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冨林勇佑選手(No.5 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号)「ホッとしたような気持ち半分、悔しさ半分”ぐらいが今の気持ち」
SUPER GT あの瞬間 by 島村 元子表彰台から手を振る冨林選手(写真左)
レースでの出来事をドライバー自身に振り返ってもらう「SUPER GT あの瞬間」。レースでの秘話、ドライバーのホンネを“深掘り”し、映像とコラムでお届けします!
第3戦鈴鹿で、GT300クラス3位となったNo.5 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号。レースでは、チームそして参戦車両が得意とするタイヤ無交換作戦が奏功して2位でチェッカー。2年ぶりの表彰台に歓喜した。そんなチームのドライバーのひとりがSUPER GT・GT300クラスにデビューしたばかりの冨林勇佑選手。すでにeスポーツでは知られた存在だが、SUPER GT参戦は“有言実行”で叶えたのだとか。鈴鹿での躍進そしてリアルレースでの奮闘ぶりを語ってもらったが、話は思わぬ方向へと進み……。
──デビューイヤーのシリーズ3戦目の鈴鹿で、自身初の表彰台に立ちました。お気持ちを聞かせてください。
冨林勇佑:開幕戦は僕のミスで予選ができなかったり(※1)、第2戦は速く走れたんですけど、“四脱”でまたダメだったり(※2)とか、個人的にはかなり噛み合わないような形でした。チームにもほんとに迷惑をかけてしまっていた中で、鈴鹿はチームマッハとしてもマザーシャシーとしても、すごく今まで験がいいコースだったので、正直最低でも表彰台で……願わくば優勝という気持ちで臨んでいたので、そういう意味では最低限……2位っていうところは個人的にはうれしさもあったんですが、でも2位ってなると……。「3位だと表彰に乗れて良かった」っていう気持ちになるかもしれないですが、2位だとやっぱりあと1個(順位が)上がれていたら優勝だったという気持ちもあるので、そういう意味では“ホッとしたような気持ち半分、悔しさ半分”ぐらいが今の気持ちですね。
※1:デビュー戦の岡山大会でQ1を担当するも、アウトラップ中にアトウッドカーブ立ち上がりで挙動を乱してスピン。セッションの赤旗中断を招いた。ウォールにヒットして左フロントを激しく損傷したクルマは、決勝に向けて翌朝9時まで修復作業が行われた。
※2:富士戦のQ1ではラストアタックで自己ベストタイムを更新し、5番手に浮上。だが、“四脱”(4輪脱輪=走路外走行)の対象となり、タイム抹消に。結果、セカンドベストタイムが採用され、Q1・B組の12番手に終わった。
──鈴鹿はマザーシャシーが得意とするコース。タイヤ無交換の戦略はいつ決まりましたか?
冨林:ウチの場合、(開幕戦)岡山のようにタイヤ交換義務がなければ、 基本的に常に無交換を意識していて……。マザーシャシーはクルマが軽い分、タイヤの発熱に非常に苦労するようなクルマなので、タイヤを替えてしまうとアウトラップから(タイヤが)温まるまでの時間がかなり厳しいというところがあるんです。そういう意味でもサーキット入りするときから、基本的にチームも僕も無交換を意識してました。
──スタートドライバーとして、タイヤマネージメントがポイントになったと思います。どう心がけてレースに挑まれたのでしょうか。
冨林:例年のチームマッハ(のレース戦略)を見ていても、(タイヤ)無交換する時は、タイヤの内圧をかなり低い状態にセットしてスタートをするので、最初の1~2周が非常に大事になっていて……。チームとしても(鈴鹿戦は)予選が6位(※3)だったんですが、12~13番手におそらく無交換をするであろう他のチームのクルマがいたので、 (ポジションが)落ちてもそこまでにしてくれっていう……。かなり序盤が厳しく、落ちるのはわかってるので、最低限そこまで(のポジション)で帰ってきてくれたら多分ピット(作業後)に(順位が)ひっくり返るから、というような(アドバイスを)チームから受けていました。個人的にはひとつでもポジションを落とさず帰ってくるっていう目標を立てて……それに合わせてフォーメーション中も、すごく(タイヤの)ウォームアップを入念にやったんですけど、スタートしてみたら……僕、意外とローリングスタート好きなのもあるかもしれないんですが、結構うしろとの距離を離して、むしろ前との距離をビタビタに詰めるような形でスタートできたので、ポジションを失うことなく前の集団についていけたんです。
最初の1~2周……特にうしろにはGT3のGT-Rがたくさんいて、(GT-Rは)真っ直ぐが速いので、そこに飲み込まれてしまうと抜き返すのも非常に厳しいから、「絶対抜かれない!」という気持ちでした。 自分のポジションを失わずに前の速い集団にしっかりついていけたし、タイヤもかなり温存しながら走れてたので、 個人的にはいい走りはできたのかなと思います。(自身で点数をつけるとすれば?)80点ぐらいですかね(笑)。もうちょい行けたかなって気持ちもあるんですけど、まあ、逆に行かなかったのも良かったのかなと思うので。
※3:鈴鹿戦はQ1・B組を3番手通過、Q2を担当した平木玲次が7番手を獲得。その後、上位車両が再車検不合格となり、5号車は6位に。
5号車 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号
──「行かなかったのも良かった」という、その本意は?
