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モーター スポーツ コラム 2020年8月14日

2020SUPER GT第2戦レビュー|FR化したNSX-GTが初優勝に湧いた灼熱の富士。その裏で“GT500の厳しさ”を知った1人のドライバー

モータースポーツコラム by 吉田 知弘
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【ホンダNSX-GTが開幕戦のリベンジ、17号車の塚越/バケットが完璧なレース運びを披露】

17号車/塚越

GRスープラがGT500・GT300の両クラスを制した2020スーパーGT開幕戦から3週間。同じ富士スピードウェイを舞台にシリーズ第2戦が行われた。GT500クラスではトップ5を独占する活躍を見せたトヨタ勢に対し、ホンダ勢と日産勢がどう巻き返すかに注目が集まったが、反撃の狼煙を上げたのはホンダ勢だった。

8日の公式予選では野尻智紀/福住仁嶺組のNo.8 ARTA NSX-GTがポールポジションを奪った。特にQ2の野尻が渾身のアタックでライバル陣営を全く寄せ付けないタイムを記録。開幕戦で味わった悔しさを力に変えた快走だった。

開幕戦でチームメートに負けた悔しさをバネに快心の走りを見せた野尻。

「前回は予選から個人的に悔しい思いをしました。ポールを獲りに行くつもりで獲れなかったこともそうですけど、福住選手の方がコンマ2秒くらい速かったんです。タイヤの状況だったり、その時のコンディションにもよると思いますが……最近の僕の中ではかなり大きい悔しさを味わっていました。あと決勝でもズルズルと順位を下げてしまうようなレースとなり、とても悔しい思いをしたので、福住選手とチームとで『何が良くないか?』というのをものすごく細かいところまで突き詰めて、ここまで進んできました」

しかし、決勝になって強さを見せたのは2番手からスタートした塚越広大/ベルトラン・バケット組のNo.17 KEIHIN NSX-GT。序盤から8号車に食らいつき15周目にトップに浮上した。36周目に8号車がスピンで脱落して以降は完全に独走状態となり、最終的に15.7秒もの大差をつけ、チームとしては2018年開幕戦以来となる優勝を飾った。

17号車はバケットが加入した昨年から常に上位を脅かす速さをみせていたが、決勝では戦略ミスや不運に見舞われることが多く、あと一歩で勝利を逃していた。心機一転で臨んだ今季開幕戦もマシントラブルで途中リタイヤ。彼らもここまでに積もった“悔しさ”を勝利への原動力に変えて、今回のレースに臨んでいた。

「昨年からバケットと組んで速さはあったけど勝てなかったので、『今年は勝とうね』と(お互いで)言っていました。昨年に関しては速さを活かせる戦略という部分が足りなかったのではないかとチームとの話し合いの中でも出ました。そこでレースの展開であったり、タイヤ交換のタイミングとかをもう一度しっかりと見直して、より自信を持って作戦を立てられるよう準備をしてきました。堂々とレースができたのが良かったんだと思います」

優勝会見では、次戦に向け「鈴鹿だけはなかなか上手くいかないことが多くある。」と語った塚越だが、良い流れで鈴鹿に臨めるはずだ。

そう語った塚越だが、過去の苦い思い出を払拭することはできず、チェッカーを受けるまでは不安がつきまとうレースだったという。

「17号車というか僕自身は、過去にもこういう(トップを快走している)時に何か起きたりしたので、最後まで油断できませんでした。後ろとのギャップがあっても何が起こるか分からないレースだったので、最後まで集中して走りました。それこそチェッカーを受けたことを何回も確認したくらいで『もう1周残っているんじゃないか?』と思うくらい心配でした」

また今回の勝利はホンダ勢にとっても特別なものとなった。今季からドイツツーリングカー選手権(DTM)との共通車両規則『Class1』に準拠するため、NSX-GTのFR化を決断した。その新しい車両での初勝利ということに、佐伯昌浩ラージプロジェクトリーダーも胸をなで下ろしている様子だった。

「社内で色々議論はありましたが、Class1規則にNSXで参戦を認めてもらったということで、個人的にも“早く優勝を”という使命感がありました。そこに対してひとつクリアしたということで、安堵しています」

「ただドライバーもエンジニアも含めて皆んなが納得したクルマが作れていたかというと、そうではないと思います。その辺をまとめていくのがHRDの役目でもあるので、そこに対してはまだまだやっていかないといけないなと思っています。(初優勝できて)嬉しい部分と、まだまだ頑張らなければなと思う部分と、少し複雑な気持ちではありますね」

