことで失っちゃうことっていうのがあるので、そこがなくなったらさらにもっと強いチームになるのかなっていうのはありますよ。
各々ちょっとずつレベルも上がってると思うんです。全体的なまとまりもそうですし、そこが最後バチッってハマったら……今までよりも“ハマる”要素は多分できてきてると思うんですよ。準備はもう全部できてきてると思うので、最後はそれをハメめるだけ。そういうところが強みっていうとちょっと伝わりにくいかもしれないですけど、僕的にはそういう感じがしてますね。
※5:岡山戦は、予選8位スタート。元嶋から小暮へと繋ぎ、終盤は6番手を走行するなかで前方車両と攻防戦を展開した。だがその後、ダブルヘアピンでスピンを喫してポジションダウンに甘んじた。
No.88 Weibo Primez ランボルギーニ GT3
──6月中旬、スポーツランドSUGOでタイヤテストをする機会があったと伺いました。テストの手応えはどういうものでしたか?
M:特にこの数年、横浜ゴムさんがすごくいいタイヤを作ってくれて、確実にレベルは上がってきてるんです。レースでも実際のテストでも、毎回新しいものを準備してくれて。ただ今回はそのテストの日が……びっくりするぐらい寒かったんですよ(苦笑)。SUGOテスト(での天候)が、前回のレース(第3戦鈴鹿)よりも全然寒くて。どうなるんだろうって思ってたんですけど、意外と幅広く使えるタイヤっていうのも見つかりました。寒かったからというのもあるんですけど、昨年の予選タイムから見ても速いタイムも出せてるので、それも後半戦に向けてちょっと楽しみなタイヤだなと。いいテストができたかなと思います。また、クルマのセットアップもいろいろ試せて。それも含め、テストをさせてもらえるのはすごい自分たちにとってプラス要素が大きいので、後半戦に向けてポジティブな気持ちになれたと思います。
──シーズン中盤戦は富士、鈴鹿と450kmの長丁場もあります。レースに向けてお互いになにかアドバイスなどはありますか?
K:富士はレース距離が長くなりますし、いろいろやらなくちゃいけないこと、管理しなくちゃいけないことも増えると思うんですけど、レース距離が長くなるイコール、ウラカンにとって、僕たちにとって、有利なところもあると思います。すごく楽しみなレースになるんじゃないかなと。チャンスだと思ってますし、なんとか結果として……表彰台、最低限表彰台は上がりたいなっていうのはありますよね。やっぱりドライバーもチームもいい仕事しなくちゃいけないと思いますし、あと富士に関してチームメイトに言えることは……「よろしくお願いします」と(笑)。富士はすごくちょっと……富士だけじゃないんですけど、特に富士は相方にすごく頼ってるというか、(元嶋が)「なんとかしてくれるんじゃないかな」っていうのが(笑)。なんとかしてくれるんじゃないかって言うと怒られちゃうんですけど。各々勝負ポイントと思ってるコースもあると思いますし、特に富士と元嶋選手のマッチングがいいと思いますので、そこらへんはすごく期待してるので……はい。なんとかお願いします、といったところがアドバイスと言うか、お願いです(笑)。
M:そうですね、ほんと今の話……やっぱりお互い得意のサーキットっていうのがあって……。どちらかというと富士は僕のほうが得意な傾向にあるのかな。鈴鹿は小暮さんが得意な傾向にあるのかな、ってところがあるので、逆にその次の450キロの鈴鹿はよろしくお願いします。
K:あはは(笑)。各々ね。
M:はい。どっちがダブルスティント行くかとか、その辺の話にもなっているので。前回の富士は僕がダブルスティントをやって、小暮さんは一瞬も乗れなかったので(※6)。ほんとに富士は自分も自信持って走ってますし、逆に鈴鹿に関してはもう小暮さんにたくさん甘えようと思ってるので、「よろしくお願いします!」としか言えないですね。えへへ(笑)。(ウラカンは)長い距離がすごい得意なクルマなんですよね。なんでかわかんないですけど、クルマの特性上、長いレースがすごい得意な傾向にあるので、今年は3回、450キロがあるっていうのは僕たちにとってはうれしいところかなとは思います。
※6:第2戦富士、88号車は元嶋からスタートして1回目のピットインではドライバー交代をせず、ダブルスティントを採用。後半に大きなアクシデントが発生し、長らく赤旗中断となったことで時間制レースとなり、結果的に小暮はドライブせずにチェッカーを迎えた。
──心待ちにしているのは、表彰台の“てっぺん”と言うことですね。
M:そうです。勝ちたいですね。僕、まだSUPER GTで一回も勝ってないので……。その辺もなんかちょっと焦りがあって、たまに自分の……“勝ちたい”っていう気持ちの焦りから良くないところも最近ちょっと出ちゃったので、もう一回しっかりと気を引き締め直して、ちゃんと優勝に向けてやるべきことを積み上げていきたいなと思ってます。
──さてここからは、ちょっと違う話題の質問を。小暮選手、部屋の奥に見える“ミラー”が気になるのですが、それは何ですか?
K:ん!? うしろに見えるのは、ミラーですが……。
──はい、その黒いミラーはバイク、ですか?