冨林:あの日、特に僕が走ってる2時半とかって一番気温が高かった(※4)と思うんです。 気温が高い中、燃料も満タンなので、そこでがんばってしまうと結構すぐタイヤが傷んでしまうので……。もちろん、今回もヨコハマタイヤさんがすごくいいタイヤを用意してくださったんですけど、 感覚的にはやっぱり想定以上の暑さだったので。さらに硬いコンバンドがあると、なお(路面コンディションに)合っていたのかなっていう気持ちもあったくらいです。そういう意味でもあそこでがんばってしまっていたら、いい方向に行く可能性もあったでしょうが、結局最後は相方の(平木)玲次も「タイヤ、ギリギリだった」って言ってたので、 そこでがんばらなかったのが後に効いたのかなっていうのと、あと、序盤で1回セーフティカー入ったので、あそこでがんばっても抜けなかったら順位も変わらないわけで……。逆にそこで自分のペースをうまく維持しながら走ってセーフティカーでまた差がチャラになったので……。結果論で言えば、かなりいい走りだったのかなと思います。
※4:決勝直前、気温30度/路面温度50度となった。
──終盤、またもセーフティカーの導入で後方とのマージンがなくなり、5号車はNo.56 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rの大ベテラン、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手の猛追にも遭いました。どのような気持ちで見守っていたのですか?
冨林:まず最初、アウトラップの7号車(Studie BMW M4)に引っかかってしまったじゃないですか(※5)。 あの時点でかなり厳しいなって思っていたのと、(運転を平木に)代わってから、数周ちょっとペースが上がらなくて……。ちょっと苦労してるのかなっていうところだったので……。ただ、そこから玲次が自分なりにペースを見つけて、そこから一度抜かれた埼玉トヨペットさん(No.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT)の吉田(広樹)選手に食らい付いていったので、 その時点ではちょっとJPさん……うしろの(56号車)KONDO Racingさんとの差もあったので、3位は固いかなと思っていたんです。
そしたらセーフティカーが入っちゃって……。「うわぁ、かなりきつい」って、チームと見ていたんですけど、その中で前のクルマ(52号車)がシケインで飛び出したり、どちらかというとこっちに流れが来てるっていう感じで。最後はよりプッシュできるように、チームと玲次と(無線で)交信して……それがうまくいったのもあって、結構ストレートでも差が縮まることなく抑えられていたので、最後のほうはウチもそうですが、JPさんもかなりタイヤが厳しそうだったので、どうにか抑えるところだけ抑えれば2位を確保できるんじゃないかという気持ちで見ていました。
※5:クラストップだった7号車は20周を終えてピットイン。5号車はそのアウトラップで背後に迫るも攻略できず、逆に52号車の先行を許した。
──自身は 今年がSUPER GTのデビューイヤーですが、初戦の岡山を走った時、これまでやってきた他のカテゴリーと比べて、何が一番違いましたか?
