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モーター スポーツ コラム 2021年5月6日

2021スーパーフォーミュラ第2戦レビュー|「速さは証明できた」と福住仁嶺。歓喜の瞬間は、“お預け”

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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予選では圧倒的な速さをみせて初のPPを獲得した福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

開幕戦から激しいバトルが繰り広げられている2021年の全日本スーパーフォーミュラ選手権。4月24日・25日に鈴鹿サーキットで行われた第2戦も各所で手に汗握るオーバーテイク合戦が展開されたが、優勝争いに関しては明暗が分かれる結果となった。

富士スピードウェイでの第1戦は野尻智紀(TEAM MUGEN)がライバルを圧倒するパフォーマンスでポール・トゥ・ウィンを飾ったが、この第2戦で走り出しから好調だったのは、福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だった。

午前中のフリー走行からトップタイムを記録すると、Q1のBグループ、Q2ともにトップで通過し、最終のQ3では開幕戦ウィナーの野尻に0.196秒の差をつけて、参戦4シーズン目にして初のポールポジションを獲得した。

このパフォーマンスに、ライバルたちも“お手上げ”という様子、2番手につけた野尻もQ3では、フロントタイヤのみスクラブしたものを装着してタイムアタックを行うなど、様々な策を講じたが、結局は福住を逆転することはできなかった。

これまでは、随所で速さは見せながらも“トップ”というポジションに来ることができなかった福住。特にスーパーフォーミュラでは毎回のように悔しい気持ちでサーキットを後にしていた。それでも“今度こそは!”という気持ちで臨み、この鈴鹿大会でも金曜の搬入日から杉崎エンジニアと長時間にわたって話し込むなど、どこかいつもと違う気迫が感じられた。実際に本人もレースウィークに臨むアプローチを変えてきていた。

「今までは色んなことを考えすぎてしまったりとか、セットアップでも余計なことをしてしまったりとか、色々な邪念があったと思います。その中で“このままだったら絶対に行ける”という自信がありましたし、それがうまくいった部分でもあったのかなと思います」

いつもよりリラックスした状態で臨み、絶対にいけるという自信があったと予選後の記者会見で語った福住。

念願の初ポールポジションとなったが、意外にもパルクフェルメではガッツポーズも控えめで、冷静に振舞っていた。この時点で、すでに“決勝で勝つ”ということを考えていたという福住。翌日の決勝レースでも、しっかりと集中力を保っており、スタートから2番手の野尻を引き離すドライビングをみせた。

8周目を終えて、両者の差は3.0秒まで広がった。このまま何もなければ福住が勝ってもおかしくないというレース展開になると、誰もが疑うことはなかったのだが……9周目の西ストレートで右リアタイヤがバースト。マシンも致命的なダメージを負ってしまい、ピットインしてリタイアとなってしまった。

それまでは完全に福住が主導権を握っていたレースだけに、サーキット全体に衝撃が走った。

結果的に、これでトップに立った野尻が開幕2連勝を飾ることになったのだが、レースペースという点では福住に負けていただけに、優勝後も複雑な表情を見せていた。それほど、福住のパフォーマンスはすごかったということなのだろう。

「今日のレースは、正直僕のレースじゃないかな、というところがあります。序盤ですごい厳しいなと思っていたんですけど……福住選手とはSUPER GTで一緒のチームで走っていますし、彼の気持ちを考えると、素直に喜べないところもあります。でも、チームのみんなの頑張りもあるので、喜ばないといけないかなという葛藤もあります」

決勝記者会見ではSUPER GTのチームメートである福住を気遣った野尻(TEAM MUGEN)

初優勝へのチャンスを一瞬で失う形となった福住。しかし、公式映像のインタビューで「速さというのは証明できたと思います。今回の原因をちゃんと調べて、次のオートポリスでもチャンスがあると思うので、勝てるように頑張ります!」と力強く語っていたのが印象的だった。

優勝を飾ることはできなかったが、それでもポールポジションを獲得して、決勝でもライバルを圧倒できたということは、彼にとって何物にも変えがたい“手応え”になったようだ。

インタビューを終えてピット裏へ引き上げようとする福住に、結果としてはリタイアだったが、鈴鹿サーキットに訪れたファンを魅了するパフォーマンスをみせた福住。インタビューが終わると、グランドスタンドで観戦してたファンから、この週末一番の拍手が沸き起こった。

悲願の初優勝へ……福住仁嶺の挑戦は、続く。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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