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【スーパーバイク世界選手権 最終戦 マンダリカ:プレビュー】ラズガットリオグルの戴冠か、それともレイの大逆転か?
モータースポーツコラム by 辻野 ヒロシラズガットリオグルの戴冠か、それともレイの大逆転か?
「FIMスーパーバイク世界選手権」の2021年シーズンはいよいよ最終戦。コロナ禍の中でフライアウェイ戦を開催していますが、前戦の南米アルゼンチンから東南アジアのインドネシアに移動し、今季ラストの戦いを迎えます。
インドネシアに新設のマンダリカサーキットで11月19日(金)〜21日(日)に開催されるスーパーバイク世界選手権のレースの模様はぜひJ SPORTSでお楽しみください。
さて、まずは今回初開催となるマンダリカサーキットについてご紹介しましょう。同サーキットはインドネシアのバリ島の隣、ロンボク島のビーチリゾートに新設された1周およそ4.3kmのコースです。ターンは全部で17ありますが、シンプルなストップアンドゴーサーキットといった印象で、海抜も低いということでアップダウンが少ないフラットなコースと言えます。
来年は2月にMotoGP公式テスト、そしてインドネシアGPが15年ぶりにマンダリカサーキットで開催されることになっており、世界中のバイクレースファンの目が「FIMスーパーバイク世界選手権」最終戦に注がれることになります。
さて、注目のチャンピオン争いはランキング首位のトプラク・ラズガットリオグル(ヤマハ)=531点、ランキング2位のジョナサン・レイ(カワサキ)=501点の2人に絞られました。その差は1レース分以上の30点差ということで、前戦アルゼンチンでレース1、スーパーポールレースで連勝したラズガットリオグルがレイとの差を広げる形になりました。
そしてやってくる最終戦。誰もレースをしたことがない新設コースでの戦いは未知数な部分が多いですが、初開催のコースを得意としているのはやはりラズガットリオグルです。今年チェコのモストサーキットで開催されたレースでラズガットリオグルは優勝していますし、昨年はスーパーバイク世界選手権を初めて開催したポルトガルのエストリルでポールポジションから優勝。そういうデータからもラズガットリオグルは大本命でしょう。
昨年と今年はコロナ禍でスケジュールやコースが頻繁に変更され、モストサーキット(チェコ)やナバラサーキット(スペイン)といった世界選手権ではあまり使われないコースもカレンダーに登場し、いわゆる経験豊富なベテランたちのアドバンテージが無くなり、ピュアな速さを持ったライダーが本領を発揮できる流れがあったと思います。
世界選手権のトップクラスのライダーであれば、どのコースでも優勝争いができて当たり前の能力を持っているはずなんですが、そんな中でもラズガットリオグルは適応力が飛び抜けていたと言えるのではないでしょうか。
もちろん、速さとスキルという意味ではジョナサン・レイ(カワサキ)も負けてはいません。今季は11勝をマークしていますし、ポールポジション獲得は16回と速さは全く衰えておらず、むしろシーズン前半は完全にレイのペースで進んでいたと言えます。前半の数戦を見ていればレイが7度目の王者をあっさり決めてしまっても何ら不思議ではない状況でしたね。
しかし、シーズン途中からのヤマハが躍進し、トプラク・ラズガットリオグル(ヤマハ)がレースの巧さを身につけてからは、レイの神業的なバトルでの強さが徐々に通じなくなり、チャンピオン争いが白熱。こんなにスリリングなチャンピオン争いが展開されようとは、シーズン開幕当初は想像もできませんでした。
条件的にはトプラク・ラズガットリオグル(ヤマハ)が30点リードということで有利な状況ではありますが、接触や転倒によるリタイア、マシントラブルなどが起こってしまえば、あっという間にレイにチャンスが出てきます。3つの全てのレースが一つも見逃せない週末になりそうですね。
さて、チャンピオン争いに加えて今季も最終戦ということで、来季に向けた動きも含めて注目したいレースになります。すでに来季のシートはほとんどが決定済みとなっているのですが、移籍するライダーも多数います。
ランキング3位のスコット・レディング(ドゥカティ)は来季からBMWに移籍。初コースでBMW M1000RRがどんなパフォーマンスを見せるかはBMWが来季以降チャンピオン争いに加われるかどうかの一つの参考材料になるでしょう。
また、レディングが抜けたスロットにはアルバロ・バウティスタ(ホンダ)が移籍し、ドゥカティワークスライダーに復帰します。今季3勝をマークしているマイケル・ルーベン・リナルディ(ドゥカティ)のポテンシャルに磨きがかかりそうで、ドゥカティの躍進は来季の注目ポイントでしょう。
さらにチャンピオンを争うヤマハは来季もラズガットリオグルと今季ルーキーのアンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)のコンビが継続。またサテライトチームもギャレット・ガーロフ(ヤマハ)、野左根航汰(ヤマハ)で同じラインナップ。
今季、スーパーバイク世界選手権に参戦した野左根は怪我も経験しつつ、全日本ロードレース時代には考えられなかったレース数のシーズンを戦ってきました。学びのシーズンだった今季ですが、一桁台の順位でフィニッシュしたのは開幕戦アラゴンのスーパーポールレースの9位が僅か1回あるのみ。誰もが初めて走ることになるマンダリカサーキットで再びシングルフィニッシュできれば、自信にもなりますし、ファンの来季への期待がさらに高まるのではないでしょうか。野左根の走りにも注目しましょう!
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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