冨林:お客様の数です。もちろん他のカテゴリーも最近すごくがんばって運営してくださっていて集客が多分増えていると思うんですけど、でもやっぱり日本ではSUPER GTが段違いに人気だと思います。認知度も高いと思いますし、岡山であれだけのお客様が来られてるっていう……。もちろん、クルマも今まで出てたカテゴリーよりは全然速いですしね。ドライバーさんも、より“濃いメンバー”が揃っていると思うんですが、一番は関わってくださってる人の数だったり、見てくださってる人の数っていうところが……いざレースウィークになるとやっぱりお客様の数が一番(違うと)感じました。
(自分自身がレースをする上では)タイヤが一番違うと思いますね。 今までは市販車ベースのレーシングカーに乗せていただいてたので、タイヤとしてはそんなに太くなかったんですけど、SUPER GTってなるとものすごい太いタイヤですし。今の国内外のメーカーさんが一番いいものというか、それぐらいいいタイヤでないと勝てないので、 そのタイヤの……特に冷えてる時の感覚とか、あとはピークをいかに維持させるかというか、いかにタイヤをいい状態でずっと走らせるかっていう……そこのところは、他の今まで使っていたタイヤと比べても、すごくシビア。ちょっとしたミスがすごくタイムロスに繋がったり、タイヤの(ポテンシャルの)落ちに繋がったりするので、そういうところの難しさは開幕戦でもすごく感じましたね。
5号車 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号
──そういう意味では、頭の中での理解度と実際乗ったときの違いが、岡山の予選でのクラッシュや、富士の「行けてる!」と思ったときの走路外走行という結果に及んだと言えるのでしょうか?
冨林:岡山は特にそうだと思いますね。難しさで言えば、富士もほんとにちょっと(タイヤの)内圧を……あの時はすごく日影になって気温が下がってたので、 それに対して(コースに)出てったときの(タイヤ)内圧が低すぎた。タイヤは温まってないけれど行くしかないっていうところで、とにかくフルプッシュで行ったんですが、結果(コースを)はみ出したので(苦笑)、逆にしっかりもっと自分としても内圧の理解度があれば……。日影だから(内圧を)低く(してコースに)出ちゃったのはしょうがないんで、自分なりにもっと効率のいい温め方をしていたら、 あそこまで無理せずに走っても、しっかり(タイヤの)グリップ感があって多分もっと速いタイムでQ1がラクに通れたと思います。結局行き着くところは、そういったタイヤの難しさになるのかなと思います。
──“イタい”思いをした後、鈴鹿ではQ1のBグループ3番手通過。“学習の成果”ですね!?
冨林:他のカテゴリーでもそうなんですけど、僕自身、結構100%(の力で)“バーン!”と行き切って(走りを)まとめられるし、まとめられなくても意外と致命傷にならない方が多くて。とにかく予選はもう思いっきり行ってやるよ! みたいな気持ちで走っちゃうタイプなんです。でも、鈴鹿に関しては、チームから「ほんとに8割(の力)でいいから」(笑)、って念を押されて。「オマエがQ1通ってくるまで、Q1で使い続けるからな」と言われるなか、クルマの速さを信じて普通にアタック……「気負うことなくアタックしてこい」と、玉中(哲二チーム)代表にアドバイスされたので。個人的には「予選、行き切ったわー」っていうような達成感は全然なかったんです。正直、すっごく“丸まったアタック”で(苦笑)。3位でもちろん良かったんですが、もっとほんとは行けるけど……っていうような気持ちもありつつ、でも自分の仕事をしっかり無難にこなせたっていうところで、そこは良かったかなって思います。やれることをやれる範囲でしっかりこなすっていうのが大事なんだとすごく感じました。
──一方、eスポーツのバーチャルレースでも、長らく活躍中(※6)ですが、 リアルレースに挑戦しようと思ったのはいつ頃ですか?
