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第3戦は、昨年に引き続き真夏の鈴鹿決戦となる。
当初の予定では5月30日に開催されていた、鈴鹿サーキットでのSUPER GT第3戦が8月22日に延期されたことで、奇しくも“真夏の鈴鹿”が昨年に続き、復活することとなった。コンディション的に参加する側も、観戦する側も過酷ということで、日程を改めたのだろうが、何か復活を歓迎している趣もないわけではない。本来ならばFIA-GT3を主役とする、「鈴鹿10H」が開催されるはずのレースウィークだったから、もとよりサーキットに赴いている予定だった、という人も少なくないのではないだろうか。
いずれにせよシリーズは、これで実質4戦目となるため、前半戦をこれで終えることとなる。当然のことながら、ランキング上位のチームはサクセスウエイトをしっかり積んで我慢のレースを強いられる一方で、下位のチームは逆襲を果たすに絶好の機会となりやすい。とはいえ、そんなセオリーどおりの展開に果たしてなるのかどうか?
2020年は2戦2勝だったMOTUL AUTECH GT-Rに期待がかかる
昨シーズン第3戦では23号車が「テール・トゥ・ウィン」という奇跡を起こした。
前回のツインリンクもてぎでは、何より山本尚貴/牧野任祐組の#1 STANLEY NSX-GTと、国本雄資/宮田莉朋組の#19 WedsSport ADVAN GR Supraによる、熾烈なトップ争いが大いにサーキットを沸かせていた。この時のサクセスウエイトは、それぞれ22kgと10kgとあって、得るべくして得た結果と言えるだろう。
一方、#14 ENEOS X PRIME GR Supraを駆る、大嶋和也/山下健太組はノーポイントに終わったものの、ランキングのトップはキープ。とはいえ、山本が3ポイント差にまで肉薄してきた。そう考えると、大嶋と山下は1ポイントでも獲りたかっただろうが、予選も13番手とあって、本当に手も足も出なかった感は否めず。ランキング2位だった#17 Astemo NSX-GTを駆る、塚越広大/ベルトラン・バゲット組も予選14番手で、やはりノーポイントに終わっており、もてぎはウエイト感度の高いサーキットだと改めて感じさせた。
今回の舞台、鈴鹿はどうだろうか?もてぎほどフルブレーキングを要するポイントは少なく、シケインとヘアピンぐらい。むしろリズミカルに駆け抜けるコーナーが多いため、ウエイト感度は低いと言われ、実際に昨年の第3戦では60kg積んだ、#36 au TOM’S GR Supra(関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ組)が3位に入っている。
ただ、軽いに越したことはない。このレースで優勝を飾ったのは、松田次生/ロニー・クインタレッリ組の#23 MOTUL AUTECH GT-R。ウエイトはわずか4kgだった。ところが、この年、鈴鹿では2戦行われ、第6戦では松田/クインタレッリ組が50kg積んでなお、2勝目を挙げている。これは後にも語り継がれよう、「テール・トゥ・ウィン」があったため。
予選で松田がコースアウトし、赤旗中断の原因を作ったことから全タイム抹消となり、最後尾からのスタートを強いられるも、決勝ではアクシデントの発生から素早くマシンをピットに呼び寄せると、直後にセーフティカー(SC)がコースイン。ピットを離れた時には、トップに立っていたという!近頃、こういったパターンで勝利をつかむことも多くなっているので、いい意味で展開が読めなくなっている。前回のもてぎ、GT300クラスも後述するが、まさにそんな感じで優勝が飾られている。
さて、そんな鈴鹿との相性がいい、#23 MOTUL AUTECH GT-Rであるが、現在背負っているウエイトはわずか4kgと、まるで昨年の第3戦を思わせるような状況となっている。もし「二度あることは三度ある」のであれば、今度こそ……の期待がかかる。
