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モーター スポーツ コラム 2021年10月27日

2021スーパーフォーミュラ 第6戦レビュー| 先輩の背中を追い続け、自らでたぐり寄せた初勝利

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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初勝利を上げた大津弘樹とシリーズチャンピオンを決めた野尻智紀

ツインリンクもてぎで行われた2021全日本スーパーフォーミュラ選手権の第6戦。今回の注目どころは、初のシリーズチャンピオンに王手をかけた野尻智紀(TEAM MUGEN)だった。

週末は雨がらみの難しいコンディションで、特に予選ではひとつ選択を間違えると、後方グリッドに沈んでしまう可能性もあったのだが、野尻とチームはリスクをしっかりとマネジメントしていくタイヤ選択を行い、3番グリッドを獲得。決勝レースでも、着実な走りで5位に入り、最終戦を待たずにシリーズチャンピオンを決めた。

レース後は初戴冠となった野尻に注目が集まり、メディアの取材も殺到していたが、このレースではもう1人の主役がいる。大津弘樹(Red Bull MUGEN Team Goh)だ。

今シーズンからフル参戦を開始し、第2戦以降はコンスタントにポイントを獲得していた大津。だが、目標としている優勝や表彰台といったポジションには手が届かない状況が続いていた。

そんな中で迎えた第6戦もてぎ。ひとつのターニングポイントを切り抜けたことで、彼に流れが舞い込んでいく。

予選Q1Aグループを3番手で通過したものの、続くQ2Aグループ開始と同時に雨が降り始め、なかにはウエットタイヤでコースインしたライバルたちが次々と好タイムを更新していった。一方で大津と15号車陣営はスリックタイヤを選択した。

スリックタイヤを選択した賭けが見事にはまりPPを獲得

「Q2では尋常じゃなく滑っていて『スリックで行くのは無理!』と言ったんですけど、チームは『ステイアウト!』と言ったので、そのままいきました。僕と同じくスリックを履いていた福住選手が、コースオフして、前が開けたのも大きかったですし、彼よりは僕の方がグリップしている感じがあったので、ミスのないように攻めていきました」

与えられた状況でも、タイムアタックをやりきり、4番手タイムでQ3進出。この1周が“ターニングポイント”だった。Q2での状況を踏まえ、Q3では各車がウエットタイヤを選ぶ中、大津のみがスリックタイヤでアタック。この選択が見事に的中し、自身初のポールポジションを勝ち取った。

15号車陣営には、SUPER GTでパートナーを組む伊沢拓也がアドバイザーを務めているほか、錚々たるメンバーが脇を固めている。だが、最終的にQ3をスリックタイヤでいくと決めたのは、他でもない大津自身だった。

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「Q3になって、みんながウエットタイヤを選んだ中、僕だけスリックで走り始めましたけど、Q2と比べれば、グリップしているなと思いましたし、雨量もQ2ほどではなさそうだったので、『これはいけるな』と思って、そのままステイアウトの判断をしました」

「あそこでスリックタイヤを選択できると思ったのは僕だけ。失うものがないから、そういう判断ができたという見方もありますけど、スリックタイヤでもグリップするということを感じられたのは、今日の予選の流れを考えると大きかったです。この結果は自信になりましたね」

予選後、アドバイザーの伊沢拓也と喜びを分かち合った大津。

この経験が、早速翌日の決勝でも活きる。朝からの雨の影響で路面はウエットコンディションだったが、スタート時点で雨は上がっている状態。さらに途中から太陽も顔を出し、急速に路面は乾いていった。

そんな中、スリックタイヤに交換したばかりのサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)がスピンを喫し、安全確保のためセーフティカーが導入されることに。ここで、トップを走る大津は真っ先にピットインを決断した。普通ならトップを走っていると、ピットストップのタイミング等で“先手”を打ちにくいのだが、この時の大津には予選での経験が、決断を後押しする材料となっていた。

「普通、先頭を走っていると後ろの人が動いたら動くと言うのがセオリーですけど、僕の中では予選Q2のコンディションでスリックを走った経験がありました。その時に比べたら、全然乾いている状況だったので、良いタイミングでピットに入れました」

スリックタイヤに交換して以降もトップを死守した大津。後方ではアクシデントが絶えず、セーフティカーが合計3度も導入される大波乱の展開となったが、大津は全く動じない走りで優勝を飾った。

「後ろから阪口晴南選手が来ていてペースも良かったし、気を抜いたら絶対に抜かれると思っていました。最後まで気を張り詰めて走っていました。あとはエンジニアとのやりとりにプラスアルファして、伊沢さんも欲しい情報をたくさんくれました。そういった周りの皆さんのサポートが大きかったです」

「本当に優勝を意識したのは最終ラップの最終コーナーを立ち上がった時ですね。ピットウォールにメカニックが待ってくれているのが見えて、その時に“勝ったんだ”と実感しました」

今ではスーパーフォーミュラではお馴染みとなったレッドブルカラーの15号車。かつてピエール・ガスリーが活躍したことを覚えている人も多いと思うが、実は15号車が表彰台に立つのは、ガスリーが2017年の第6戦SUGOで2位に入って以来、5年ぶりのこと。それ以降は苦戦を強いられ、2019年にはシーズン中に3人もドライバーが変わるなど、“バタバタ”することが多かった1台だ。

今シーズンも隣で16号車の野尻が快進撃を見せる中、思うように結果が残せずプレッシャーを感じていた15号車陣営。マシンのパフォーマンス向上も、今回勝った要因のひとつではあるが、何よりドライバーである大津自身がチャンスを自ら引き寄せ、掴み取った勝利だと、レース後は彼の成長と活躍を関係者たちが賞賛していた。

これまでは、主役に立つ機会が比較的少なかった大津。スーパーフォーミュラも2度ルーキーテストに参加し、速さをみせたのだが、レギュラードライバーに選出されず悔しい思いばかりしてきた。

その中でも諦めずにアプローチを続け、昨年はTCS NAKAJIMA RACINGのリザーブドライバーという形で全戦現場に帯同していた大津。そうして地道に重ねて来た努力が、ついに実ったレースだった。

文:吉田 知弘

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吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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