冨林:強く感じたのは2018年で、レースを始めたのもその年の10月でした。やっぱりレースっていうのはすごく資金もかかるものだと思います。僕自身、eスポーツをやってから自分で免許取って本物のクルマを乗り始め、そこからちょくちょくサーキットも行くようになって。サーキットを走る機会は年に何回かあったりしたんですが、実際レースに出るってなったときに「じゃあ何が必要なのか?」とか、「誰と連絡を取ればいいのか?」っていうところは正直分からなかったですし、僕も大学生だったんでそんなに深く考えてなかったんです。そのなかで、一番明確にレースに出たいっていうきっかけになったのが、18年に筑波サーキットのライセンスを取って自分のクルマで走ったことでした。そのときになんかすごくゲームと同じようにというか、ほんとにeスポーツをやってるような感覚で走れたので、 「レースやりたいな」、「やれるんじゃないかな」っていう……具体的な気持ちというか、はっきりとした気持ちに変わったのんです。2018年の2月くらいのことだったと思いますね。
※6:2016年、グランツーリスモ世界大会で優勝。
──その後、2018年に4輪レースデビューし、翌年にはスーパー耐久へ、2020、21年にはST-3クラスでチャンピオン獲得と、順調にリアルレースでも成果を出していますが、現在の自身の肩書きは?
冨林:僕自身、すごくeスポーツにお世話になってるし、eスポーツがあったからこそ、こうやって夢だったSUPER GTにも出させていただいてるので、本来であれば「レーシングドライバー」という肩書きでいいのかもしれないけど、僕自身、やっぱりeスポーツから上がってきてることを自分自身も自覚しているので。逆にそれをいろんな人に知っていただいて、“eスポーツから実車へ”っていう道を少しでもより広げていけたらと。それを目指す子供たち……カートとかできなくてもレーサーを目指したいっていう子供たちに、少しでも夢を与えられたらいいなと思うので、「eスポーツ出身のレーシングドライバー」とか、「eスポーツレーサー兼レーシングドライバー」というような感じで……。“二刀流”じゃないですけど、その点をアピールするような伝え方をしています。
──モータースポーツ界における“大谷翔平”、ですね!? SUPER GTへの参戦以降、バーチャルレースの関係者やファンの反応も大きいのではないですか?
冨林:結構いろんな人に言っていただけるんですけど、まだ(大谷のような)そこまでの身分ではないので(笑)。でも、ほんとに大谷翔平さんのようなすばらしい選手に今後なれたらいいなと思いますね。今、応援してくださってる方の半分ぐらいは、普段eスポーツをやられてるような方だったりもするのかなと思います。この前の鈴鹿でも、レース後にお客様がコース場に入ってきたとき、結構な数の人が僕らのチームピット前に来てくださって。「ゲームで一緒に走ったことあります」って言われたり、「eスポーツの解説やゲストでプレーしているときに見てます」って言ってくださる方がすごくたくさんいらっしゃったので、 すごく励みになりました。うれしかったですね。
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【番外編】SUPER GT 2022 第3戦:冨林勇佑選手(No.5 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号 | SUPER GT あの瞬間
バーチャルとリアルの両レースで腕をふるう冨林選手。当然、実車レース前にはシミュレーターを活用している。それならばぜひその様子を見せてほしい! とリクエストしたところ、ありがたくも快諾いただいた。急きょ、iRacingを使って収録されたばかりの富士スピードウェイを走行するにあたり、冨林選手はコースをセットアップしつつ、手にはレーシンググローブをはめてスタンバイ。なんでもステアリングは実車並みの重さがあり、走行中はフィードバックもあるのだとか。あわやクラッシュ! というときには手を離さないと怪我をするという。「普通に腕が折れちゃいますよ」と冨林選手の衝撃的なコメントには、驚くばかりだ。
──ではせっかくなので、富士のコースを紹介しながら走ってください。
冨林:富士は直線が長いので、結構パワーのあるクルマは有利だったりするのかなと思います。特に実車でとGT-Rはかなり富士が向いてるのかなって、実際一緒に走ってても思います。ヘアピンとか、こういう速度が乗ってくる100Rはマザーシャシーが……コーナリング速いので得意です。
と、ここで、ただ黙ってその様子を見ているだけじゃ……と、走行中の冨林選手に矢継ぎ早に質問を浴びせるという、無茶振りをはじめた取材スタッフ……(汗)。その様子は、ぜひ動画にてチェックを!
──ちなみに今、シミュレーターで何のマシンに乗られてるんですか?
