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【SUPER GT チームの舞台裏にお邪魔してみました】19号車 TGR TEAM WedsSport BANDOH 坂東正敬監督&宮田莉朋選手
SUPER GT by 島村 元子19号車 TGR TEAM WedsSport BANDOH 坂東正敬監督&宮田莉朋選手
レースウィーク中のサーキットは、ドライバーはじめエンジニアや監督、スタッフ全員が”戦闘モード”全開で勝負に挑んでいる。普段、現場でチームスタッフ同士がどのようなコミュニケーションを取っているのか、気になったことはないだろうか?
そこで、zoomでの会話をその”舞台裏”に見立ててご紹介! 第3弾は、TGR TEAM WedsSport BANDOH。若手ドライバー育成チームとしても知られる19号車のドライバー、チームスタッフの士気を鼓舞する存在の坂東正敬監督とチーム2年目、伸び盛りの宮田莉朋選手が交わす会話とは!?
【見どころ多い戦いだったもてぎ】
──を坂東監督と宮田選手が話し出す前に、まず坂東監督がチームの”立ち位置”を筆者に”解説”!? 文字通り”舞台裏にお邪魔”することに。
坂東正敬(以下、B):僕らはレースをやりながらタイヤの開発を請け負ってますんで他のチームとちょっと違う意図もあって。その中でドライバーがタイヤ開発に携われるっていう部分に関しては、正直ドライバーのコメントに加え、実際の工場でのラボ実験や分析結果は表面的に見せてもらえます。ただ実際、(コース上の)路温(路面温度)であったり路面ができた状況でのレース(コンディション)にななって、さらにパフォーマンスが上がった部分での結果がどうだったかという点においては、これまでのドライバーのコメントがタイヤを伴うセットアップや結果に繋がっています。そういう部分では(GT)500(参戦)2年目でフル参戦している宮田選手のコメントが、正しい方向で対ブリヂストン、対ミシュラン、対ダンロップ……と、上位で戦えるタイヤづくりという(形になっている)。また、(もてぎでは)予選2位、決勝2位、あと前回の富士でのポールポジションという部分に関しては、ヨコハマタイヤさんの工場や設計側とチームとドライバーとの方向性が(合致して)、やっと結果を得られたレースになったかなと思っております。というところで……。
【見どころ多い戦いだったもてぎ】を改めて
B:(レース直後は)『次のレース、もっといいレースにしよう』って(宮田)莉朋と話したよね。
宮田莉朋(以下、M):はい。僕はひたすら謝ってただけなので。
B、M:(ともに爆笑)
B:莉朋は確かに謝ってたかもしれないけど、でもなんだろうな、彼が持ってる__これ、誰に語ればいいかわかんない(苦笑)けど(と、再び筆者に向けて語りだす坂東監督)、彼が持ってるポテンシャルを、やっとチームとタイヤが引き出せたという部分もあるしね。彼が速い、って言っても結果を出さないと速さという部分での彼の良さが出ないと思うしね。今年、すべて(予選)Q2(は宮田担当)にするというのもそうだったし、彼のコメントを重視するっていうのもそう。今回(もてぎでは)、莉朋がタイヤを選んだんだよね。
M:はい、(もてぎに持ち込んだ)タイヤは新しい構造とかコンパウンドがあって、(6月にもてぎで実施した)タイヤテストでどっちもいいっていうのがあったんですが、「もてぎで勝つ」ことはシーズン始まる前から決めてたんで、そこで変にチャレンジして勝てなくなるのもイヤだし。かと言って、良かったのにやらずしてダメだったっていうのもイヤなんですけど、富士でポールポジション獲れたんだったら、あとはドライバーで合わせた方がいいんじゃないかなっていう話をしました。もてぎに対しては、僕自身が結構責任を持ってやってたんですけど、結果的に2位で終わってしまったことが僕としては申し訳ないなと思って。自分が決めたからこそ勝っていればもっと自信を持っていれたんですけど、負けたんで。ちょっと申し訳ないなと思いました。
B:まぁ、ドライバーひとりで負けた訳じゃないしね。(チームとして)色んなミスとか色んな(レース)展開があったんで。だから最低限表彰台に乗れたっていう部分では、ヨコハマタイヤさんも自信がついただろうし。たぶん今後は、信頼関係で莉朋の言葉ひとつひとつが重要になってくると思う。莉朋がこれだけタイヤ開発でこれだけニュータイヤ履いて、これだけGT500の(クルマで)サーキットを走れるかっていうのは、なかなか(機会があるとは限らないから)ね。だからこそ(TGR TEAM WedsSport BANDOHが)育成チームと言われている部分もあるんだけど、逆にそれが今後(のレース)に生きてくるよね。