17号車の独走優勝で幕を閉じた第2戦だが、2位以下を見てみるとトヨタGRスープラ勢が上位を占める結果となった。ポイントランキングでもトップ3を独占している状況で、依然として“スープラ優勢”の流れは変わっていない。佐伯LPLも、新NSX-GTのパフォーマンスをさらに上げるべく、さらなる努力が必要だと気を引き締めていた。

【急きょGT500に参戦した阪口晴南が得たもの】

2~4位はスープラ勢と開幕戦に引き続き強さをみせた。

ホンダNSX-GTの今季初優勝で湧いた第2戦だが、その一方で今注目の若手ドライバーがGT500デビューを果たした。今季No.96 K-tunes RC F GT3からGT300クラスにフル参戦している阪口晴南だ。

ぶっつけ本番とは思えない走りを予選で見せた阪口晴南。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で外国人の日本への入国規制が続いており、今回も数名の外国人ドライバーが来日を断念することとなった。その中には元F1ドライバーでGT500チャンピオン経験もあるヘイキ・コバライネンも含まれていた。彼が今季ドライブする予定だったNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supraには急きょ山下健太が第3ドライバーとして登録することになり、第1戦で代役出走した。しかし山下も世界耐久選手権(WEC)への参戦のためヨーロッパに戻ることになり、第2戦の代役は阪口が務めることになったのだ。

事前にGT500マシンをテストする機会がなく、土曜日の公式練習が初乗車という“ぶっつけ本番”の状況だった阪口。それでも予選Q2ではGRスープラ勢で最上位となる3番手タイムを記録。周囲を驚かせたとともに、決勝での活躍に期待が高まった。

しかし、そう簡単に結果を出せるほど甘くないのがGT500クラス。後半スティントを担当した阪口は“国内トップドライバーとのレベルの高さ”を痛感することとなった。ピットアウトの際にエンジンストールがあり、一瞬のタイムロスはあったものの、ポジションを落とすことなくコースに復帰した阪口だったが、先にピットを済ませていたNo.14 WAKO’S 4CR GR Supraの坪井翔、No.37 KeePer TOM’S GR Supraの平川亮に相次いで追い抜かれると。残り10周のところでNo.100 RAYBRIG NSX-GTの山本尚貴の先行を許した。7番手でチェッカーを受けたが、No.12 カルソニック IMPUL GT-Rが接触行為で40秒加算のペナルティを受けたため最終結果は6位だった。

「今回は自分の課題が浮き彫りになりましたし、今後がんばるべきポイントをもっとわきまえた方がいいなと思いました。GT300が絡む時の走らせ方とか、そういう駆け引きなどで順位がひとつふたつと変わっていきます。そういったところのペース配分というのがトップでベテランの方は上手なので、その辺りを学ばないといけないなと思いました」

「まだまだ成長しないといけないなと思った良い機会だった」と語った阪口。500での経験を糧にステップアップを果たして欲しい。

異なるクラスと混走しながらバトルをしていかなければならないのがスーパーGTの特徴ではあるのだが、その中でGT500クラスで競り勝っていくには、よりレベルの高い判断力や走らせ方が要求されるのだ。39号車の脇阪寿一監督も、今回のレースは阪口にとって良い経験になったと振り返った。

「レースではGT500のレベルの高さを理解したんじゃないのかなと思います。周りに山本や平川がいるという状況の中で走って、ほんのちょっとした部分での違いの積み重ねという(シビアな)戦いを彼は今回学べた。彼の経験としては素晴らしいレースになったんじゃないかなと思います」

阪口にとっては悔しいレース内容となってしまったが、これを機にさらにレベルアップしようと奮起の材料にもなった様子。「まだまだ成長しないといけないなと思った良い機会だったので、今回の経験は大きな財産になったと思います」と前を向いていた。

39号車はコバライネンの再入国許可が下りたため、第3戦からは当初の体制に戻すことになり、阪口は96号車に戻ってGT300クラスに参戦する。今回の経験を糧にさらなる成長を遂げた阪口が、いつかまたGT500クラスに挑戦する日が来るのを……今から楽しみにして待ちたいと思う。

文:吉田 知弘

吉田 知弘

吉田 知弘

幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ

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