冨林:AMGのGT3です。(SUPER GTでは)初音ミクさん(No.4 グッドスマイル 初音ミク AMG)とか、レオンさん(No.65 LEON PYRAMID AMG)と一緒のクルマです。ここの上りがマザーシャシーは結構厳しいです。いつもこの立ち上がりでGT3マシンに離されますね、パワーがないので。得意なのは100Rとかヘアピンとかその辺ですかね。あと1コーナーとかダンロックコーナーのブレーキングもすごくマザーシャシーはクルマが軽い分、突っ込めるので。
──なるほど。では走りながらちょっといくつか質問させていただきます。「冨林」という名前ですが、なかなか呼ぶの難しいと思うんです。ファンの方にどう呼んでもらいたいですか?
冨林:“トミー”って呼んでくださる方が非常に多いですね。そうやって呼んでいただけるとうれしいかなと思いますね。
──次、トミーの特技は何ですか?
冨林:特技は、ボーリングとサッカーとカラオケは……ちょっとわかんない……特技っていえるほどかわかんないですけど、ま、(採点で)95点ぐらいいけます。
──おぉーっ!!
冨林:得意な曲であれば……。
──すばらしいですね。じゃあ、トミーの座右の銘は?
冨林:「生きてればなんとかなる」とかですかね(笑)。楽観的にいろいろ考えちゃうタイプなんで。
──自分を漢字一文字で表すなら?
冨林:え────っ。「楽」(らく)。楽しいって書いて「楽(らく)」。まあ楽(らく)に楽しく……なんかイヤだな(笑)。ちょっとなんかあれですけど、まあ、でもいい意味ですごい楽(らく)な気持ちで楽しく、いろいろやれたらいいなと。
──密かな野望はありますか?
冨林:密かな野望ですか。野望かわかんないですけど、GT500には乗りたいなっていうのは野望としてありますね。
──それは言葉に出すと現実化しやすいんで、声を大にして言う方がいいと思いますよ。
冨林:そうなんですよ。(SUPER)GTに乗りたいっていうのも最終戦……去年の最終戦とか、ちょうどこの先の(富士の)ヘアピンの立ち上がり近辺で見てたんですよ、友達と。で、「来年はあれ、出たいよなぁー」とか口に出してたら乗れましたし。富士のスーパー耐久も、僕ずっと24時間はバーベキューしながら見てたんですけど、「来年は俺、あれ乗ってるから」とかそんなこと言ってたらほんとに乗れたんで。「口に出せば叶う」っていうのは、僕は結構信用してます。いろんな人に助けてもらって叶えてるんで。あと、全然違う話になると、僕、野球の始球式やりたいなと思ってたんですよ。
──おおっ!!
冨林:言ってたら、どうやら叶いそうなんで。ちょっと詳しいことはまた後日発表になると思うんですけど。叶いそうなんで(笑)。それから僕、車内から国歌、歌いたいんですよ。
──え──っ!?
冨林:密かな野望はそれですね。スタートドライバーが「君が代」を歌うっていうのは、いつか生きてるうちにやってみたいなって思います。
──得意なカラオケの歌唱力を生かして……。
冨林:まあ練習はしなきゃいけないと思うんですけどね。僕、あのカラオケの“もののけ姫”得意なんで、そのノリで多分いけるかと。
──すごいですね。ぜひ実現していただきたいです。ちなみに喋りながら走っていて、ラップ(タイム)どれぐらいで走ってるんですか?
冨林:今これ、ハードタイヤで(1分)40秒とかなんで、夏のレースペースぐらいじゃないですかね。今、気温も夏に設定してあるんで、これぐらいで走れたら結構いいんじゃないかな、みたいな。
──いや、すごいですね。わざと難しい質問をして集中力を削ぐような質問をしたつもりなんですけど、全然普通にしてるっていうのがスゴいっ!
冨林:そうですね。この辺は普段もeスポーツも、仲いい友人とかと通話しながらみたいな……。結構ひとりで走るの苦手なタイプですぐ飽きちゃったりするんで。普段から友人と話しながら走ることが多いです。そういう意味では、普段のレースも意外と無線でずっと話してたりとかできます。
──無線で話してても集中力がなくなるとかじゃなくて、むしろいい影響もあるってことですか?