M:そうですよね。タイヤ開発ってカートの頃からやってたんですけど、ドライバーひとりが違う方向に行ってしまうと、みんながダメになるんで。そういう部分でも(SUPER)GTってふたりで乗るんで、ふたりの意見が食い違っちゃダメだし、かと言ってひとりが速くてひとりが遅いとレースじゃうまく行かないから、そこのバランスが難しい。でも今年はほんとにそれをシーズン当初からチームみんなで話し合って決めてたんで、すごくやりやすい環境でやらせて頂いてます。
【改めて語る、あの“リーゼントヘア” ※1】
※1:2020年、チームに加入した宮田莉朋選手。SUPER GT公式写真としてチームが用意した宮田選手の顔写真は、なんとリーゼントヘア! なお、歴代のチーム”新加入”ドライバーは、金髪はじめインパクトあるヘアスタイル等でお披露目されてきたが、なぜ今回はリーゼントに? という疑問に対し、坂東監督が再び”説明”。
B:誰でもそうなんですけど、ドライバーってその前の年のイメージっていうのがつくじゃないですか。莉朋だったら「OTG」(※2)っていうイメージだと思うんですよ。OTGで勝ってるしね。そんな中で(2020年に)19号車に来たときに、いかに『こいつはもう19号車(のドライバー)だよ』っていう(イメージをつけるか)。まぁそれはメディアに頼ってる部分もあるんですが、逆に言うとなにかしたらメディアが取り上げるでしょっていう(笑)。最初から策士な僕にメディアさんが引っかかってくれているって言ったら変ですけど、メディアさんのおかげ(もあって)。だからOTGでの86レースとか他のレースもやってるんですけど、(19号車参戦が)2年目になって、だいぶ「19号車の宮田莉朋」と「トムスのSF(スーパーフォーミュラ)の宮田」っていう部分で早めにインパクトを与えられてるかなって。正直、育成っていうトヨタから(チーム加入する)ドライバーが決められた状況の中で僕も(チームとして)参戦しているんで、そういう中だと何かしらインパクトを与えたほうが、彼の知名度も……。
極端な話、僕のチームのファンの人、スポンサーさんの人がいち早く名前も覚えるだろうし。それだけメディアが取り上げられたら、メディアを通じてスポンサーさんも喜ぶでしょうし。正直、莉朋がどんなヤツか全然最初はわかんなくて。(2019年までGT300クラスで宮田とコンビを組んでいた)吉本(大樹)からちょっとだけ聞いたくらいで。(2019年のチームドライバーだった)坪井(翔)のときもそうだったんですけど、若手が何に興味を持ってて、どういう感じかっていうのが正直わかんなかったんで、とりあえず「19(号車)はこんな感じ」とかでもいいから、とりあえず名前をね。速さは結果で表れるんで、(先に)名前が出ればいいなって。僕のアンチ(ファン)もたくさんいるんで、『そんなかわいそうなチームに入った』と言う人もいるでしょうけど、彼の知名度が上がれば僕はそれで(いい)。今の関口(雄飛:2007年、GT300の19号車でデビュー。2014年から2017年はGT500でチームドライバーを務めた)もそうですけど、いまだに”元19号車”っていう形でコメントしてくれたりするとうれしいんで。そういうことを考えると、『あんなときもあったな』っていうのを最終的に莉朋が語ってくれれば……っていう長い目で(捉えている)。(チームに在籍した)先輩たち__関口、ヤマケン(山下健太:2018年チームドライバー)、坪井っているんで、彼ら以上に名前を売るために『なんかしようかな』と思っただけです(笑)。だから莉朋が(リーゼントヘアを)イヤだったかどうかはわからないです。
※2:宮田選手は2018年にSUPER GT、GT300クラスにデビュー。2019年までNo.60 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3で参戦した。そのチームの母体が「OTG(大阪トヨペットグループ)」。2019年は第6戦オートポリスで予選12位から自身初優勝をあげている。
B:そのときは、ほんとに今みたいな感じよりももっと会話が少なかったんだよね。今は僕、ほとんど莉朋のゲーム(※3)の話を聞いてるんです。
M:えへへ(笑)。
B:シミュレータ(ゲームで)日本で一番になったって。僕のほうが『えっ!? そんな世界なの?』って思っているほうが多いよね、莉朋?
