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アンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)
600ccのスポーツバイクを中心に戦う「FIMスーパースポーツ世界選手権」は残り2戦。第7戦の舞台はフランスのマニクールサーキットでのレースです。第7戦の模様を「J SPORTS」でオンエアします。
さて、今季は残り2戦なのですが、前戦のカタロニアサーキットのレースでアンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)が早くも年間チャンピオンを決定しました。今季、開幕から9連勝していて、シリーズのルーキーであるにも関わらず、どのサーキットでも勝利してきたロカテッリですから、今季のチャンピオンになるのは誰もが納得と言ったところでしょう。
しかし、アンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)の連勝記録はカタロニアのレース1でついに土がつきました。ロカテッリに勝ったのはマヒアスでも、エッテルでも、クルーゼルの代役として出場したスミスでもありません。なんと、今季1度も表彰台に立っていない、1度もトップ5でフィニッシュしていない、トップ10でのフィニッシュすらない17歳のライダー、アンディ・ヴァードア(ヤマハ)が優勝したのです。
ドライコンディションで始まり、アンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)がリードし、カワサキ、ヤマハのマシンがそれに続くといういつものパターンでレースが進行していましたが、レース終盤に雨が降り出し、一気に土砂降りに。
スリックタイヤの走行は無理と判断し、多くのライダーがレインタイヤに交換した後に、レースは赤旗が掲示。そのままレース成立となったのですが、なんとタイヤを変えずにスリックでコースにステイアウトしていたアンディ・ヴァードア(ヤマハ)が奇跡的な優勝を飾ることになりました。
アンディ・ヴァードア(ヤマハ)はフランス出身の17歳のライダーで、2018年から下位クラスのスーパースポーツ300に参戦。昨年ランキング4位になり、今季からFIMスーパースポーツ世界選手権へとステップアップ。それまでの最高位は13位ということで、これは誰も予想だにしない優勝でした。ヴァードアはシンデレラボーイですね。
とはいえ、アンドレア・ロカテッリ(ヤマハ)が続けてきた連勝街道の記録が天候に翻弄された形とはいえ止まってしまったのは残念です。そのレースもトップを走っていましたし、レース2でもしっかり優勝しましたからね。ロカテッリの全戦全勝記録を見たかったです。
ロカテッリの連勝は9連勝でストップしましたが、開幕から連勝を続けてシリーズを制圧するということは、2輪ロードレースの世界では滅多に起こることではありません。最近では2014年にマルク・マルケスが開幕10連勝を達成したことがありましたが、シーズン後半は勝てないレースもいくつかありました。
MotoGPなどのワンオフのワークスマシンのレースとは違い、スーパースポーツ世界選手権はプロダクションバイク(量産車)ベースのレースです。ライバルも同じ道具を使って行うレースで、これだけシーズン中に強さを発揮するケースは非常に珍しいと思います。しかも、ルーキーばかりではなく、ジュール・クルーゼル(ヤマハ)ら経験豊富なベテランがたくさん居る中ですからね。ロカテッリはスーパースポーツ世界選手権に来て、その能力の高さを結果で知らしめることになりました。
さて、チャンピオンは決定してしまいましたが、次はランキング2位争いが焦点となります。ルーカス・マヒアス(カワサキ)が3レース連続の2位表彰台でランキング2位(159点)となり、第6戦カタロニアを欠場したジュール・クルーゼル(ヤマハ)がランキング3位(146点)に降格。ランキング4位にはマヒアスのチームメイト、フィリップ・エッテル(カワサキ)が124点で迫ります。
ジュール・クルーゼル(ヤマハ)は怪我の回復がマニクールには間に合うとコメントしていましたが、チャンピオンがロカテッリに決まった今は無理をしないという選択もあるかもしれません。となると、エッテルにもランキング3位に浮上する可能性が出てきます。ここ数年、苦しんできたカワサキ勢としてはシリーズランキングを可能な限り上位で終えるためにも、マニクールは重要なレースになりそうです。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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