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モーター スポーツ コラム 2022年4月8日

スーパーフォーミュラ 2022 シーズンプレビュー 連覇に向け、さらに完璧を求める王者

SUPER GT by 吉田 知弘
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野尻智紀(TEAM MUGEN)

いよいよ今週末に富士スピードウェイで開幕を迎える2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権。昨年よりも多い、12チーム21台がエントリーし、チャンピオン経験者から、トップを目指す中堅メンバー、そして将来期待の若手やルーキーなど、今年も様々なドライバーが名を連ねている。

その中で、シーズン開幕前の注目といえば、昨年の王者である野尻智紀(TEAM MUGEN)だ。超激戦と言われている昨今のスーパーフォーミュラで、2021シーズンは7戦中2度のポールポジションを記録し、決勝では3勝をマーク。例年なら最終戦までもつれ込んで当たり前というチャンピオン争いでも、第6戦もてぎで王座を決めるという“強すぎる”というシーズンをみせた。

「2020年の途中から成績を残せるようになり、戦える手応えと覚悟は持てていました。残念ながら最終戦でリタイアとなり結果につなげられなかったですけど、その時から『あのまま走っていればチャンピオンは僕だった』と強く言い聞かせて、(2021シーズンを)臨むことができました。シーズン中もチームのみんながすごく助けてくれて、強い自分のままでいられたのかなと思います」

2020年の敗戦を経験したことで、より強さを増した感のあった野尻。特にマシンセッティングに対する部分は、今までとは比にならないくらいのこだわりをみせた。
シーズン中には様々なエピソードがあったのだが、なかでも特筆したいのが、ランキング首位を独走している状態で迎えた第5戦ツインリンクもてぎ(今季からモビリティリゾートもてぎに名称変更)だ。

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「もてぎに関してはあまり良い印象がなくて、低荷重のサーキットでうまくいった試しがなかったです。その理由が何なのかを、この2カ月間のインターバルでしっかりと確認できました」

そう語るのは、野尻のマシンを担当する一瀬俊浩エンジニア。前戦の第4戦スポーツランドSUGOから約2ヶ月のインターバルがあったが、時間があれば連絡を取り合い、データやセッティングの確認をしたという。

「普段ドライバーが気にしないところまで情報をいただきながら、自分なりに考えたりしました。疑問に思ったことは、すぐに一瀬俊浩エンジニアに連絡をとって話し合いをしました。それこそ、工場でセットアップをしている段階の微妙なコーナーウエイトの違いとか、その取り方の違いとか……。本当に細かいところまで指定して『ここをみてほしい』みたいな感じで、とことん突き詰めました」(野尻)

TEAM MUGENの田中洋克監督をはじめチーム関係者に聞いても、相当な量のデータ分析を行い、レースに臨んだとのこと。それが功を奏し、今まで苦手としていた夏のもてぎラウンドでポール・トゥ・ウィンを飾り、チャンピオン獲得の可能性を大きくできたことが、昨年のターニングポイントだった。

昨年の野尻は、自身が主導しレースウィークの準備を整えるという雰囲気が垣間見えたが、彼の変化について、田中監督はこのように感じていた。
「(2021年の)彼からは自信をすごく感じました。チームに入って3年目ということもあり、野尻選手から『こういう体制でやりたい』という要望をしっかりと出してきて、それに応えられるように僕が動いた感じでした。あとは、ここ数年ずっとクルマのデータ採りに時間を費やしてきました。それがきっちりと蓄積されてきて、野尻が安心して走れる環境、信頼関係も含めて作れてきたのではないのかなと思います」

こうして野尻とチーム全員の力が融合し、7戦3勝という快進撃が実現したのだろう。
今シーズンは、カーナンバー1をつけることになった野尻。今まで大きな目標として掲げてきた“チャンピオン”を獲得したことで、心境面でも変化が生まれているようだ。

野尻は公式テストでは初日2位と好調さをみせた。

「(カーナンバー1は)乗っていたら自分からは見えないので、いつもと変わらない感じですけど、コースの内外から注目されると思いますので、色んな責任感を持ってやらなきゃいけないなという思いでいます」

「今までは『チャンピオンを獲らなきゃ』という気持ちが大きくて、『チャンピオンを獲ること』『結果を残すこと』ばかりに縛られていたのかなと思いました。そういったものが自分の重荷になっていたような気がします。それが自分のパフォーマンスにつながっていればいいですけど、今までは、そうでない時も多かったと思います」

「でも、こうして1回獲ったからこそ、あまりチャンピオンというものを変に意識せず『レースに勝つ』ということだけを考えて、色んな準備ができているのかなと思います。なので、例年よりも集中できているのかなという印象です」

もちろん、2022シーズンは“2連覇”を目標に掲げている野尻だが、それを達成するためにも、さらなる完璧を公式テストから求めている姿が、印象的だった。

「2連覇をするために“ひとつひとつのレースを勝つ”ということを意識していきたいです。そういう意味では、昨年は富士ともてぎでは速さを見せられましたけど、鈴鹿があまり良くありませんでした。優勝こそはしましたけど、速さという点では物足りなくて、周りと戦えていなかったという印象です。今年は鈴鹿でのレースが増えるので、どうにか攻略したいなというところに主眼を置いて、テストを進めているとところです」

連覇達成を確実なものにするために、昨年うまくいっていなかったところを分析し、シーズン前から対策に乗り出している野尻とTEAM MUGEN。チャンピオンとして追われる立場ということを意識せず、新たな目標に立ち向かっていく“挑戦者”という気持ちで、今シーズンに臨もうとしているのが、そのコメントからも伺えた。

「正直、年が変わってしまえば、カーナンバー1とかは関係なくて、スタートは横並びの状態だと思っています。でも、カーナンバー1をつけているからこそ、チャンピオンを獲る厳しさだったり、大変さを理解しているつもりです。そういったものを今年は良い方向に生かしていければいいのかなと思います」

昨年のシリーズ独走劇に満足することなく、さらに上のレベルを求めている野尻智紀。2022シーズンも、手強いライバルが揃っているが、その中でどのような戦いぶりを披露してくれるのか。注目の1年が、また始まろうとしている。

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文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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