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モーター スポーツ コラム 2021年11月4日

ようやく噛み合った“勝利への歯車”

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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第6戦でついに今シーズン初勝利を上げたNo.8 ARTA NSX-GT。

九州・オートポリスを舞台に2年ぶりに開催されたスーパーGT。新型コロナウイルス感染防止対策が徹底され、今回も様々な制限がある中でのレースとなったが、サーキットにはおよそ1万人の観客が訪れ、熱気に包まれた週末となった。

今回もGT500クラスは予選から接戦の展開となったが、決勝では開幕戦の時から本命視されてきたチームがついに“今季1勝目”を飾った。No.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)だ。

昨年は3度のポールポジションを獲得する速さを見せながらも、決勝で逆転されるケースが多く、第7戦もてぎでの1勝のみとなった。それでも“速さ”という点では他を圧倒する勢いがあり、今季も開幕前からライバルたちが警戒していた。

しかし、いざシーズンが開幕してみると第1戦岡山では予選14位と大苦戦。決勝では7位まで挽回したが、満足のいかない週末となった。

そこでの反省を生かし、第2戦では予選2番手を獲得。決勝レースもレース後半にトップを奪うが、残り20周を切ったところの黄旗区間でGT300車両を追い越してしまい、痛恨のドライブスルーペナルティ。最終的に8位で終わり、最終スティントを担当した福住は悔し涙を流した。

第2戦では一時トップを快走するもミスが重なり8位に沈んでしまった。

その後も、リベンジを果たすべくレースに挑むも、苦戦の日々は続く。特に第3戦鈴鹿では決勝でのペースで苦しみ、終盤に大きく後退。レース後は野尻がエンジニアたちと、いつになく険しい表情で話し込んでいた。

第5戦SUGOでは今シーズン初ポールポジションを獲得し、決勝でも前半から独走状態に持ち込んだが、途中のピットストップで作業違反がありドライブスルーペナルティを受けることに。それを皮切りに、負の連鎖が続いていき、トップから2周遅れの10位となった。

勝てるチャンスがあったレースを、思わぬ形で落としてしまい、レース後のARTAピットはどんよりとした空気に包まれていた。しかし、ここで諦めてはいけないと前を向こうとしていたのが、チームのエースである野尻だった。

「何をしたら、このチームが本当に良くなるのか、僕だけの考え方だけじゃなくて、チームに合ったやり方もある。そういったところも考えながら良くしていければ思います。僕自身も乗るだけじゃないところでもっともっと頑張っていきたいなと思います」(野尻)

「今回の失敗というか、問題に対して、みんなが自信を失わないようにしないといけません。次もレースがやってくるので、そこできちんとしたパフォーマンスを出せるように、努力していかないといけないと思っています」(福住)

今シーズンの8号車はこれでもかというほどに悔しい思いを経験してきたが、ドライバーを含め、チーム全員が諦めることなく挑み続けた。

迎えた第6戦のオートポリス。ここでも土曜朝の公式練習で持ち込んできたセッティングが合わず、セッション中は常に最下位に位置するなど大苦戦していた。予選ではなんとか修正し4番グリッドを手にしたが、ドライバー2人の表情は険しいままだった。

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「決勝に向けて直さなければいけないところがたくさんあります。ライバルの状況がどうあれ、チャンスが来たときにしっかりと相手を攻略できるだけのパフォーマンスにしないと思っているで、楽観視せずにやれることはやろうと思います」(野尻)

今シーズンはちょっとした油断がきっかけとなり、幾度となく流れを失ってきた8号車。予選後のミーティングはいつも以上に念入りに行い、決勝レースでも最終ラップまで気を抜かなかった。

「気持ちだけは切らしてはいけないと思っていたので、あえてチームにたくさん情報をくれるようにと要望を伝えていました。(後続とのギャップが大きくなって)楽な状況ではありましたけど、その中で厳しさを出していかないといけないと思って、走り続けました」(野尻)

「後半はピットで見ている側でしたけど、ギャップがあるとはいえ、何が起こるか分からないのが“レース”です。ずっと不安な状態もありましたが、野尻選手は今ノリにノッているので、そんな心配はなかったです」(福住選手)

そうして、ひとつひとつを丁寧に積み重ねていき、喉から手が出るほど欲しかった“最高の結果”を、九州の地で掴み取った野尻と福住。パルクフェルメでは、苦労をともにしてきたメカニックたちと喜んでいたのが印象的だったのだが、2人は早くも“次”を見据えていた。

福住にとっては、地元・九州で掴んだ嬉しい今シーズン初勝利となった

「今回、決勝レースのパフォーマンスが非常によかったので、次のレースもまた優勝で終えられるように全力を尽くすことになります。その反面、今回は出だしでちょっとつまずいたところがあったので、振り返るべきところはたくさんあります。そのあたりをしっかりと解析し、またそれをエンジニアさん任せにするというわけではなく、私たちドライバーも一緒になってチームのポテンシャルをどんどん引き上げるために、次のもてぎ大会までしっかりと時間を使って、準備していきたいと思います」(野尻)

「僕自身もまだ満足できないところもあります。クルマの方でもまだまだできるところはいっぱいあると思うし、野尻さんと同様に、ここからチームの皆さんだけに任せるのではなく、僕たちもチームのガレージへ行ったりして、次戦に向けてもっと高いパフォーマンスを出せるようにしたいです。次戦も優勝目指してがんばりたいと思います」(福住)

思ったより時間はかかってしまったが、ようやく歯車が噛み合ってきた8号車。条件としてはかなり厳しいが、まだ逆転チャンピオンの可能性は残っている。そこに向かって、まずは今週末のもてぎ大会でも力強い走りをみせたいところだろう。

そういう意味でも、次回の第7戦もてぎ大会は、彼らの真価に注目が集まる1戦となりそうだ。

文:吉田 知弘

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吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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