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ジョナサン・レイ
「FIMスーパーバイク世界選手権」はいよいよ終盤の残り3ラウンドという段階に入ってきました。伏兵ウイナーも誕生するなど、コロナ禍ならではの変則的かつ予測不可能な2020年。そのチャンピオン争いで非常に重要な戦いが、スペインのカタロニアサーキットで開催されます。「J SPORTS」では9月19日〜20日に開催となる第6戦の模様をオンエアします。
史上初めて同一サーキットでの連戦がアラゴンで開催された第4戦、第5戦。合計6レースの中で、優勝はジョナサン・レイ(カワサキ)が3勝、スコット・レディング(ドゥカティ)が2勝となりましたが、レディングは第5戦レース1がリタイアとなり、チャンピオンを争う両者のポイント差は36点と広がってしまいました。
残り3戦はカタロニア(バルセロナ)、マニクール、エストリルでのレースが設定されていますが、近年「スーパーバイク世界選手権」のレースが行われているのはフランスのマニクールだけ。中でも今回のカタロニア(バルセロナ)は意外にもスーパーバイクは初開催のサーキットです。
カタロニアサーキットについてはF1スペインGP、MotoGPカタルーニャGPでおなじみのサーキットです。地名はバルセロナとなっていますが、街中にあるわけではなく、中心地から15kmほど北の近郊に位置する1周約4.6kmのコースです。
スーパーバイク初開催とはいえ、1996年からカタルーニャGPを開催していますし、多くのライダーがレース経験がありそうなイメージですが、英国スーパーバイク選手権やヨーロッパのスーパーストック選手権などプロダクションバイクレース出身者が多いため、レース経験があってもかなり昔というライダーが数多くいます。
そんな中でカタロニアを走り慣れたライダーといえば、やはりMotoGP経験者。ランキング2位のスコット・レディング(ドゥカティ)は2018年までMotoGPで活躍していましたし、2015年のカタルーニャGPでは7位フィニッシュを果たしています。ジョナサン・レイがおそらくカタロニアでのレース経験がないことを考えると、レディングは今回ポイント差を詰める良いチャンスになるかもしれません。
また、スペイン人ライダーのアルヴァロ・バウティスタ(ホンダ)はカタロニアを得意とするライダーです。125cc世界チャンピオンを獲得した2006年はポールポジションから優勝。2009年には250ccクラスで優勝。MotoGPクラスでは表彰台は無かったものの、多くのレースでシングルフィニッシュを果たしています。ホンダCBR1000RR−Rも表彰台を獲得し、ポテンシャルをあげて来ていますから、今回のカタロニアでは自力での表彰台あるいは優勝も期待したいですね。
今季、ホンダに移籍したバウティスタに代わってドゥカティのエースになったのが、スコット・レディング(ドゥカティ)。ここまでで4勝をマークするなど記録上はスーパールーキーとなっていますが、彼自身はグランプリライダーとして10年以上の経験があり、昨年は英国スーパーバイク選手権でドゥカティ・パニガーレV4Rに乗ってチャンピオンを獲得したライダーですから、ちょっと別格のキャリアです。
そんな中、レディングの勢いに続けとばかりに第5戦・アラゴンで突然の輝きを見せたライダーがいました。ドゥカティを走らせるプライベートチーム「Team GoEleven」から参戦するイタリア人、マイケル・ルーベン・リナルディです。なんと第5戦のレース1で初優勝を飾ったほか、王者のジョナサン・レイとトップ争いをして第5戦は3レース連続の表彰台を獲得したのです。
24歳のイタリア人ライダー、リナルディは参戦3年目ですが、これまでの最高位は5位。表彰台すら経験していないライダーが突然トップ争いに加わって、優勝するというセンセーショナルな出来事は多くのファンを驚かせました。
リナルディはヨーロッパ・スーパーストック600、ヨーロッパ・スーパーストック1000などプロダクションバイクのレースで活躍し、2017年にはヨーロッパ・スーパーストック1000の王者に輝きます。チャンピオン争いのライバルだったのはなんとトプラック・ラズガットリオーグル(ヤマハ)。のちに2人ともスーパーバイク世界選手権にステップアップしますが、プロダクションバイクレース出身のライダー達が互いに刺激し合い、2人とも5度の王者レイとトップ争いを展開するまでになりました。
ワークスチームのチャズ・デイビス(ドゥカティ)が今季まだ1勝もマークできていない状況の中、ドゥカティの若手育成枠で2018年にデビューしたリナルディが一気に売り手市場に躍り出てきた印象です。カタロニアでも光り輝く走りが見られるか注目です。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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