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モーター スポーツ コラム 2022年5月20日

スーパーフォーミュラ第3戦レビュー 雨の鈴鹿で新たなヒーロー誕生

SUPER GT by 吉田 知弘
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松下信治(B-Max Racing Team)

全7大会10戦のスケジュールで行われる2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権。4月上旬の富士スピードウェイで2戦が開催され、同月下旬の鈴鹿サーキットで、早くも第3戦が行われた。

土曜日の予選では、前年チャンピオンの野尻智紀(TEAM MUGEN)がポールポジションを獲得。ライバルとは僅差ではあったものの、開幕戦からの好調さを維持している様子が伺えた。早くも“野尻の快進撃を誰が止めるのか?”という雰囲気になりつつあったが、この予選で名乗りを上げたのが、KONDO RACINGの2台。山下健太が2番手、サッシャ・フェネストラズが3番手につけた。

調子が上向きつつあるサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)

昨年はチームとしても苦戦を強いられてしまったのだが、ひとつひとつ問題を解決していき、今季の開幕戦から上位争いに顔を出すようになってきた。特に昨年はコロナ禍での入国規制の関係で、フェネストラズがシーズンの大半を欠場することになったのだが、彼が戻ってきたことが、チームにとっても少なからず追い風になっている様子。さらに、今年からチームのアドバイザーとしてミハエル・クルム氏がスーパーフォーミュラのKONDO RACINGに帯同し、主にフェネストラズの通訳を担当している。こういった細かなコミュニケーション面での改善も、復活の要因となっている。

逃げようとする野尻を、KONDO RACINGの2台がどう食らいついていくのか。そこに注目が集まったのだが、いざレースが始まると、野尻がレースをリード。2番手以下がバトルを繰り広げている間に後続を引き離し、一時は10秒のギャップを作った。一方の山下はウエットコンディションにマシンを合わせ切れなかったのかペースが上がらず。10周を過ぎてタイヤ交換を行うなど、予選での好調さから一転し、苦しい展開となった。

今回も野尻が優勝を飾るのかと思われたが……そこに待ったをかける黄色いマシンがいた。9番手からスタートした松下信治(B-Max Racing Team)だ。スタートで5番手に上がると、さらに2台を抜いて3番手に浮上したが、前半は徹底的にペースを抑えてタイヤを温存。いつもは、アグレッシブにいくイメージが強い松下だが、今回はひたすらチャンスが来るのを待った。

そして、残り10周を切ったところで勝負をかける。まずは牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)を追い詰めて、27周目のシケインで追い抜き、2番手を手にした。この時点で、トップを走る野尻との差は3.1秒。残りは4周と限られた時間しかなかったが、松下はライバルより1周あたり1.5秒早いペースで追いついていき、29周終了時点では、あっという間に野尻の背後についた。

野尻も応戦はしたが、勢いは完全に松下の方が上だった。1コーナーでアウト側から並びかけ、オーバーテイクに成功。その瞬間、グランドスタンドでは大きな拍手が沸き起こった。

鈴鹿では、これまでカテゴリーを問わず数多くの名勝負が繰り広げられてきたが、なかでも2005年のF1日本GPで、キミ・ライコネンが17番手スタートから追い上げ、ファイナルラップの1コーナーでジャンカルロ・フィジケラをアウト側からオーバーテイクし、観客席は大盛り上がりとなったのだが、まさにそのシーンを彷彿とさせるものだった。

松下は、最後まで勢いを緩めず、わずか2周で5秒ものギャップを築いて、チェッカーフラッグ。自身にとってスーパーフォーミュラ初優勝を飾るとともに、チームにとっても国内トップフォーミュラ初の勝利だった。

松下は見事な逆転劇でスーパーフォーミュラ初優勝を達成した

昨年の最終戦では、スーパーフォーミュラで初のポールポジションを経験した松下だが、決勝ではフライングをしてしまい、ペナルティで後退。今季も富士ラウンドの2レース目で勢いが空回りしてしまい、他車に追突してしまうといった場面があった。

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歯車がなかなかかみ合わず、険しい表情を見せていることが多かった松下だが、鈴鹿のパルクフェルメでは、これまでの苦労から解き放たれたように、満面の笑みをみせていた。

「雨で31周のレースをひとつのタイヤで走り続けないといけないので、最初からガンガン攻めてしまうとタイヤがなくなってしまいます。なので、セットアップもありますが、1周だけ攻めてあとはあまり攻めずに最後を見越して虎視眈々と走り、最後にトップのふたりが見えたときにプッシュしはじめました。僕もタイヤがギリギリでしたが、そういうクレバーなレースが今日はできたと思います」

「『勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし』というか……。勝てるときは9位からも勝っちゃうし、勝てないときは1位からでも勝てないんだなと思いました」

これで20ポイントを稼ぎ、ランキング3番手に浮上した松下。この勝利を機にチャンピオン争いにも名乗りを上げたいところだが、まだトップを快走する野尻とは差があると感じていた。

「野尻選手とは週末の走り出しの段階で差がありすぎる状況です。その戦力差を埋めなきゃいけません。確かに勝ったことは自分の気持ちとしては、もちろん自信に繋がるんですけど、冷静に考えると、まだまだビハインドだと思っています。本当に野尻選手は強いので、なんとかしなければいけないです」

この1勝で、満足することなく、改めて気を引き締めていた松下だが、初優勝を挙げたことで、肩の荷がひとつ下りたことは間違いないだろう。これからの中盤戦で、どのような快進撃を見せるのか。注目の集まる存在となりそうだ。

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文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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