宮田選手のリーゼント
M:そうですね。ってか、髪型の件は……。僕、セパンで12月のテストのときはいなかったんですけど、1月のオフシーズンのテストで初めて坂東さんとご一緒させていただいて。『髪型、どうしようか』っていきなり言われて。僕、髪型の件はイヤだなってずっと思ってたんです。『なにされるんだろうなぁ』って。染めるくらいは全然よくて、『坊主にしてこい』とかはイヤだなって思ってたら、リーゼントって言われて。『あっ、リーゼントならまだいっか』って。で、現地で坂東さんがやってくださるってことだったので、全然”ウェルカム”、OKだと思いました。だから髪型は結構評判__良い悪いは別にしてもウケる人は多かったので、ありがたかったですね。
B:(笑)。
※3:e−スポーツでも活躍する宮田選手。レーシングシミュレーションオンラインビデオゲームのiRacing等でも手腕を振るう。
【監督、宮田選手にフィードバックを期待!?】
M:最近は僕がしゃべってるというか……。確かに最初はしゃべらない方だったんで。人と打ち解けるまで結構時間がかかる方なんで、逆に坂東さんが(話題を)振ってくれるんでしゃべれますね。
B:でもあれだよね。(初めて会ったときから)変わったというか……。色んなレースに出てるから、色んなレースの会話をするようになったよね。
M:そうですね。
B:俺、GTしかやってないんで、だから莉朋のほうが色んな情報を知ってるからね。
M:そうですね。
B:(参戦している)すべてのカテゴリーの『あのチームはダメだ』とか『モメてる』とか。
M:いやいやいや(苦笑)。そこは全然言ってないっす!!いやいやいや。
B:ただ、他のチームと違うのは、僕は監督っていうよりもチームオーナーで、それ(レースに関わること)を全部やっているっていう人が(他のチームには)いないからね。それに僕はクルマのことを莉朋にああじゃない、こうじゃないって言える立場じゃないから。少しでもよりいい環境で(レースが)できればって(思っている)。予選(結果)がいいときだけ『好きなもの、食べていいよ』って。それくらいしか言わないもんね。
M:そうですね。はい。
B:でも逆に、他の(チームの)エンジニアとのやり方はどうやってんのとか、外人のシミュレーターのエンジニアはどんな感じなのとか、そういうのは莉朋が教えてくれるもんね。
M:まぁそうですね。これは個人的な見方ですけど、どうしても坂東さん(チーム)っていうかヨコハマタイヤとGTをやっている以上、今は勝ち目がないっていう見られ方がやっぱり多くて。それって、逆に勝てば大きな結果だと思っているんで。例えば、僕がSF(スーパーフォーミュラ)でトムスに乗っているのであれば、トムスがどういう風にやっているのかっていうその経験を、少しでも坂東さんのところで活かせるのであれば活かしたい。(トムスのように)GTでもチャンピオン争いをしているチームが、SFとやり方が違うとは思わないので。タイヤメーカーが違う(※4)っていうのが当然ありますけど、例えば坂東さんのチームだけやり方が全然違う場合であれば、トムスの方に寄せるのはアリだと思うし、逆に坂東さんの方がやりやすければそのままその方針でやるべきだと思っているので。だから「勝つべきにどうすべきか」っていうのをいつも考えていたんで、そういう部分の情報は、僕から結構伝えてますね。
※4:トムスはブリヂストンタイヤを装着
【マサ監督、”伸び盛り”莉朋に迫る!】
──またしても、筆者に語りはじめる監督。
