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最終戦まで白熱した2019シーズンのSUPER GT(GT500クラス)チャンピオン争い。その中で“数年に一度”と言っても良いほどの名バトルが生まれた。山下健太(No.6 WAKO’S 4CR LC500)と関口雄飛(No.36 au TOM’S LC500)の攻防戦だ。
このバトルの結果がシリーズチャンピオンの行方を左右するものだっただけに、大きな注目を集め、手に汗握りながら観戦していたというファンも多かったことだろう。
その時、山下と関口は何を考えていたのか? レース後のふたりのコメントをもとに、今回のオーバーテイク劇をそれぞれの目線で振り返っていく。
53周で争われた最終戦もてぎラウンド。各車がドライバー交代を終え、30周を過ぎた段階でGT500クラスは36号車(関口)がトップを走行、そこにNo.37 KeePer TOM’S LC500(平川亮)、6号車(山下)が続くというレースが展開だったが、状況が一変したのは32周目だった。
3コーナーに差し掛かった際、36号車の関口がGT300クラスに詰まった隙をついて37号車の平川がインに飛び込みトップが入れ替わった。予選では他を圧倒する走りを見せ、決勝でも前半スティントまでは完璧な走りを見せていた36号車だが、関口のスティントになって、いくつかの問題を抱えていたという。
「特にリヤが滑ってトラクションをかけられない状況が続きました。37号車に抜かれた時もけっこう辛かったですが、そこから5周くらいしてさらにキツくなってしまいました。前日からロングランのペースも良かったんですけど、決勝はタイヤのタレがあったなという感じ。あと燃費も厳しくて、最後はずっと燃費走行をしていました。普通は(燃料が)足りるはずなんですけど、今回は急に(燃料が足りないかもしれないと)言われました」(関口)
#山下健太 選手の追い上げでWAKO'S が3位浮上
— J SPORTS❤️モータースポーツ (@jsports_motor) 2019年11月3日
しかし一瞬のスキをついてKeePerがauをパス
これでまた状況が一変!!
どうなるGT500チャンピオン争い!?
SUPER GT 2019 第8戦 ツインリンクもてぎ
配信ページ&購入はこちらhttps://t.co/34TC2mOeUa#supergt #jspoms pic.twitter.com/YWCrSQ91wm
ただ、同じTOM’S同士での順位交代。もし37号車が優勝し6号車が3位以下でフィニッシュすれば、平川/キャシディ組の逆転チャンピオンとなる。それだけに、このトップ交代を“チームオーダー”と捉える人も少なくなかった。それを実際に真後ろで見ていた山下も、このようなことを考えたという。
「(ポジションの入れ替えは)やるだろうなとは思っていましたが、実際にそれを目の前で見たら『本当にやりやがったな!!』と思って、スイッチが入りました。あの時に関口選手が少しリズムを崩している感じだったので、その隙を狙おうとしましたが前に出られませんでした」(山下)
その後、何度も横に並びかけようと試みた山下だが、ここでは関口を攻略することができなかった。そこから2台はしばらくこう着状態が続いた。
「ずっとチャンスを伺っていましたが、やっぱり(GT300の絡みがない)単独で走ると、ついていくのが精一杯になってしまうので、ずっとGT300が変なタイミングで詰まらないかを見ていました。そこしかチャンスはないと思っていました」(山下)
「今回は本当にGT300クラスとの巡り合わせがとにかく悪くて3コーナー、S字、最終コーナーで全部引っかかってタイムロスしていました。レース終盤は全部GT300に引っかかったのが原因で後続のマシンに追いつかれてしまいました。本当にタイミングが悪すぎました」(関口)
そして迎えた38周目、山下に最大のチャンスが到来した。ヘアピンに差し掛かるところで関口が2台のGT300車両に引っかかったのだ。コーナー進入の段階でGT300車両を処理できなかった関口は、まずは後ろに迫っていた山下からどう逃げるかを考えていた。
「ヘアピンのところでしっかり相手のスピードを殺して、そこから(バックストレートで)逃げようとしましたが……ちょっと向こうの方がスピードが速かったですね」(関口)
ただ、関口の心理を山下も読んでいた。
「(ヘアピンで)詰まったは詰まったんですけど、関口選手がそれ以上にスピードを落としてきて、僕のスピードを殺そうとしているなというのが分かりました。あそこは2速のパワーバンドから外れるくらいまで減速しますが、そこでさらにスピードを落とされたら、自分も立ち上がりが遅くなってしまうので、そんなの(目の前に36号車がいようが)関係なくアクセルを踏んで……結果的にちょっと押していたと思います。それでもアクセルは緩めずにバックストレートに行きました」(山下)