K:あ、これはホンダのモトコンポというバイクです。僕が17号車(※7)に乗ってたときに、塚越(広大)選手の強い、強い勧めがありまして……はい。半ば強制的に……半ば強制的にっていうか、みんなでモトコンポでいろいろツーリングしようっていうのが一時期流行ってたんですよ。だからこれも結構……レストアをしてもらって。全部、パーツをその当時の新品物を使ったりとか、いいものを使ったりとか。で、実際、50ccじゃなくて、60ccにボアアップして、一応(51cc以上~90cc以下の小型限定普通二輪用の)黄色のナンバーになってるんですよ。ただ、外に置いておくとエンジンもすぐかかんないし、ダメになっちゃうんです。画像だとわからないでしょうけど、これほんとフルレストアしてピカピカなので。とりあえず飾るというか、置いておこうっていうか……で、ずっと置いてあるんですけど、走ってないです(苦笑)。結局、ほとんどツーリングも行かないし。結局走ってないです。
60ccなので制限速度は(時速)60キロなんですけど、(時速)50キロを出そうものなら、とんでもないです、怖くて……。多分モトコンポに乗ったことある方だったらわかると思うんですけど。多分、大型バイクで(時速)200キロぐらいで走っているような雰囲気が味わえるぐらいな。みんなで楽しもうって買ったんですけど、なかなか行かないじゃんっていう……(笑)。ま、そういうような経緯があって、飾るだけになっちゃってるんですけど……。
※7:2016年から3年間、KEIHIN REAL RACINGで塚越とコンビを組んだ。
──一方の元嶋選手はストイックだということですが、これからハマりそうみたいな趣味はありそうですか?
M:そこなんですけど……すごい自分でも気を付けてて。最近だと、「ゴルフをはじめろ」ってすごい周りから言われて。ただ僕は性格的に多分ちょっとでも手を出しちゃうと……ゴルフやろうかなと思って一回でも行っちゃうと、多分“どハマり”して、ほんとに時間が足りなくなるのが目に見えてるので、なるべくもうこれ以上はやらないようにしようと思ってます。
──ちなみに小暮選手、ゴルフは?
K:武藤選手と一回コースに行ったんですけど、まぁみんなの3倍から4倍走って……。ボールがね、あちこち行って大変だったなっていう……やっぱゴルフはゴルフですごく魅力あるし、楽しそうだなって思ったんですけど、そこで一旦終わっちゃってますね。
──ドライバーってゴルフが上手い方もいっぱいいますし、特性的に向いてると個人的には思うので、ぜひ元嶋選手には“ハマって”もらえたら……。
K:いや、相当ハマると思いますよ、元嶋がやり始めたら。
M:絶対にもう……多分、自転車も乗らなくなっちゃうと思うんですよね(笑)。今年からいろんなレース活動とか普通にできるようになってきて、サーキットにいる時間が増えてきたんで、どうやって自転車に乗る時間を捻出しようってなってるぐらいなのに、そこにゴルフが入っちゃったら、もう大変なことなんで……。
K:朝の4時とか5時に起きて、自転車行くんだもんね。
M:朝、ほんと4時とかから走り出さないと、もう今乗れなくて。なので、ちょっとゴルフはまだやめとこうかなと思ってます。なるべく自転車だけにしておこうと思ってます。ほんとに。
──レース開催時、片山右京監督近藤真彦監督も自転車で富士にお見えになった時がありました。
M:そうですね。結構、レーシングドライバーって自転車が好き……好きっていうかすごくトレーニングにいいツールなので、特に海外の選手はもうほとんどの選手が乗ってると思います。(片山)右京さんと会うと……僕、右京さんとレースの話ってしたことないんですよ。自転車の話しかしたことなくて(笑)。 で、実は今年チームに加入して下さった熊倉(淳一)監督も僕とはもともと自転車繋がりで……。自転車乗ってるときに「(チームを)手伝ってくださいよ」とか、冗談でずっと言ってたんです。最初、サーキットで会ったときは、もう雰囲気が怖くて挨拶もできないぐらい怖かったんですけど、(ツインリンク)もてぎで自転車のレースに出たときに、一緒の部屋を使わせてもらって話をしたら、すごい“優しいおじちゃん”って感じで(笑)。逆に今年一緒にレースをするまでは、自転車の話しかしたことないような感じでした。
──今年からJLOCに熊倉さんが入られたのは、小暮選手にとっても不思議な巡り合わせでしたね。
K:そうですね。僕もちょっと腰が……年齢もあると思うんですが、「腰、痛い痛い」って言ったら、「お前、自転車乗れ」って言われて(笑)……。でもほんとホンダ時代、近くで見てましたので。道上さんがチャンピオンを獲ったとき(2000年)も監督をやられていて。レースに対しては、すごく情熱と熱い心を持った方だなっていう印象があったんで、一緒にできるっていうのはすごくありがたいし光栄ですね。
M:ほんと熱いですよね、熊倉さん。
K:そう。すごい熱い人だよね。
──JLOCにまた新しい“カラー”が増えて、チームの士気もさらに高まるのでは、という期待が持てます。
M:そうですね、ほんと熊倉監督のおかげでチーム全体の緊張感が変わったなと思います。なんていうんですか、チーム全体がピリッと締まった感じがすごくしますね。
──では、ぜひ三人で自転車に乗って、小暮さんの趣味でもある秘湯巡りに行くっていうのはどうですか?
K:多分、元嶋と熊倉さんは自転車ですいすい行っちゃいますけど、僕はちょっと……多分このモトコンポでついて行く……(笑)。
M:モトコンポ、(時速)60キロですよね!? だったら、自転車でついて行けそうです(笑)。よっぽどの上りじゃない限り、自転車も結構速いから。熊倉さん、結構強いですからね、自転車。
K:元嶋が飛び抜けて……もう変人のレベルまで行ってると思うんで(笑)。多分、自転車は普通の人は絶対ついて行けないと思うんですよ。 熊倉さんも相当やってるんでやっぱ速いと思うし。そのふたりに……ついて行くっていうのはすごく難しいと思うんで。まあ秘湯、行きたいんですけど、秘湯に行くまでがすごく……どうなっちゃうの!? っていう感じはあります。でもバイクだったら……うん、その案、いいですね(笑)。
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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