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ジョナサン・レイとスコット・レディング
世界のオートバイメーカーのフラッグシップマシンが争う「FIMスーパーバイク世界選手権」は7戦を終了し、第8戦がフランスのマニクールサーキットで9月3日(金)〜5日(日)に開催されます。
チェコのモストサーキット、スペインのナバラサーキットと2戦連続で国内レースファンには聞き慣れないサーキットでレースを実施してきたわけですが、次戦はフランスのマニクールと聞いて何だかホッとしますね。マニクールはフランス中部にある1周約4.4kmのサーキットで、「FIMスーパーバイク世界選手権」はフランスラウンドを長年ここで開催しています。
シーズン終盤のレースとして設定されることが多いのですが、今年はシーズン中盤での開催。毎年、名勝負や意外なウイナーが誕生するドラマチックなレースが楽しめるコースとしてお馴染みです。
さて、そんなマニクールはなんと選手権をリードするライダー2人、ジョナサン・レイ(カワサキ)とトプラク・ラズガットリオグル(ヤマハ)が311点の同ポイントで並んだ状態で迎えることになりました。これまでもチャズ・デイビス(ドゥカティ)やアルバロ・バウティスタ(ホンダ/当時ドゥカティ)らがシーズン中盤にレイを苦しめたことがありましたが、互角のマッチレースを展開しながらシーズン後半戦を迎えるという展開はなかなかエキサイティングです。
ジョナサン・レイ(カワサキ)はモスト、ナバラと2ラウンド連続で優勝なし。モストのレース1でのリタイアが響き、トプラク・ラズガットリオグル(ヤマハ)との間にあった差は一気に無くなってきました。こういう未知のコースこそ、6年連続の王者であるレイが強さを見せるのではと予想していましたが、まさかの敗戦。モスト、ナバラではトプラク・ラズガットリオグル(ヤマハ)とスコット・レディング(ドゥカティ)が優勝を分け合いました。
これでランキング首位はトプラク・ラズガットリオグル(ヤマハ)=311点/6勝、ジョナサン・レイ(カワサキ)=311点/8勝となり、ランキング3位にスコット・レディング(ドゥカティ)=273点/5勝と続いています。ランキング4位以降はすでに100点以上の差がついており、チャンピオン争いはこの3人に絞られたと言っても過言ではありません。
マニクールでのレースを最も楽しみにしているのはラズガットリオグルでしょう。なぜなら、2019年に当時カワサキのサテライトチームから参戦していたラズガットリオグルが「FIMスーパーバイク世界選手権」における初優勝を飾ったサーキットだからです。
ラズガットリオグルはこの年、2年目ながら表彰台を幾度となく獲得。カワサキワークスのレオン・ハスラムを上回りながらも鈴鹿8耐では決勝に出番はなく、カワサキからの離脱が噂されていた時期でした。自身のカワサキへの置き土産とも取れるマニクールの初優勝。さらにはレース1、スーパーポールレースと連勝を飾りました。その鈴鹿8耐でチームメイトだったレイと互角の勝負を展開する今季、ラズガットリオグルにとってはビッグチャンス到来といった感じですね。
ただ、レイにとってもマニクールは得意コースです。昨年のレース1、スーパーポールレースの2勝を含む8勝をマークしており、過去の実績はナンバーワン。新進気鋭のラズガットリオグルvsベテランのレイ、その戦いの大きな鍵となるレースになるでしょう。
そして、好調なのがスコット・レディング(ドゥカティ)。アッセンから3連勝を含む7レース連続の表彰台を獲得しており、トップの2人に38点差と迫っています。そんなレディングですが、来季はBMWへの移籍を発表しました。英国スーパーバイク選手権で王者になり、昨年はスーパーバイク世界選手権1年目でランキング2位を獲得しました。ドゥカティは軸を失うことになりますが、今季5勝をマークして好調なレディングに何としてでもチャンピオンを取ってもらいたいところでしょう。ちなみにレディングは昨年のマニクールではレース2で優勝しています。三つ巴の戦いになりそうですね。
そんな派手なチャンピオン争いの3人の影に隠れてはいますが、ここ最近はアンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)がコンスタントにトップ5フィニッシュを続けてランキング5位に浮上してきたりと目が離せないパフォーマンスを見せはじめていますし、同じヤマハでは野左根航汰(ヤマハ)が前戦のレース1では11位と通常レースでは自己ベストの結果をマーク。あわせて楽しみたい要素も増えてきました。
最近はアレックス・ロウズ(カワサキ)もルーキーのアンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)に押され気味でそういう点からもカワサキはちょっと苦戦している状況が見て取れます。カワサキ勢が盛り返すのか、それともライバルたちが凌駕するのか、6年続いた王座の山が動くかどうか、まさに天下分け目のマニクールラウンドです。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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