B:ヤマケンとか坪井とかと全然違います。多分、(今が)すごい成長期。自分が目指しているものとやりたいことが合致してて、それが結果で繋がっている。ほんとはここでSFでチャンピオンを獲ってくれると、さらに世界にいけると思うんで。他のスポーツ選手で、例えばメンタルだったり、『ヤバい、結果が出ないからどうしよう』とか、自分に焦っているっていうか自分に自信がないと見受けられるときがあるんです。特にウチなんかでずっと結果が出なかったときに『どうしよう、どうしよう』ってドライバーは焦ると思うんです。『来年どうしよう、どこ(のチーム)に行けるかな』とか。でも、宮田選手は、すべて答に対して『こういう風にやっていけば、こういう答が出る』っていう風に、偶然というものがなくて。一個一個やっていけばこういう風に結果が出るでしょう、こうやればコンマ1秒上がるでしょう、と。だから、僕なんか(第2戦)富士でポール(ポジション)を獲ったときに、多分ものすごい偶然が重なって出たタイムなんだろうなと思ってても、莉朋の頭の中では、『タイヤの温め方がどうで、自分でこういう風にアタックしたから完璧なタイムが出たんです」(という感じ)。運を味方にしている部分ももちろんあるし、僕も『(ポールポジションが獲れて)ラッキーでした!』って言ってるけど、先日、タイムの分析をヨコハマタイヤさんがしてくれて、どこのセクターでどんだけ速くて(チームドライバーの)国本(雄資)と何が違ったのかを見せてもらったんですが、多分相当頭を使いながら一個一個自分のトライを全部頭の中に入っているんじゃないかと。最初、『(宮田は)そんなに頭良くないのかな』って思ってたんですね(笑)。
M:ふふふ(笑)。
B:なんか、真面目っていうか。真面目と頭がいいのは別なんで(笑)。褒めて莉朋のお父さんから何かもらおうっていう気はないですけど、もっと早く色んなところ(レース)にチャレンジして欲しいなって。応援したくなるようなドライバーなんで。ほんと開発(担当者)とドライバーとエンジニアとで相談しながら、『こういうクルマだからこういう運転しろ』っていうのは言わないし。莉朋は『あ、このクルマだからこの方がいいかな』って自分で気づくタイプだよね!?
M:はい。そうっすね。
B:でもSFなんかだと『こういう感じで運転した方が絶対速いからこういう風にトライしてみれば』って言われる時もあるでしょ?
M:まぁありますけど、SFに関しては、今、低迷(しているわけ)じゃないんですけど、どうしても(ライバルエンジンメーカーである)ホンダエンジン(勢のドライバーが)トップにいて、クルマの走らせ方が違うんで……。(トムスの)小枝(正樹)エンジニアと組んで1年目っていうのもあって、小枝さんは(昨シーズンまで)ニック(キャシディ)さんと組んでいたので、僕とコミュニケーションの取り方が全然違ってというか、やり方が全然違って……。ちょっとそこが、まだGTよりもパフォーマンスの部分で低迷してて。ただ僕の中ではGTもSFもどのカテゴリーでもそうなんですけど、ダメであってもドライバーで合わせ込めば戦えるんじゃないかとつねにやってきたんで。GTの(第2戦の)予選もそう。ほんとは富士スピードウェイって計測3周目でアタックに行く予定なんですけど、タイヤの内圧や内部温度とか全部の条件が、(アタック時の)気温と路温の関係で5月の時期だと4周目のほうがタイムが出るっていうのがデータとしては出てて。でも4周目に(タイムを)出すっていうのも難しくて。じゃあ1周目、2周目のペースをどうやって合わせ込んだらいいんだっていうのが、(事前の)テストとかシミュレータとかである程度自分の中で分析しました。
さらにデータエンジニアとエンジニアとあと国本さんのフィードバックのコメントを聞いて、『だいたい計測3周目までにこのくらいの温度でこうやって(タイヤを)温めればいけるだろう』っていう(ことに対しての)結果が、富士(でのポールポジション獲得)だったんです。今、細かいセンサーとか付いているんでそういうのも頼りにして(います)。今はヨコハマタイヤをまだまだもっと強くしなきゃいけない部分があるんですけど、そういう細かい情報をちゃんとタイヤ屋さんに伝えないと、タイヤ屋さんもやっぱり『この温度ならこのタイヤがいいんで』とか(タイヤメーカーとしての見解)があるし。僕らも僕らで『このときはこのタイヤがいい』って色々と意見が食い違うんで、そのときには『こういう温度で走ってたからこのタイヤが良かった』ってちゃんとした理由がないと速く走れない。それこそ富士(の予選)は結果がすごく良くて、もてぎも悪くなかったですけどあと一歩足りなくて……。でもそういったこと(不足分)は自分の中でやるべきことだと思っているんので、そこが今はたまたまうまく行ってるだけで、この先はわかんないですけどね。でも自分的にそうやってやっていけば、結果は残るんじゃないかなといつもやってますね。
