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岡山でのSUPER GT開催は2年振りとなる。
2021シーズンのSUPER GTが、間もなく岡山国際サーキットで幕を開ける。昨年はコロナ禍によって大幅なスケジュールの変更を余儀なくされ、富士スピードウェイと鈴鹿サーキット、ツインリンクもてぎのみでシリーズが開催されたため、岡山では2年ぶりのレースということになる。
昨シーズン、GT500クラスのチャンピオンに輝いたのは、RAYBRIG NSX-GTをドライブする山本尚貴と牧野任祐。しかし、その決定が極めてドラマティックであったことを、誰もがまだ記憶しているはずだ。今シーズンも、そして開幕戦も、予想をはるかに超える戦いが繰り広げられることを期待したい。
公式テストでは、Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTが最速
岡山テストでベストタイムをマークした16号車 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT
今年のGT500クラスは、レギュレーションによってボディ形状の変更は許されず、またエンジンにも開発規制があるため、マシンに関して大きな変化はない。むしろ、燃料流量リストリクター径が全車に対して絞られているため、パワーダウンは免れず、レコードタイム更新の期待は薄そうだ。
しかし、見えない部分での改良は絶えず重ねられていることもあり、昨年と同じ状況であることはあり得ない。また、冒頭でも触れたとおり、昨年は岡山でレースが行われていないので、未知の要素は普段のレース以上に大きいとは言える。
そこで参考にすべきは、3月6〜7日に行われた公式テストだが、チームそれぞれメニューが異なることから、テストで好タイムが出ているからといって、そのまま本番にも反映されるとは、一概に言い切れないものだ。それでも、2日間の総合ベストタイムをマークした、Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTから話を進めていくこととしたい。
このチームには、ふたつの変化がある。ひとつは笹原右京のチームメイトが、GT300クラスから昇格を果たした、大湯都史樹に変更された。そして、もうひとつはタイヤをダンロップに改めたことだ。昨年半ばからGT300クラスを含め、ダンロップユーザーの躍進が目立っており、公式テストにおいても実を結んだと考えることはできる。笹原と大湯はホンダのレーシングスクール、SRS-Formulaの同期生でコミュニケーションは問題なく、ふたりの若さあふれる走りで、いきなり優勝をもぎ取ることも不可能ではなさそうだ。
2番手タイムは、DENSO KOBELCO SARD GR Supraのヘイキ・コバライネンと中山雄一によって記されている。このチームは体制不動、安定のGRスープラ+ブリヂストンのパッケージで挑む。決勝での安定感には定評があるだけに、予選で上位につけることができれば、期待はぐっと高まってくる。そして同パッケージで3番手は、KeePer TOM’S GR Supra。ただ本来なら、平川亮のパートナーはサッシャ・フェネストラズになるはずだったが、実はまだ来日できていない。そこで公式テストから、GT300クラスで参戦するはずだった、阪口晴南が起用され、開幕戦もドライブすることとなった。そのことが吉と出るか、凶と出るか……。
岡山テストでは2番手タイムを記録した39号車 DENSO KOBELCO SARD GR Supra
4番手はチャンピオンの証、ゼッケン1をつけて臨むSTANLEY NSX-GT。このチームも山本の、本来のパートナーである牧野は療養が続いて開幕戦に出場できず、武藤英紀が代役を務めることになる。とはいえ、武藤も経験豊富なドライバー。山本のドライビングスタイルと大きな違いさえなければ、意外な化学変化も期待できるのではないか。
チャンピオンゼッケンを背負い、カラーリングも一新された1号車 STANLEY NSX-GT。開幕戦では牧野の不在をベテラン武藤がカバーする。
