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モーター スポーツ コラム 2021年8月27日

2021 SUPER GT第3戦レビュー|真夏の鈴鹿戦で“日産のエースの底力”と“勢力図の変化”

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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鈴鹿3連勝を果たしたNo.23 MOTUL AUTECH GT-R。

当初は5月末に開催される予定だった2021年のSUPER GT第3戦鈴鹿大会だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で8月に延期。大会名称としては第3戦だが、シリーズ4戦目として開催された。

しかし、7月中旬からの新型コロナウイルス感染再拡大の一途を辿っており、GTAがパドック入場者に義務づけている事前のPCR検査でも、今までは1〜2人の陽性が確認されたが、今回は13人が陽性。ドライバーからも陽性者が出て急きょ代役ドライバーに登録変更を行うなど、慌ただしい週末の出だしとなった。

この事態に、GTAの坂東正明代表も、リモートで行われた金曜日のドライバーズブリーフィング終了後に、ドライバーやチーム、関係者に対して、改めて注意喚起を促すメッセージを発し、また緊張感が高まった週末となった。

そんな中で始まったシーズン前半を締めくくる1戦。GT500クラスで躍進したのが、日産勢だった。今シーズンは開幕戦からライバルのホンダ勢、トヨタ勢に先行されるレースが続いていたが、「鈴鹿で大量得点を狙っている」という陣営の思惑は、早い段階から聞こえてきていた。

実際に、2020年モデルの日産GT-R NISMO GT500は、鈴鹿サーキットのような中高速コーナーが多いレイアウトを得意とする傾向があり、昨年も同地で開催された第3戦でNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rが優勝。第6戦ではレース展開も味方につけた23号車が大逆転で優勝し、No.12 カルソニックIMPUL GT-Rが2位に入る活躍を見せた。

鈴鹿ではライバルを凌ぐ速さをみせる日産勢。それは今年も同じだった。

土曜日の予選では、23号車が3番手、No.24 リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rが4番手につけると、残る2台のGT-RもQ2へ進出を果たした。

そして、決勝で輝きある走りをみせたのが、23号車のエースである松田次生だった。前半は相方のロニー・クインタレッリが安定した走りをみせ、2番手でスティントを終了したが、ピットのタイミングが良くなく、順位を落としてしまう。

「4番手に落ちたとわかったときはすごく悔しい思いをしましたけど、その後の次生選手の走りが素晴らしかった」と、クインタレッリも語っている通り、今回の相方の追い上げは鬼気迫るものがあった。

コース幅が多くGT300車両が絡んでいても追い抜きが難しいと言われている鈴鹿で、次々と前のマシンを攻略し、残り11周でついにトップに浮上。その後も松田はペースを緩めずに走り続け、最終的に11秒ものリードを築いて、今季初のトップチェッカーを受けた。

レース後、マシンを降りるとクインタレッリとともに喜びを爆発させ、パルクフェルメでのインタビューでは一瞬感極まるシーンもあった松田。特に今シーズンはスタートダッシュを目論んでいた序盤戦でアクシデントやトラブルに見舞われリタイアが続いていた。その分、この鈴鹿では松田のみならず、チーム全員の勝利への想いがあった。それを日産のエースは力に変えて、見事結果につなげたのだ。

松田次生はレース後喜びを爆発させた。

「我ながら、今日の自分は“ゾーン”に入っていたように思います。チームのみんなの『勝ちたい』という気持ちが僕の走りにつながったと思うので、本当にみんなに感謝しています。また今回の優勝は僕にとってGT500での通算23勝目になりました。『23勝目を挙げるなら、地元の鈴鹿サーキットで、23号車で……』という希望は持っていたので、それが実現できて嬉しいです」(松田)

さらに日産勢の快進撃は続き、2位にNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R、3位に24号車が入り、同陣営としては7年ぶりとなるGT500表彰台独占を果たした。ここ最近はポジティブな話題が少なかっただけに、日産陣営の関係者、そして応援するファンにとっては、ようやく“待ちわびた吉報”が舞い込んだ週末だった。

日産ファンが7年間待ちに待った表彰台独占。

これで2021年のシーズン前半戦が終了したのだが、特に夏場に入って注目を集めているのが“勢力図の変化”だ。日産勢の復活劇はもちろんのこと、特に注目したいのがタイヤメーカー。これまではブリヂストンタイヤを装着するチームが安定したパフォーマンスを発揮し、上位に名を連ねるという傾向があったが、ここ最近の結果をみると、ヨコハマタイヤを履くNo.19 WedsSport ADVAN GR Supraが第2戦富士でポールポジションを獲得し、第4戦もてぎでも優勝争い加わる走りをみせた。同じくヨコハマタイヤで長年戦う24号車も、タイヤの進化に関しては自信をみせており、「鈴鹿にくれば19号車と同じような走りができる自信はあった」とドライバーたちも語っていた。

同じく、ここ数戦で上位争いに加わりつつあるのがダンロップタイヤ勢。今回もNo.64 Modulo NSX-GTがポールポジションを獲得し、No.16 RedBull MOTUL MUGEN NSX-GTが2番手につけた。決勝では結果を残すことはできなかったが、今季からダンロップ装着マシンが2台になった効果が徐々に発揮され始めているのは確かなようだ。

予選2位、決勝では一時トップを快走するなど速さをみせたNo.16 RedBull MOTUL MUGEN NSX-GT。

今までは、どこか“ブリヂストン優勢”という雰囲気があったGT500クラスだが、ここにきてミシュランはもちろんのこと、ヨコハマタイヤ、ダンロップも勢いをつけつつあり、確実に流れが変わり始めているように思える。

9月から始まる後半戦は、タイヤメーカーたちの戦いも、勝敗を分ける大きな鍵となっていきそうだ。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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