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モーター スポーツ コラム 2021年10月21日

“トライ”し続けて掴んだ初勝利……スバルBRZ、初タイトルに向け勝負の終盤戦へ

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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第5戦でファン待望の優勝を遂げたNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT。

2021シーズンも残り3戦となったSUPER GT。GT500クラスのチャンピオン争いが佳境を迎えつつあるが、同時にGT300クラスの首位争いも盛り上がりを見せている。第5戦SUGOを終えて、トップ5台が10ポイント以内にひしめく接戦となっている。

その中でランキング首位に立ち、今勢いに乗っているのがNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)だ。9月に行われた第5戦SUGOで、実に3年ぶりとなる優勝を果たしたのだが、そこに至るまでの今季4戦は、まさに“トライ&エラー”の連続だった。

毎年、GT300クラスの有力候補として注目を集める61号車だが、ここ数年はトラブルに見舞われることが多く、2018年の第6戦SUGOを最後に勝利から遠ざかっている状態だった。それでも、課題点をひとつずつ改善していき、2020年はトップ争いに絡む活躍も各レースでみせたが、展開に恵まれないことが多く、シーズン未勝利。ドライバーズランキングは5位で終わった。

そんな中で迎えた今シーズン。61号車は市販のBRZがフルモデルチェンジされるのに合わせて、新型マシンを開発。開幕前の公式テストでは精力的に走り込んでいる姿があった。

その効果があってか、開幕戦の岡山では朝の公式練習でトップタイムを記録し、開幕戦勝利への期待が高まった。ところが予選ではまさかのQ1敗退となり、決勝で挽回を試みるも15位。新型BRZにとっては“ほろ苦い”デビューとなったが、そこから悪かったポイントを洗い出し、5月の第2戦富士では見事ポールポジションを勝ち取り、決勝では2位表彰台を獲得した。

第2戦でPP獲得し、決勝2位。予選では速さをみせるも決勝での結果が伴わない苦しい展開が続いた。

それでも、井口と山内をはじめ61号車のメンバーは満足することなく優勝するために決勝で力強いマシンと、それに合わせたタイヤ選択を試みるが、今季3戦目となった7月の第4戦もてぎでは上手く機能せず。予選では7番手につけるも、決勝ではポジションを落とし11位に終わった。

「今年は予選一発の速さをしっかりと出すためのタイヤ選択をしていますが、それが決勝では難しい方向に動いてしまって、ペースをなかなか上げられない状態が続いていました。その中で色々なトライをして決勝でも力強く戦えるようなことも狙って、7月のもてぎ大会へ臨んだのですが……結果は散々でした。なので、鈴鹿では、もう一度僕たちがベストだったと思う方向に戻して、そこから決勝をどう戦うか……それを考えていかなければいけないなと思っています」

もてぎ大会での敗戦をそう分析していた井口。8月に延期となった第3戦鈴鹿では、再び速さを発揮し予選ではポールポジションを獲得するも、決勝では苦戦を強いられ、ライバルに次々と抜かれるレース展開で10位フィニッシュとなった。

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迎えた第5戦SUGO。ここでも61号車は予選でライバルを圧倒するパフォーマンスをみせ、今季3度目となるポールポジションを獲得した。普通ならば予選トップを獲れたということでも喜ばしいことなのだが、今年の彼らにとって、この結果はあくまで通過点。井口、山内ともに笑顔は少なめで、早くも決勝を見据えている様子だった。

それでも、彼らには今までとは違う“ひとつの手応え”があった。61号車は、SUGO大会の前にオートポリスでタイヤテストを実施していた。当日は雨や霧に悩まされ、思うようなテストプログラムを進めることはできなかったのだが、その中でもマシンのセッティングなどで様々な試みを行い、そこで収穫もいくつかあったという。

「そこで得たものを、実戦でトライしていくだけ」と語っていた井口と山内だが、決勝では見違えるような安定したパフォーマンスを披露。途中セーフティカー導入の影響で、ライバルに接近される展開にもなったが、そこで順位を落とすのではなく、逆にライバルを引き離す走りを見せ、待望の今季初勝利を手にした。

3年ぶりの勝利に井口と山内は喜びを爆発させた。

ここまでマシンに加え、ダンロップと協力してタイヤの部分でも“トライ&エラー”を繰り返してきた61号車。その分、結果が出ずに苦しい時期も続いたが、諦めずにトライをし続けたことが、この1章につながった。

「今回の優勝でスバルもそうですし、チームもドライバーもタイヤメーカーさんも少しは気持ちが楽になったと思います。ようやく新型BRZの強さを見せられたので、スタートラインに立てたなというホッとした気持ちが強いです」(井口)

「本当にホッとしています。チームがすごく頑張ってくれたおかげで、決勝も強いマシンで走れたのが、今回の一番良かった点かなと思います」(山内)

SUGOでは歓喜に包まれた61号車のピットだが、彼らの戦いはこれで終わりではない。長年目標にしてきた“シリーズチャンピオン”が、すぐ目の前に迫っている。

今週末の舞台となるオートポリスは以前からスバルBRZが得意としているコース。そして何より、長年チームをけん引するひとりである井口の地元レースでもある。しかし、サクセスウェイトは上限である100kgに達しており、そう簡単にはいかない1戦となるだろう。

だが、今の61号車陣営には、結果が出なくても粘り強く戦ってきたという経験と底力がある。それが今回も噛み合えば……シリーズチャンピオンをさらに手繰り寄せることができるかもしれない。

文:吉田 知弘

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吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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