【宮田選手に“先行投資”!?】
B:今、楽しい?(タイヤを)開発しながらレースをするのは?
M:去年よりっていうか、カートの頃からずっと開発は楽しいですね。カートの全日本のカテゴリーってタイヤ開発が必要なクラスで、(宮田が参戦していた)その頃もやっぱりブリヂストンが強くて。僕はダンロップだったんで、ブリヂストンにどうやって対抗したらいいかっていうのをつねにやってた側だったんで。GT300から開発はやらせてもらってましたが、カートの頃から楽しかった思いだったりとか、逆に色んなタイヤを味わうことができるんで。そのときのサーキットによってこの構造とゴムがいいっていうのがサーキットによって違うので、それがGTになって経験できるというのはすごく楽しいですし。ただ、僕はまだ一度もBS(ブリヂストン)を履いたことがなくて、その世界を知らないんです。人生の中の1秒ってあっという間ですけど、レースだと命取りになるじゃないですか。その1秒をどうやってタイヤで作れるか、そういう開発をカートの頃からやってるので、『あのとき、こうことをしてたな』っていうのをすぐヨコハマタイヤさんに伝えているし、そういう開発は楽しい。結果が残ってくるとみんなで頑張って良かったなと思えるんで。これからも頑張っていく必要があると思います。
B:そう。要約すると、もし莉朋がBSに乗ってもそのあとも俺に情報を提供するっていうことでしょ?
M:あはは!(爆笑)
B:『今のBSのタイヤがこうですよ』っていうのを、もし他のチームに行ったとしても、つねに裏で__BSの見えないところでヨコハマに協力しますよ、ってことを言いたかったんだと思う(笑)。
M:許される範囲ならそりゃお伝えしたいですけど……(苦笑)。
B:ヤマケンは『前回、なんのタイヤだったんですか?』とか聞いてくるし、関口はそれなりに気にしてくれるところもあるけど、坪井は全然トムスに染まってて、『19に乗ってた』なんて言わなくなっちゃった(笑)。みんな(チーム在籍が)1年で__関口は結構乗ってたんだけど、莉朋は(在籍)2年なんで、もし違うチームに行っても莉朋の(レーシング)スーツに「BANDOH」ってパーソナルスポンサーで入れようかな、って。
M:へへへ。いやぁありがたいです、それは。
B:今度、SFで聞いてみようかな。(スーツの)首のところに200万円で「BANDOH」って(入れていいか)。(トムス監督の)舘(信秀)さん に聞いてみようかな。でもね、今、21歳?だもんね。21歳でこんだけコメントが(しっかりしてる)。多分、関口と一番最初に会ったときって、(関口が)18歳のときだったの。18歳でウチのGT300に乗ってたときはタンクトップで丸坊主、ここ(首)に金のすごくぶっといネックレスをしてて。コンビニでたむろしているジャージのオネェちゃんに興奮している18歳だったから(笑)。それに比べたら、21歳でこんなにしっかりしてるんだっていうところがね。もうちょっと21歳らしさも(欲しい)ね……。このままいくとだいぶオジさんみたいになっちゃうよ。
M:そうですね、間違いないですね。
B:そうだよね。だって、(OTGモータースポーツから共にTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Raceへ参戦している)服部(尚貴)さんって(宮田の)お父さんより年上でしょう?
