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モーター スポーツ コラム 2022年4月20日

2人の主役が誕生した2022年スーパーフォーミュラ開幕大会

SUPER GT by 吉田 知弘
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2022年スーパーフォーミュラの開幕大会は2レース制で開催された。

今年も、富士スピードウェイでシーズン開幕を迎えた全日本スーパーフォーミュラ選手権。今までは全7戦で行われていたが、シーズン中に2回『2レース制』を導入し、全7大会10戦のスケジュールでシリーズが争われることとなった。

早速、開幕大会では2レース制が導入され、各チームとも慌ただしい週末を過ごしたが、2回レースがある分、2人の主役が誕生する週末となった。

【とにかく攻め続けた平川亮がシーズン初戦を制する】

4月9日に行われた第1戦。午前の公式予選では、笹原右京(TEAM MUGEN)が初のポールポジションを獲得した。スーパーフォーミュラでは2020年、2021年のレース経験はあるものの、いずれも代役としての参戦で、レギュラードライバーとしてフルシーズンを戦えるのは今季が初めて。しかも、開幕1ヶ月前に参戦が正式発表になるなど、“バタバタな状態”で開幕を迎えたが、自身の速さを存分に披露した。

「参戦が決まってから、チームの皆さんが毎日徹夜で頑張ってくれました。テストで色んな問題点を出しながら、その都度コミュニケーションをとって着実に前に進めるように目指して、コツコツ積み上げた結果が実ったのかなと思うので、嬉しいです」(笹原)

このまま初優勝という期待も高まった笹原だが、今のスーパーフォーミュラはそう簡単に結果が得られるものではない。スタートでストールを喫してしまい、最後尾に後退。翌日の第2戦でもストールを起こしてしまい、彼にとっては試練の開幕大会となった。

笹原の後退でトップに立ったのは、3番手スタートだった平川亮(carenex TEAM IMPUL)だ。一時はサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)の先行を許したが、14周目にトップを奪い返した。

平川亮(carenex TEAM IMPUL)

その後は着実に後続を引き離していったが、後方では6番手からスタートした昨年王者の野尻智紀(TEAM MUGEN)が10周目にタイヤ交換を済ませ、ペースよく追い上げていたのだ。平川はレース全体の半分を過ぎた25周目にピットイン。チームも7.2秒の作業時間で20号車をコースへ送り出したのだが、野尻が先に1コーナーを通過。平川&インパル陣営のトップ死守は叶わなかった。

しかし、これで終わらないのが、スーパーフォーミュラの面白いところ。野尻は早いタイミングにピットを済ませて逆転を狙った分、タイヤを使い込んだ状態にある。その一方で平川はタイヤ交換したてで新品の状態だ。この優位性をいかし、一気に野尻との差を詰めると、30周目のメインストレートでオーバーテイクシステム(OTS)に手をかけ、野尻に並びかけた。

これに対し、野尻も対抗するべくOTSを発動。2台並んで1コーナーに飛び込んだが、サイドバイサイドのバトルはまだ終わらない。2台はコカ・コーラコーナーまで並走したが、常にコーナーのイン側にいた野尻がポジションを守った。

ここで2台がOTSを解除し、一旦は休戦かと思われたが、平川はまだ諦めておらず、ダンロップコーナーでも積極的に仕掛けていく。ここで野尻を追い詰めていき、13コーナーでアウト側のスペースをみつけて、ついにトップに浮上した。

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スーパーフォーミュラでは13コーナーでオーバーテイクになることがあまりないほか、アウト側から抜いていくのは、かなり難しい。だが、平川は少ないチャンスをものにするべく、飛び込んでいったのだ。

「野尻選手もフェアに戦ってくれましたし、あれ以上バトルが長引いてしまうと僕のタイヤも(おいしいところが)落ちてしまうので、チャンスはあそこだったのかなと思います」(平川)

そのまま最後まで手を緩めることなく攻め続け、2022年の初戦を制した平川。開幕前のテストでは「調子が良くない」と苦戦しているように感じられたが、チームとともに見事リカバーし、最高の結果に結びつけた。

「シーズンオフはクルマがなかなか決まらなくて、若干気になりましたが、今朝なんとなくまとまってきて走れたので、良かったと思います。今シーズンは初戦から優勝できて良かったです」(平川)

【これが王者の走り、前日のリベンジを果たす快進撃】

白熱のオーバーテイク合戦が展開された第1戦から一夜明け、同じ富士スピードウェイを舞台に第2戦の予選と決勝が行われた。

ここで渾身の走りを見せたのが前日のトップ争いで敗北を喫した野尻だった。予選Q1のA組を3番手で通過すると、Q2ではさらなるタイム更新を目指したのだが、1回目のアタックはコカ・コーラコーナーで少しはみ出てしまい失敗となった。だが、野尻はすぐに切り替えてタイヤの温度が上がり過ぎないようにペースダウン。仕切り直しでラストチャンスとなるタイムアタックに臨み、1分21秒522でポールポジションを獲得した。

好タイムが出たと分かった瞬間、野尻はコックピット内で力強くガッツポーズをみせた。

「コカ・コーラーコーナーで4輪脱輪してしまった瞬間『今回はチャンスを失ったな』と……そのくらい重要な局面だったと思います。その周は諦めてなるべくタイヤの熱を上げ過ぎないように注意しました。ポールを獲らないとレースでは勝てないという思いもありましたので、何としてもポールを獲得したかった。なので、非常に嬉しさが込み上げてきました」(野尻)

勝つために絶対必要だったポールポジションを手にした野尻。午後の第2戦決勝では、その優位性をフルに活かし、序盤からレースをリードしていった。

第2戦は野尻の独壇場かと思われたが、それに待ったをかけたのが前日のトップ争いを制した平川だった。予選Q2でミスが出てしまい8番手からのスタートとなった平川は、序盤から着々と順位を上げて18周目には4番手に浮上。22周目にピットインをすませると、その後はファステストラップを出して野尻逆転を目指した。

これに対し、TEAM MUGENもすぐに動きを見せ、25周目がピットイン。なのとか平川の前に出ることができたが、そのさは1.4秒と前日同様に緊迫した展開となった。

2人の一進一退のバトルはレース終盤まで続いたが、最後まで逃げ切ることができたのは野尻。見事トップチェッカーを受け、今季初優勝を飾るとともに、前日のリベンジを果たした。

野尻智紀(TEAM MUGEN)

「(平川選手は)『やっぱり来たな』と思いました。平川選手のオーバーテイクシステムがどれだけ残っているのか、いつタイヤを換えたのか、そのあたりを無線で情報をもらいながら、自分としてはなるべく1秒近くまでは接近させないようにプッシュしたり、少し余力を持ってみたり、そういうことを繰り返しながらタイヤも労りつつ、ペースを安定させることに主眼を置いてドライビングを続けました」(野尻)

「なんの不安もなく最後まで高いポテンシャルを発揮できたので、今日は本当にすばらしい一日になったと思います。チームと応援してくださったファンの皆さんに最大限の感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました」(野尻)

この週末で一気に2戦が終了するとあって、シーズンの流れを掴む上でも非常に重要な開幕大会だったのだが、終わってみれば野尻と平川が週末で1位と2位を分け合い、ポイントランキングでも2人が頭ひとつ抜け出た。だが、開幕大会のレースを見る限り、昨年以上に激戦になりそうな雰囲気があり、第3戦以降で追い上げを見せるドライバーも多数いそうだ。

このまま2人のチャンピオン争いに発展していくのか。それとも、“待った”をかけるライバルが現れるのか……。2022年も国内トップフォーミュラの熱いバトルから目が離せない。

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文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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