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Astemo NSX-GT
5月30日に行われるはずだった、第3戦が8月22日に延期されたため、実に2か月半ぶりとなるSUPER GT。シーズン中にこれだけのブランクが空くことは未だなく、それだけに「待ち焦がれた」という印象が誰にも強いのではないか。
舞台となるツインリンクもてぎは、タイヤにはそう厳しくない一方で、頻繁にブレーキングとシフトチェンジを繰り返すことで、ブレーキや駆動系に負担がかかりやすい。また意外にパワーサーキットの要素もあるだけに、第2戦の富士で速さを見せながら、残念な結果に終わったことが伏線になりそうだ。
晴らせ、富士の無念! リベンジがテーマとなるGT500クラス
第2戦の富士で優勝を飾ったのは、#17 Astemo NSX-GTを駆る、塚越広大/ベルトラン・バケット組だった。予選こそ11番手だったが、序盤に発生したアクシデントに素早く反応して、FCY(フルコースイエロー)となる直前にピットに入ったことが功を奏し、好結果を得た。
その#17 Astemo NSX-GTを最後は1秒を切るまで迫った、大嶋和也/山下健太組の#14 ENEOS PRIME GR Supraが2位、そして平川亮/阪口晴南組の#37 KeePer TOM’S GR Supraが3位を獲得した。
奇しくも第2戦で表彰台に上がった、この3チームがランキングでも上位につけており、開幕戦で優勝の大嶋/山下組がトップで、2位が塚越/バケット組、そして3位が平川/阪口組となっている。抜群の安定感と言えるが、その一方でサクセスウエイトは、すでにそれぞれ72kg、52kg、46kgにも達しており、今回は確実にポイントを獲りに行くレースとせざるを得ないだろう。特にウエイト上限50kgに達した2チームに関しては、燃料リストリクターが装着されるだけに……。
そう触れながら、昨年の夏場のもてぎでは46kg積んで、塚越/バケット組が勝っているのだが、どうあれ軽い方が有利なのは間違いない。このふたりを第2戦で苦しめた存在を、今回の優勝候補としたい。まずは野尻智紀/福住仁嶺組の#8 ARTA NSX-GTだ。一時は#17 Astemo NSX-GTを抜いてトップにも立っただけに、スピードは十分。が、FCY直前の追い越しによって、ドライビングスルーペナルティを課せられて優勝戦線から脱落してしまっている。
とはいえ、そのおかげと言ってはなんだが、#8 ARTA NSX-GTが背負っているサクセスウエイトは、わずか14kg。これならば十分、勝ちに行ける重さであるはずだ。加えて、合わせて出場するスーパーフォーミュラでは野尻がポイントリーダーで、福住が初優勝を飾ったばかり。そんないい流れにSUPER GTでも乗って欲しい、いや彼ら自身が乗らねばと思っているに違いない。
そして、その#8 ARTA NSX-GTにも迫り、あと一歩で逆転も不可能ではなかったものの、駆動系トラブルで無念のリタイアを喫している、関口雄飛/坪井翔組の#36 au TOM’S GR Supraも、優勝候補に挙げたい一台だ。こちらは30kg積んでおり、微妙なところではあるのだが、無念を晴らす絶好の機会にもなりそうだ。
さらに重くないことを強調するならば、第2戦をわずか3周で終えざるを得なかった、松田次生/ロニー・クインタレッリ組の#23 MOTUL AUTECH GT-Rは、未だノーウエイト。エンジントラブルでのリタイアとあって、早くも2機目投入は厳しくもあるが、かといって守りに入れるほどの余裕はないはずだ。リスク承知の戦いに討って出ることが期待される。
もてぎと相性抜群のLEON PYRAMID AMG。今回は果たして?
今さら言うまでもないが、GT300クラスは車種のバラエティに富んでおり、それぞれ個性的。だからこそ、GT500クラス以上にもてぎとの相性の良さ、悪さが明確に分かれるようだ。得意とするのは、メルセデスAMGやニッサンGT-R、ポルシェ911GT3R、ランボルギーニウラカンなど。逆に明らかに苦手とするのはマザーシャシーやホンダNSXだ。
中でもチームとしても抜群に相性がいいのが、蒲生尚弥/菅波冬悟組の#65 LEON PYRAMID AMG。昨年も第4戦で57kg積んで優勝しており、黒澤治樹監督が自らステアリングを握っていた時代も含め、もてぎでは表彰台に立てなかったレースの方が少ないぐらい。今回も得意とするタイヤ無交換作戦が決まれば、69kg積んだ今回も上位入賞は不可能とは言い難い。
GT-R勢では、藤波清斗/J.P.デ・オリベイラ組の#56リアライズ日産自動車大学校GT-Rがランキングのトップ。ここは72kg積んでいることもあり、着実にポイントを獲得することに徹するだろう。同じGT-R勢として、平中克幸/安田裕信組の#11 GAINER TANAX GT-R、星野一樹/石川京侍の#10 GAINER TANAX with IMPUL GT-Rにも、装着するダンロップタイヤの好調ぶりから、そろそろ来そうな予感もある。
また、こんな時期だから、雨でも降ろうものなら松井孝允/佐藤公哉組の#25 HOPPY Porscheの無双となる可能性も。ただでさえリヤエンジンということでトラクションの高さに定評があり、コースレイアウトにもマッチしているだけに、ウェットコンディションになったら鬼に金棒も同然。ウエイトもまだ12kgしか積んでいないこともあり、久々の表彰台が期待できそうだ。
台風の目は、横溝直輝が木村武史の代役を務め、ケイ・コッツォリーノと組んで走らせることとなった#9 PACIFIC NAC CARGUY Ferrari。このクルマももてぎとの相性は良く、コーナリングはもちろん、特にブレーキングに優れる特性が。BoPでパワーは控えめにされているため、前で抑えられるとレース展開は厳しくなるが、予選で上位につけられれば、逃げのレースとする可能性は高い。
文:秦 直之
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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