M:年上です。
B:そういう人たちに可愛がられてそういう人たちとレースをしてたら、ほんとだんだんオジさんになっちゃうと思うんだよね。もうちょっと、ル・マンとかフォーミュラEとかでもいいから、日本人が活躍できる__今やってるオリンピックみたいに、世界へ行ってもらえるといいなと思っている。ぜひこれをご覧の世界のチームの方! 彼は今トヨタに所属してますんで、トヨタから引き抜くためにはお金が必要だと思いますが……。もしくはトヨタのお偉いさん、これを見てたらぜひ、(トヨタが参戦する)WEC(世界耐久シリーズ)の7号車か8号車のレギュラードライバーにしていただければと。あ、でも平川(亮)選手がいるから(その)次ね。平川選手の次でもぜひお願いします。でも、そういうのってあるでしょ?
M:ありますね。今、F1も僕と同い年ばっかりだし、(日本人唯一のドライバーである)角田(裕毅)選手も僕、一回も(レースで)負けたことがないんで……。だから仮に(F1へ)行けてたらどうなんだ、っていうのはいつもありますね。
B:来年、もしあれだったら、角田が19で、お前が(角田が在籍する)アルファタウリって。まだF1乗りたいでしょ?
M:(笑)。全然行きたいですね。
B:F1で色んなエンジニアとか色んなチームを見た方がいいよ、若いときにね。その中で毎回、情報を俺に教えてくれる? 世界に行っちゃうと、ヨコハマタイヤに戻ってくるのは多分難しくなっちゃうんで……。
M:(爆笑)
B:『タイヤ作りにこういう人を入れたほうがいいですよ』とかね。もしくは、俺が職がなくなったら莉朋のマネージャーとして雇っていただければ、と。莉朋は頭がいいから……。いつも話してるけど、世界に行くためにマネージャーだったりとか、なにが大事かっていうのを自分の中で(考えてる)。今、(宮田が参戦する)シミュレータ(ゲーム)の世界で色んな人と出会えるから、チャンスが巡ってくるよね。
M:そうですよね。
B:普通の21歳とはまた違うし。(以前は)ホンダの人たち(ドライバー)は、F3で世界で戦ってたから。(福住)仁嶺とかそうだけど、みんな1回は(海外に)行ってるもんね。ああいうとき、莉朋は日本でやってたから、GTとSFで結果を出せばスーパーライセンスがもらえるもんね。
M:そうですね。SFで2位以内だったらF1のスーパーライセンスが獲れるんで。あとは、お金とコネですよね(笑)。GTもあるんですが、どっちが(プライオリティが)上かわからないです。(今、各カテゴリーの成績の)合算はダメになっちゃって(※5)。合算のときは2017年まで(FIA-)F4に出てて、F4とカートとF3と合算するとF3でチャンピオンを獲ったらいけるくらいな感じだったんですが、それがなくなっちゃったんです。
B:まぁいつも思ってるけどドライバーの差ってね、ほんとにチャンスをどれだけモノにできるかだよね。ただ、見てくれている人たちにも言いたいのは、ヨコハマタイヤで諦めずにここまでやってきたからこそ開発という形でタイヤの進化が感じられるようになって、ドライバーも安心してドライブできるマシンになったってこと。やっぱり努力は裏切らないってことだよね。こうやってたまにいいことを言っておかないと、記事にならないでしょ?(笑)。これからF4やって、F3、GT乗りたいっていう人たちもね、(やる先では)苦しい時期があるからね。
※5:新型コロナウイルス感染症の影響を鑑み、2020年の秋にはF1参戦に必要なスーパーライセンスポイントの発給条件が緩和された。それまでは過去3年間で40ポイント獲得の必要があったが、緩和された時点で、2020年を含む直近4年間におけるベスト3シーズン(獲得ポイントが多い3年で連続でなくてもOK)で合計40ポイントを獲得している、もしくは最低30ポイント以上獲得したドライバーでもFIAの検討次第、という条件付きでライセンスが発給されるようになった。
【宮田選手は、GT参戦が"苦痛!?"】
19号車 WedsSport ADVAN GR Supra
B:ちなみに、一番苦しかったときっていつ?