ニッサン勢のトップは、8番手につけたカルソニックIMPUL GT-R。平峰一貴のパートナーは、松下信治に改められた。正直、このチームに限らず、ニッサン勢が下位におさまっていたのは、意外な感もあった。前述のとおり今年のGT500クラスはボディ形状の変更が許されておらず、その意味においてエアロをテクニカルコース重視にしているGT-Rにとって、岡山では有利に働くと思われていたからだ。
松下信治の電撃移籍で注目を集める12号車 IMPUL GT-R
だからこそ、テストはあくまでテストということなのか? 公式テストでロングランを優先していたとするならば。今年のGT500は、やはり蓋を開けてみなければ分からない。これだけが今、明らかなことだ。
なお、この他にドライバーラインアップを改めたのは、ENEOS X PRIME GR Supra(ROOKIE Racing)が、大嶋和也のパートナーが山下健太となって、2019年のチャンピオンコンビが復活。リアライズコーポレーションADVAN GT-Rは、高星明誠のパートナーが佐々木大樹に。今年は比較的変化の少ないシーズンでもある。
GT300クラスではグランシードランボルギーニGT3がトップ
300クラスでトップタイムをマークした87号車 グランシード ランボルギーニ GT3
GT500クラスは燃料流量リストリクターが全車に装着義務となったが、GT300クラスには特別BoPが定められ、総じて40kg前後、重たくされている。両クラスとも、近年高まりつつあるスピードに対し、安全面から抑制を狙いとしているようだが、GT300クラスの場合、重量増は単純にスピードを抑えるだけでなく、ブレーキ性能も低下させてしまうので、少々心配ではある。そういったドライビングも含めて、抑制すべしということなのだろう。
さて、岡山の公式テストでGT300クラスのトップは、グランシードランボルギーニGT3だった。このチームはドライバーふたりが揃って移籍。ベテランの松浦孝亮と若手の坂口夏月が、期待以上のコンビネーションを見せていた。松浦の決めたセットが、坂口の走りにどんぴしゃり。さっそく化学反応が表れた格好であり、開幕戦に十分期待がかかる。
だが、全体的な印象として、JAF-GT改め、GT300勢の好調ぶりがテストでは目立っていた。初日のトップは吉田広樹と川合孝汰の埼玉トヨペットGB GR Supra GTで、2番手は嵯峨宏紀と中山友貴のTOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT。2日目のトップはグランシードランボルギーニGT3ながら、2番手には井口卓人と山内英輝がドライブする、ニューマシンに改められたばかりのSUBARU BRZ R&D SPORTだったからだ。まだ完全に仕上がってはいないというが、それでいてこの順位はライバルにも脅威に映ったはず。
ニューマシンでの勝利をファンは開幕戦から期待している。
逆にいえば、FIA-GT3勢はBoPの縛りがきつくなることを恐れ、手の内を完全には明かさなかったということも考えられる。やはりテストは、あくまでもテストなのか。ただ、国内屈指のテクニカルコースである岡山では、コーナリング性能に優れるGT300との相性は悪くない。その意味では、額面どおりにとらえてもいいのかもしれない。
一方、いきなり優勝は難しいかもしれないが、シーズンを通じてGT300クラスで最も注目すべきは、Team LeMans Audi R8 LMSだ。このマシンを狩るのは本山哲と片山義章。そう、帝王こと、本山がSUPER GTに復帰を果たすこととなった。2018年限りでGT500クラスからは一線を退いたものの、その後もスーパー耐久にスポット参戦し、また昨年の後半にはフォーミュラリージョナルやスーパーフォーミュラ・ライツにも出場。再びレーサー魂に火がついたのは間違いない。パートナーの片山はルーキーであり、また本山がゼネラルマネージャーを兼ねるチームは、まったくの新体制であるため、当面は苦戦を強いられるかもしれないが、それぞれGT300クラスの戦い方をマスターした時には、とんでもない爆発力を伴うだろう。
“帝王” 本山哲の復活はファンを熱くさせること間違いない。
すべては開幕戦を終えてから……。勝負事は、やはり蓋を開けてみないと分からない。
文:秦 直之
秦 直之
大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。
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