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2戦を終え、現在ランキング2位のNo.60 SYNTIUM LMcorsa GR Supra GT 。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、第3戦鈴鹿大会が延期となり、しばらくインターバルが空く形となった2021年のスーパーGT。今週末はツインリンクもてぎを舞台に2ヶ月半ぶりの開催となる。
これまでは最終戦の舞台になることが多かったもてぎ大会だが、今回は梅雨明け間近の7月中旬という真夏のコンディション下でのレース。当然各チームとも豊富にデータがあるわけではないため、予想外な展開が起こりうる可能性も十分にある。
また、今回の大会名称では「第4戦」となっているが、実質的には3戦目となるため、序盤2戦で後れを取ってしまったチームは、ここで好結果を残してチャンピオン争いに名乗り出たいところだろう。
そんな中、GT300クラスは開幕戦を制したNo.56 リアライズ日産自動車大学校GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)がランキング首位をキープしているが、そこに1ポイント後方に迫るランキング2番手につけたのが、No.60 SYNTIUM LMcorsa GR Supra GT(吉本大樹/河野駿佑)だ。
特に前回の第2戦富士では、2スティントを担当しただけでなく、終始力強い走りを披露。終盤はNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内秀輝)、No.55 ARTA NSX GT3(高木真一/佐藤蓮)の猛追を受けながら、必死にトップを守りきり、0.7秒差でチェッカーを受けた。
参戦2年目となる河野にとっては念願の初優勝。パルクフェルメでは、人目をはばからず大号泣していた。スーパーGTで勝つというのは、彼にとっては大きな意味を持っていた。
第2戦で河野はスーパーGT初優勝。パルクフェルメで感涙した。
彼の父は現在No.4グッドスマイル初音ミク AMGのエンジニアを務めるRSファインの河野高男氏。長年、レース業界に携わっている父のもと、息子の駿佑もスーパーGTの前身である全日本GT選手権を見て育ってきた1人だ。
自身もスーパーGTのドライバーになることを目指し、様々なカテゴリーに挑戦する一方、データエンジニアや時にはメカニックとしてチームを手伝うこともあった。そうした下積みを経て、昨年ようやくレギュラードライバーの座を掴み取った。
しかし、スーパーGTで結果を残すのはそう簡単なことではなかった。マシンはLMcorsaが長年使用してきたレクサスRC F GT3だったが、タイヤをミシュランに変更。新しいパッケージで勝機を見出そうとしたが、最終戦富士での9位入賞が、そのシーズンの最上位となった。
「昨年に関してはデビューして……色んなことを学びました。辛いこともありましたけど、そういう時にどうやって頑張ろうか?ということを考えました。その中でもメカニックさんたちは、1秒でも早くピット作業を終わらせようとか、トラブルを出さないようにやってくれていました」
迎えた2021シーズンはマシンをGRスープラにし、タイヤもダンロップに変更し、新たなスタートを切った。
「やっぱり僕たちがコース上で走っているよりも、メカニックさんがクルマに触って、エンジニアさんが考えてくれていた時間の方が圧倒的に多いと思います。昨年までのGT3よりも、今年のJAF-GTの方が触れるところが多いので、その分やることも多くて、大変だったと思います。」
自分よりも何倍も頑張ってくれているチームのために、早く結果を出したい……。それが第2戦富士でみせた快進撃の原動力となり、レース終盤でプレッシャーがかかる場面でも“絶対に守り切ってやる!”という気迫で走り続けていたという。
河野はレース終盤、気迫の走りでライバルを抑えた。
そして、チェッカーを受けた直後、いろいろな想いが込み上げてきた。
「チェッカーを受けるまでは泣いてなかったし、逆に必死だったんですけど、チェッカーを受けた後のことは……もうよく覚えていません(苦笑)」
「でも、ここに来るまでもそうでしたし、特に昨年は、状況は違えど、同年代のドライバーがいっぱい活躍していたのをみていたので……仕方ないとは思いつつも、悔しい気持ちは当然ありました。だから、この優勝は本当にうれしいです。本当に良いクルマに仕上げてくれたチームの皆さんに感謝していますし、何よりダンロップタイヤさんが勝負できるタイヤを用意していただいたことに感謝しています」
初優勝の直後は涙が止まらない様子だった河野駿佑だが、レースを終えて少し時間が経つと、すぐに“次のこと”に照準を合わせていた。
「昨年の苦しい状況から、こんなコメントができるとは思ってもみませんでしたが、今回の優勝はある意味で通過点だと思っています。だから、次からは気を引き締めていきたいです。」
「クルマは触れるところはいっぱいあるので、これからもっと良くなっていくでしょうし、ダンロップタイヤさんと協力して、もっと良いタイヤを作れるようにしたいです」
「ここがゴールじゃないのです。2勝目・3勝目も狙っていきますし、とにかく(ポイントの)取りこぼしなく戦っていって、最後にチャンピオンが獲れれば最高だと思っています。このあとのレースも戦いたいなと思います」
今回のもてぎ大会では、69kgものサクセスウェイトを積んで戦うこととなる60号車。周りはウェイトが軽いチームが多いため、今回は上位争いに加わるのはハードルが高そうではあるが、第2戦の初優勝で、河野駿佑の中で何かが変わったのは確か。今後の彼の走りから、目が離せない。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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