M:えー、ほんと申し訳ないんですがGTが一番苦痛で……。
B:(笑)。
M:と言うのは、今までF4とかF3、SFもそうですけど(ドライバー)みんなが同じタイヤで同じクルマで(戦っている)。F3はエンジンが違いましたけど、頑張れば優勝争いが絶対できるじゃないですか。だけどGTって、例えば(開幕戦の)岡山もそうですけど、(使用できるタイヤの)セット数が限られちゃって、タイヤはグレイニング(ささくれ立つ)だらけで何も勝負できないし。『なんのためにサーキットへ来たんだろう?』って毎回……。ほぼほぼ毎年岡山ってそういう思いで来てるんですよ。だけど多分、名前を挙げるとしたら、阪口晴南選手は僕と真逆でほんとにBSしか乗ってないんで。全然もう、注目も違うし。僕はヨコハマとダンロップでしかまだGTに乗ったことないですけど、どんだけ頑張っても、なんとかポイントを獲れるくらいで。彼らはあの体制なんで、いきなりポンと(クルマに)乗ってトップ争いして。『あ、やっぱ阪口速いんだな』、みたいな。(それに比べて)『全然GTでは注目されないじゃん、自分……』と思って。
B:(苦笑)
M:だから、GTはなんだかんだいって、一番苦痛……。苦痛なんですけど、ただじゃあ努力して開発して、クルマもタイヤも全部チームのみんなで頑張って、やった結果が富士のような結果だったり、もてぎだったりとか。なにか一発でも結果を残したときの感動(が大きい)じゃないですか。喜びっていうのは多分、他のチームでやってたら絶対ないですね。ほかはやっぱり勝つのが当たり前な体制でやってたら、ポールを獲っても『当たり前だよね』みたいになるんですけど、頑張んなきゃというか、みんなで何かしなきゃいけない状況でポールを獲ったり、表彰台だ、優勝争いだ、っていうことになったらそっちのほうが感動したりとか、この体制でやってるからこそ自分が納得する喜びっていうのがうれしいし、この経験は絶対この先のレースキャリアでもすごく活きると思うんで。そういう意味ではGTが一番イヤな部分でもありますけど、今後のキャリアにおいてはすごく活きる経験じゃないかと思ってます。
B:ギャフンと言わせることができたら、メディアもいっぱい取り上げてくれるからね(笑)。(第2戦富士で)ポール獲ったときだって、他のチームが優勝したくらいいっぱいその日の記事になってたもんね。それを活かして……。あと、莉朋は速いドライバーなんだから強気の発言でもいいかな、と。速いし結果も残してきてるから、自分に自信があって、阪口晴南だったり角田君だったり(宮田を)ライバル視してるドライバーがいるんだし。『俺の時代が来たから俺に速いクルマ、乗せろよ!』って(笑)。(チャンス到来の)タイミングは、次に行くチームとかによってもまた全然違うからさ。なんかチャンスを今のうちに(掴んで欲しい)……。シミュレータの世界でもそうだけど、(世界に)行ってほしいな、と。
【SUPER GT チームの舞台裏にお邪魔してみました】
19号車 TGR TEAM WedsSport BANDOH 坂東正敬監督 & 宮田莉朋選手
文:島村元子
島村 元子
日本モータースポーツ記者会所属、大阪府出身。モータースポーツとの出会いはオートバイレース。大学在籍中に自動車関係の広告代理店でアルバイトを始め、サンデーレースを取材したのが原点となり次第に活動の場を広げる。現在はSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に、ル・マン24時間レースでも現地取材を行う。
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