ホンダ勢では、大湯都史樹/笹原右京組の#16 Red bull MOTUL MUGEN NSX-GTが、前回のもてぎで初入賞。4位につけた勢いは、まだ継続されていそう。まだウエイトも16kgでもあるし、何よりこのふたりの爆発力には定評のあるところ。さらなる大暴れに期待できそうだ。
そしてトヨタ勢では、ヘイキ・コバライネン/中山雄一組の#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra、立川祐路/石浦宏明組の#38 ZENT CERUMO GR Supraがそろそろ来ないと、もう後がない。それぞれウエイトは26kg、16kgとあって、一気に大量得点が望まれる。
GT-RとGR Supraがカギを握るGT300クラス
ランキングトップを走る11号車GAINER TANAX GT-R。
GT300クラスでは前回、加藤寛規/阪口良平組の#2 muta Racing Lotus MCが、劇的な勝利を飾っている。FCY(フルコースイエロー)導入の直前に、ピットに入ったことでトップに浮上。最後は#11 GAINER TANAX GT-Rの平中克幸/安田裕信組、#52 埼玉トヨペットGB GR Supra GTの吉田広樹/川合孝汰組に追い回されるも、最後までガードを固め続けたのだ。
本来、加藤/阪口組のマザーシャシーはもてぎとは相性がいたって悪く、苦戦を承知の上で臨んだ一戦ではあった。ただし、アクシデントが発生したからFCYは導入されたのだが、レースは折り返しをはるかに過ぎており、その段階でピットに入っていない車両は、他には存在しなかった。これは加藤がロングランに絶対の自信を持つこと、さらに車両の圧倒的な好燃費があってこそ、流れを手繰り寄せられたのだ。阪口にとって、これがSUPER GTでの初優勝。本来は鈴鹿を狙い目としていたはずだが、63kgにまで増えたサクセスウエイトがどう影響を及ぼすか気になるところだ。
レースが普通に進んでいたならば、おそらく勝っていたであろう#11 GAINER TANAX GT-Rは、それでも2位につけたことでランキングではトップタイに。一方、第2戦までトップだった#65 LEON PYRAMID AMGの蒲生尚弥/菅波冬悟組は、得意なはずだったもてぎでも、やはり69kgのウエイトが相当堪えたようで、9位に入るのが精いっぱいながら陥落は免れた。正直、この2台は75kgも積んでいることもあり、今回は我慢のレースを覚悟の上での戦いになるだろう。
前回は接触によって、ノーポイントに終わってしまったが、藤波清斗/J.P.デ・オリベイラ組の#56リアライズ日産自動車大学校GT-Rが3番手を走行していたのも、今回のレースを受けて見逃せないポイントではある。何せ72kgもウエイトを積んで、そのポジションにつけていたのだから。今年はGT-Rの安定感が目立っており、今回もひょっとすると、ひょっとする可能性大。すると前言を撤回し、#11 GAINER TANAX GT-Rも合わせ、台風の目になりそうだ。
また、昨年に引き続きGR Supraの速さも目立っている。タイヤのマッチングにもよるが、ウエイトを積まない素の状態において、今やGT300クラスでは随一の戦闘力ではないかと思えるほどだ。ただ、ウエイト感度が極端に高いのは間違いなく、タイヤに優しい前回のもてぎでこそ、#52埼玉トヨペットGB GR Supra GTがタイヤ無交換を成功させて、3位となっているが、第2戦を制した#60 SYNTIUM LMcorsa GR Supra GTはノーポイントに終わっている。この2台は69kg、66kgで厳しい戦いを強いられそうではある。
ただ、もう一台の、三宅淳詞/堤優威組の#244たかのこの湯GR Supra GTは、まだ42kgではある。この違いがどう影響を及ぼすか。前回は予選2番手で、決勝は4位でゴール。このチームだけ、まだ表彰台に立っておらず、渇望感はピークにも達しているだろう。
文:秦 直之
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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