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モーター スポーツ コラム 2021年8月12日

可夢偉、更なる高みへ

今日も今日とてプッシュ&ルーズ by 高橋 二朗
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悲願のル・マン24時間初優勝を目指す小林可夢偉。

世界中を飛び回って、耐久レースで大活躍、アメリカのIMSAとグローバルなWEC。
今、日本人で一番多くの耐久レースイベントで<走り回っている>小林可夢偉選手。彼にリモートでル・マンに向けてのインタビューする機会を得ました。時期は、WEC第3戦のイタリア・モンツァ戦の前。そして彼はモンツァで度重なるトラブルを克服して今季初勝利を得たのです。ル・マンへ向けての一勝でモチベーションを高めて、念願のル・マン24時間レース初勝利へ向かって欲しい。

速さを示しながら何度となくル・マンの勝利の女神に微笑んでもらえなかった可夢偉選手。これまでのル・マンで一番印象に残っているレースという問いかけに「ピットロード出口でコースイン待機をしていた際に今日ジローさんが着ているオレンジ色のポロシャツと同じ色のレーシングスーツきた偽マーシャルがコースインを指示した。あれが、今でも夢に出てくる。ホンマ、フラッシュバックしてくる!」

クラッチトラブルで悔し涙をのんだ2017年シーズン。

2017年の珍事件。クラッチトラブルを修復してコースインしようとした可夢偉選手は、ピットロードエンドの赤信号でストップしていた。そこへ、マーシャルと同じようなオレンジ色のレーシングスーツを着たLMP2のドライバーが近寄って来てサムアップ。マーシャルにコースインを指示されたと思い、走り出したが、チームからストップの無線。再びクラッチトラブルが発生して、リタイヤという悲劇的な結果となった。あの珍事を思い起こさせるためにボクは、オレンジのポロシャツを着ていたわけではないのですが、ちょっと申し訳なかった・・・。

今年から新クラス、HYPER CARで戦うTOYOTA GAZOO Racing。まだ、マシンの完成度は100%とは言えないようだ。これまでの3レースでもトラブが発生している。8号車2勝、7号車1勝はしているがノートラブルのレースは無い状況ですね。

3連勝といえども順風満帆とはいえないGR010。

「レギュレーションが厳しくて、手を加えられない部分がある。空力的にも改良できればもっと良くなるだろうけれど・・・。TS050からGR010へとクルマの大きさが大きくなった。そして重さ。ベースで200Kgくらい重い。当然速度も劣る。120キロまでモーターのアシストも無いし。でも乗ったら大きさにはすぐに慣れましたけれどね」

第2戦、ポルトガルの後に耐久テストを行い確実な手応えを得ているという。クルマの大きさが大きくなったことでコクピット内は、広くなり、クーリングも良くなって、走行中の暑さは感じないという。2021年のル・マン開催は8月。暑さは心配ないようだ。良かった、良かった。

何度も苦渋を経て来たル・マンに対しても、可夢偉選手は「ル・マンは走っていて楽しい。コースレイアウト、そしてスリル感が好き」と言う。
また、ル・マン24時間レースでは、「いかにトラブルなくレースを走り切るかが重要。目の前のことを確実にこなし、思いは強く、気は楽に。メンタルはリラックス。厳しい状況の中で勝つのがレースの醍醐味。ル・マンの女神も今年は良いのではないかなと思ってくれているのでは(笑)。悔しい思いが続いて来たけれど、過去のことは笑話になるようにしたい」

今後、国と国の壁はもっと無くなって、日本人のレーシングドライバーはグローバルに活躍できるようになる。その先駆けとして、それがスタンダードとなれるように今、可夢偉選手は頑張っているとコメントしてくれてもいる。

今年こそル・マンの表彰台の頂上に登る小林可夢偉を見たいというファンは多いだろう。

ル・マンの勝利は、彼の大きな目標に向けての第一歩だということが分かった。しかし、ル・マンで何度も勝てるレースを逃してきた可夢偉選手。今年、ル・マンの表彰台の最上段に立つことで彼のチャレンジは段階を上げて極みを目指すことになる。
頑張れー!可夢偉!!

文:高橋 二朗

高橋 二朗

高橋 二朗

日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。

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