冨林:GTはあんまりそういう時間……走る時間がちょっと少ないんでないんですけど、他のカテゴリーだと結構ずっと喋りながら、 ああでこうで……という感じで、セットアップを煮詰めていったりとかします。
──すごいですね。この何周かのあいだに貴重な情報をいっぱい聞くことができました(笑)。
冨林:ほんとですか!
──ちなみにシミュレーター使う時、ヘルメット被っては走らないんすね!?
冨林:もし、被ってっていう……あれ(リクエスト)があれば被りますけど(苦笑)。
──トレーニングのひとつとしてするわけではないんですね。
冨林:しないですね。昔、友達とふざけて全員ヘルメット被って……っていうのはやったことあります(笑)。さすがにやらないですね。
閑話休題、話は再びSUPER GTへ。
5号車 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号
──次戦以降、シーズン中盤は富士、鈴鹿が450kmの長距離レースになります。リアルレースの長丁場をどのように挑戦をしていこうと思いますか?
冨林:夏場になるとかなり暑いのかなというところと、この前の鈴鹿に関しても、ちょっとクールスーツにトラブルがあったりとか。(前半担当だった)僕のスティントでもかなり暑かったので、まずはトレーニングをしっかり行ってから臨まないと、と思います。
──やはり暑さっていうのは、リアルレースのみの体感なんですね。
冨林:もちろん、横Gとかもあるんですけど、そういうところはいろんなトレーニングとか、別カテゴリーにも乗っていたりするので、そんなにキツいなと感じることはないんです。だけど、暑さに関してはなかなか……。まあ、(トレーニングとして)サウナに入るとか!? わかんないですけど(笑)。そうやって徐々に身体を慣らしていかないとダメだと思うので。とにかく、普段からできるだけ外にいるようにしたりとか、暑い環境に行ってエアコンをすぐつけないとか……わかんないですけど。そういった形でちょっと暑さに身体を慣らしとく必要があるかと。eスポーツはいつもエアコンの効いた涼しい部屋でできるので、違う点は暑さになるのかなと思います。
──今、シーズン一番の難関かもしれませんね。
冨林:マザーシャシーがほんとに暑いんですよ。確かに誰に聞いても、「ほんとに暑いから!」って言ってますし、実際(第3戦)鈴鹿もその片鱗が見えたというか、 走ってて“暑っ~つぅ”みたいな感覚だったので、しっかり準備はしたいなと思います。
──では、最後に恒例のここ24時間の“ちょっとした幸せ”を聞かせてください!
冨林:ちょっとした幸せはなんですかね……eスポーツプレーヤーっぽいことを言うのであれば、今、グランツーリスモっていうソフトで、国体でeスポーツ版っていうのが2019年からあるんですけど、その大会の予選が今、行われてて、実は普段僕が教えてる育成の若い子たちがいたりするんですけど、 僕自身もやっぱり走らないと教えようにも教えれないんで。そこで、ちょっとうれしかったのが、自分の記録を……ミスってたんですけど、ちょっと更新できたことが、ちょっと幸せなことだったかなと思います。eスポーツプレーヤーっぽいことを言うのであれば、ですけど(笑)。
──eスポーツプレーヤーじゃない部分でも何かあるんですか?
冨林:昨日、普段お世話になってるパーソナルジム……トレーナーさんがいるんですけど、僕が行く前に平峰(一貴/No.12 カルソニックIMPUL Z)選手とお会いできて……。僕、平峰選手って結構ファンだったりするんで(笑)。 同じレースに出ながらでも、ああいうふうに走れたらカッコいいなっていう……。ドライビングの個性っていうか、そういうところがすごい攻め続けて速いっていうのは、個人的にすごく好きなので。僕が(ジムへ)行くタイミングで平峰選手がトレーニングしてたんで、そこは自分にとってちょっと“プチ幸せ”じゃないですけど、「かっけーっ!」って思いながら(笑)。普段もお会いしたらお話しさせていただいてたり、平峰選手も、もともと僕が今、S耐で所属させていただいてるチームにも所属していたり、少し共通点もあるのでお会いしたら実際話すんですけど、なかなかジムでお会いすること少ないんで。タイミング的には良かったなというのが昨日のプチ幸せですかね。
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【SUPER GT あの瞬間】SUPER GT 2022 第3戦:冨林勇佑選手(No.5 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号)
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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