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いよいよ始まる“令和の日本最速ドライバー決定戦”
新型コロナウイルスの影響で開幕が延期されていた2020全日本スーパーフォーミュラ選手権がいよいよ8月29日~30日にツインリンクもてぎで開幕を迎える。
現段階では11チーム20名のドライバーが参加予定となっているがコロナ禍の影響で一部海外のドライバーの参戦が難しい状況になっている。それでも、優勝候補やチャンピオン候補を挙げれば切りがないほど注目の“強者”たちが集まった。
昨年の開幕戦、デビュー戦でポールを獲った牧野。進化を問われる2年目の活躍に期待したい。
2020年の注目ポイントとしては勢いのある若手ドライバーが多数参戦しているということだ。なかでもフル参戦2年目を迎える牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)、福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)の3人は、すでに開幕しているスーパーGTでも速さを見せている。このスーパーフォーミュラでも自身の初優勝、そしてシリーズチャンピオン獲得に向け闘志を燃やしており、開幕戦からポールポジション争いや優勝争いに名乗り出てくる可能性が高い。
大湯は3月の富士テストでは連日上位に入りこむなど、ルーキーながら安定した走りをみせた。
それだけでなく今シーズンから参戦する“ルーキーたち”も目が離せない。大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)は3月に行なわれた富士公式テストで速さをみせており、5月に行なわれたバーチャルレースでは先輩たちを相手に一歩も譲らない貫禄ある走りを披露。特に一発の速さは自信があるとのことで、開幕戦からどんな走りを見せてくれるのか注目である。また当初はユーリ・ビップスが乗り込む予定だったTEAM MUGENの15号車だが、新型コロナウイルスによる日本への入国制限の影響で来日が叶わず、開幕戦は笹原右京が代役参戦する。彼も今年スーパーGTのGT500クラスに抜てきされ、いきなり上位に食い込む速さをみせるなど存在感溢れる走りを披露している。以前から「F1を目指す」ということを公言している笹原にとっては、この代役参戦は千載一遇のチャンスにもなり得る。それだけに限られた走行時間の中でどんなパフォーマンスを発揮するのか、楽しみだ。
SUPER GTでは開幕戦から500クラスデビューイヤーとは思えないアグレッシブ走りをみせているサッシャ。
もう1人、注目のルーキーといえば昨年の全日本F3選手権でシリーズチャンピオンを獲得したサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)。非常に勉強熱心なドライバーで、日本でのレースを成功するために昨年から生活拠点を日本に移し、日本語も勉強中。さらに走行データやオンボード映像も全て目を通して自身の走りやチームメイトの走りを分析するという徹底ぶりだ。その努力がスーパーGTでは早くも発揮され、開幕3戦連続で表彰台を獲得しポイントリーダーとなっている。今度はスーパーフォーミュラで彼のパフォーマンスがどこまで発揮されるのか。目が離せない。
参戦4年目となり今年にかける想いは強い、山下健太。
もちろん注目どころは若手ドライバーだけではない。SF参戦4シーズン目を迎える山下健太(KONDO RACING)は昨年末から「2020年はSFのタイトルを獲りたい」と力強く語っていたドライバーのひとりである。彼はFIA世界耐久選手権(WEC)にも参戦しており、8月15日のスパ6時間に参戦すると帰国後の14日間の自己隔離期間の関係でSF開幕戦は出られない可能性もあったが、日本レースプロモーション(JRP)をはじめ関係機関の尽力もあり、レースウィーク中の行動を徹底的に制限・管理するという条件付きで開幕戦への参戦が可能となった。今年は3号車の担当として阿部和也エンジニアが加入。山下とは昨年のスーパーGT(GT500)で組みチャンピオンを獲得している実績もあるだけに、今年はどんな戦いを開幕戦から見せてくれるのか、目が離せない。
この他にも開幕戦の舞台となるツインリンクもてぎを昨年制した平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)や昨年の最終戦で力強い走りをみせた野尻智紀(TEAM MUGEN)、スーパーGTで好調な走りを見せている関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)の活躍にも注目なのに加えて、チャンピオン経験を持つ中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)や石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)が変則スケジュールとなった2020シーズンでどう対応してくるのかも楽しみなところである。
もちろん、ここでは紹介しきれないくらいの有力候補がひしめいている2020年のスーパーフォーミュラ。特に新型コロナウイルスの影響で5ヶ月に及ぶインターバルができたこともあり、例年以上に予想がしづらく、誰が優勝してもおかしくないようなシーズンになっていくだろう。
その中で筆者が密かに期待しているのが、昨年・一昨年と最終戦まで激闘を繰り広げたニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM’S)と山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)の“再戦”だ。
過去2シーズンはお互い0.001秒を削りある緊迫かつ白熱したチャンピオン争いを繰り広げてきたが、何より印象的なのが、自分が勝っても負けても相手の健闘を必ず讃えるという“リスペクトの精神”。シーズン終了後に健闘を讃え合いガッチリと握手する2人の姿に胸打たれたというファンも少なくないだろう。
最終戦で悔し涙を流した山本。最終戦までもつれ込む痺れる争いを今年もファンは期待している。
2018年や山本が0.6秒差で競り勝ち、2019年はキャシディが最終戦でミスのない走りをみせ栄冠を手にした。そして2020年はどうなるのか……。
さぁ、待ちに待った“日本最速ドライバーを決める戦い”が、いよいよ始まる。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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