山下のひと押しがあったからなのか、ストレートでの加速力は6号車の方が上回っていた
「ヤマケンがアウト側に振ったので僕も抑えにかかったら、フッと逆を突かれて……そのままサイドスリップが効くところまで入り込まれてしまいました。(6号車が)切り返した時の加速を予想していなかったというか、さすがサイドスリップが効くところまでは来ないだろうと思っていたので、一瞬の隙を突かれた感じでした。自分のミスといえばミスですね」(関口)
「関口選手がずっとインを押さえていて、僕はアウト側へ行くしかありませんでした。でも予想外なことに関口選手がそこでアウトに寄せてきたんですよ。その時にイン側にわずかな隙間ができて『お、空いた!』と思ってイン側に飛び込みました。そこがちょうどサイドスリップが効く位置だったんですよね。そのまま加速して90度コーナーにいけたので、うまく行きましたね」(山下)
ダウンヒルストレートでの一瞬のクロスライン……。山下はあの瞬間が勝敗を分けた瞬間だと語った。
「もし関口選手がアウトに振らずにインを守っていたら、僕はアウトしか行き場がなかったので……もしかしたら抜けなかったかもしれません」(山下)
そのまま90度コーナーでインからオーバーテイクを決めた山下だが、ブレーキをロックさせてしまい若干オーバーラン。その隙をついて関口がクロスラインをかけ最終のビクトリーコーナーでの再逆転を狙った。そのままお互いに一歩も引かなかった結果、2台は接触しコースオフしながらコーナーを立ち上がっていった。
WAKO'S #山下健太 選手が行った❗❗
— J SPORTS❤️モータースポーツ (@jsports_motor) 2019年11月3日
au #関口雄飛 選手と激しいバトルを制しオーバーテイク❗#脇阪寿一 監督も机を叩く❗
最終的にどういう判定になるかわかりませんがアツすぎる❗❗❗
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「(最終コーナーでは)ヤマケンが止まれないような速度で入ってきて、ちょっと接触もありました。正直、ヤマケンはうまいですね。あまり他人のことを言いたくはないですが、これが他の選手だったら押さえられたかもしれません、今回のヤマケンはすごかったとな思いました」(関口)
「絶対に引かないと決めていきました。やっぱりレースは人と争わなければいけなくて、その人(相手)より強い気持ちを持っていないと抜きに行くこともできないし、守ることもできない。不利な状況に追い込まれた時に、相手より気持ちを強く持っていないと勝てないというか、そこ(目の前の困難)をくぐり抜けられないと思いました。特に今回のレースでは何が何でも相手の前に出なければいけなかったので……『接触してペナルティが出るかもしれない』とか『クルマが壊れてリタイアになるかもしれない』とか、そういう無駄なことを一切考えない気持ちの強さが必要でした」(山下)
接触の影響でマシンに振動が出ており、リタイアの心配もあったという山下だが、最後までしっかりと走りきり、このレースを2位でフィニッシュ。2019シーズンの王座を勝ち取った。
38周目の攻防戦は同時に今シーズンのチャンピオン争いが決するハイライトというべき良い瞬間で、意地と意地がぶつかり合った近年稀に見るバトルだった。
過去、様々な名バトルが展開されてきたSUPER GT。ここに“後世に語り継がれる名バトル”がまたひとつ誕生した。
■放送情報
第8戦の激戦をもう一度!
・SUPER GT 2019 ダイジェスト 第8戦ツインリンクもてぎ
12月4日(水) 午後10:45 - 午後11:00 J SPORTS 3/J SPORTSオンデマンド
リピート多数あり https://www.jsports.co.jp/program_guide/05/05/84722_3223908/
・【モータースポーツ ベストレース】SUPER GT 2019 第8戦 ツインリンクもてぎ(予選)
12月6日(金) 深夜2:00 - 深夜3:30 J SPORTS 3/J SPORTSオンデマンド
・【モータースポーツ ベストレース】SUPER GT 2019 第8戦 ツインリンクもてぎ(決勝)
12月7日(土) 深夜1:30 - 午前4:30 J SPORTS 3/J SPORTSオンデマンド
★1/2(木)~1/8(水)SUPER GT 2019全戦を一挙放送!お見逃しなく!!
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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