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2021スーパーフォーミュラ第2戦プレビュー|開幕戦で垣間見えた“王者の底力”、得意の鈴鹿で復活の狼煙を上げられるか?
モータースポーツコラム by 吉田 知弘鈴鹿マイスターである山本走りに注目が集まる。
開幕戦から白熱したバトルが随所で展開されている2021年の全日本スーパーフォーミュラ選手権。今週末は鈴鹿サーキットでシリーズ第2戦が開催。国内モータースポーツでは恒例の「鈴鹿2&4レース」として、2輪レースの国内最高峰であるJSB1000との併催となる。
昨年のスーパーフォーミュラ鈴鹿大会は、変則日程で12月初旬の寒い時期での開催となり、コースレコードが大幅に更新されて盛り上がったが、今回は比較的暖かい4月下旬の開催な上に、今季は燃料リストリクターが昨年と比べて絞られているため、コースレコード更新の可能性はそこまで高くなさそうだ。
ドライバーズラインナップを見てみると、コロナ禍の影響でサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)が、まだ入国の目処が立たず、今回も中山雄一が代役参戦する。さらに、世界耐久選手権(WEC)に参戦する兼ね合いで小林可夢偉(KCMG)と中嶋一貴(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が欠場。小林の代役は開幕戦と同様に小高一斗が7号車をドライブし、中嶋の代役には元F1ドライバーであるジャン・アレジの息子、ジュリアーノ・アレジが務める。国内トップフォーミュラのデビュー戦に注目が集まりそうだ。
ジュリアーノ・アレジは国内トップフォーミュラのデビュー戦。スーパーフォーミュラ・ライツ選手権の第1戦と第3戦では3位表彰台を獲得した。
さらにB-Max Racing Teamは2台体制でエントリーすることが発表された。イヴ・バルタスはコロナ禍による入国規制の関係で、今回の参戦は難しいようだが、昨年も表彰台に乗る活躍をみせた松下信治の今季参戦が決定し、今週末もライバルを脅かす存在となるだろう。
前回の開幕戦では野尻智紀(TEAM MUGEN)が週末を通して強さをみせて、ポール・トゥ・ウィンを果たしたが、ライバルたちもしっかりと速さを見せており、この鈴鹿で逆転を狙っているのは間違いない。土曜日の公式予選から、0.001秒を争う僅差の戦いになっていきそうだ。
注目ドライバーを挙げると切りがないのだが、なかでも目が離せないのが、昨年のスーパーフォーミュラ王者で“鈴鹿マイスター”の異名を持つ山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)だ。2020年に2度目となる国内二冠を達成した山本。2021年はTCS NAKAJIMA RACINGに移籍したのだが、シーズンオフのテストから原因不明の不調に陥ってしまった。
鈴鹿で開催された昨シーズンの第5戦。山本はシーズン初優勝を果たした。
迎えた富士スピードウェイでの開幕戦でも復調ならず、予選Q1敗退。16番手スタートとなった決勝では、集団状態にあった序盤戦で、うまくオーバーテイクシステムを駆使して順位を上げていったものの、10周目のピットストップで左リアタイヤの交換に時間を要してしまい、約20秒近くタイムをロスしてしまった。これまでの流れの悪さに加え、さらに追い打ちをかけるような展開となってしまったが……ここから“王者の底力”が発揮された。
「ピットアウトした時は意外と冷静でした。調子が悪い時、ずっと頑張ってくれていたのがチームのみんなです。だから『ミスをして、何をやってくれているんだ!』という気持ちは全くなくて、逆に『頑張っていけるところまでいって、絶対にポイントを獲って帰ってきます』と無線で言って、ピットアウトしました」
そこから山本は、これまでの不調を感じさせないような好ペースで周回を重ね、一時はトップ集団をしのぐほどのラップタイムを刻んでいた。これにより、後半にピットストップしたライバルを次々と逆転し、気がつくとポイント圏内に浮上。求めていた最良の結果ではなかったものの、6位でフィニッシュし、しっかりとポイントを持ち帰ってきた。
レース後、チームスタッフ1人1人のもとに歩み寄り、感謝の気持ちを伝えた山本。それに対しメカニックから返ってきたのはピットストップで時間がかかってしまったことに対する謝罪の言葉だったという。
「僕は連日連夜頑張ってくれたことに対して感謝の気持ちを伝えたんですが、逆にメカニックのみんなからは『ピットストップで時間がかかってしまい申し訳なかった』と言われました。それと同時に『もっと頑張って、次は絶対に良くします』と言ってもらえたのは、すごく嬉しかったです。本当にこのチームに移籍して良かったなと思いました」
「鈴鹿は自分の得意なサーキットですし、チームとしても過去にポールポジションを獲得したり、レースでも昨年優勝しているサーキットなので、十分に戦えるデータはあると思います。開幕戦でも(チームメイトの)大湯選手が2位に入って、チームの力は高いところにあると思うので、そういったところを結集して……鈴鹿では勝ちたいです」
チームメイトの大湯はテストから好調を維持している。
苦しい状況の中でも、確実に“次に繋がるもの”を勝ち取ってきた山本。改めて、こういうことができるのが、彼の真の強さなのかもしれない。シーズンオフのテストでは、深刻な雰囲気も垣間見得たTCS NAKAJIMA RACINGだが、この1戦を経験したことで、チームとドライバーの絆は確実に深まったことだろう。
その上で迎える第2戦鈴鹿。もちろん、強力なライバルも多く、一筋縄ではいかないだろうが、王者山本がどんな進化をみせるのか……。注目の1戦になりそうだ。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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