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世界的に注目が高まっている電気自動車レース「FIAフォーミュラE選手権」はいよいよシーズン6(2019年〜20年)がスタートします。2019年11月から2020年7月まで開催されるシーズン6を「J SPORTS」では全戦オンエア。11月22日(金)23日(土)にサウジアラビアのディルイーヤ市街地サーキットで行われる予選、決勝の模様から生放送でお送りします。
さて、大激戦となったシーズン5を制したのは、2年連続での王座獲得となった元F1ドライバーのジャン・エリック・ベルニュ(DSテチータ)。シリーズ史上初の連覇を成し遂げました。そして、チームチャンピオンはベルニュとアンドレ・ロッテラーのコンビで中国籍のチーム「DSテチータ」が獲得。フランスのDSオートモービルのパワートレインが初めてドライバーズ王者、チーム王者に輝いたのです。
ニューマシン「Gen2」の投入により、スポーティングレギュレーションも変更され、全く別のレースへと生まれ変わったフォーミュラE。今季はHWAが「メルセデスベンツ」のワークスチームになり、耐久王と呼ばれた「ポルシェ」がフォーミュラEにワークス体制で初参戦します。シーズン6は「アウディ」「メルセデスベンツ」「DSオートモービル」「ポルシェ」「ジャガー」「日産」「BMW」「マヒンドラ」と8つの自動車メーカー系のチームが揃うことになりました。
中でも注目は「ポルシェ」の参戦。2017年でル・マン24時間レースの総合優勝を争うWEC(世界耐久選手権)/LMP1クラスから撤退し、フォーミュラE参戦の準備を進めてきました。ドライバーはル・マン24時間ウイナーのニール・ジャニとアンドレ・ロッテラーのポルシェワークスドライバー2人を起用します。「ポルシェ」のフォーミュラカーレースへの参戦というとF1での「フットワーク・ポルシェ」以来、実に28年ぶりのこと。フルワークスチームとしての参戦は1964年のF1撤退以来で、なんと55年ぶりということになります。
スーポーツカーメーカーとして耐久レースで名を馳せてきた「ポルシェ」がフォーミュラEに参戦することになった背景には、ヨーロッパの自動車メーカーが一気に電気自動車(EV)に舵を切ったことにあります。ハイパフォーマンスブランドである「ポルシェ」もその流れに逆らうことなく、今年9月に初となる電気自動車タイカンをリリース。まさにそのタイミングに合わせるかのように参戦します。
しかし、彼らも「ゼロからの挑戦」と謳っている通り、既存のフォーミュラEチームのような過去の参戦データの積み重ねが無いため、参戦初年度は強烈な速さは見せてこないかもしれません。それでも10月にスペインのバレンシアサーキットで行われたテストではトップから1秒以内のタイムを刻んでおり、シーズン途中から急激に躍進する可能性も秘めています。まずは「ポルシェ」に注目です。
そして、「メルセデスベンツ」は昨シーズンはセミワークスとも言える「HWA」がストフェル・バンドーン、ゲイリー・パフェットを擁して参戦し、準備を経てのワークス参戦となります。今年のドライバーはストフェル・バンドーンに加えて、F2王者のニック・デ・ブリースを起用。GP2/F2チャンピオンのコンビの速さは非常に楽しみです。
とはいえ、「メルセデスベンツ」もフォーミュラEは初参戦であり、バンドーンとルーキーのデ・ブリースはコースを含めてまだまだ経験不足。どこまでの実力を示せるかは未知数です。昨年のHWAはヴェンチュリのパワートレインを使用してきましたが、昨年1勝をあげた「ヴェンチュリ」にも逆にメルセデスのパワートレイン、冷却システムなどを含めた同じ仕様のマシンを供給することになっており、エドアルド・モルタラとフェリペ・マッサがドライブします。つまりは「メルセデスベンツ」「ヴェンチュリ」の4台体制になることで、データの蓄積を行い、開発スピードを高めていこうという狙いです。
そして、日本代表の「日産」はシーズン5のランキング2位を獲得したセバスチャン・ブエミとオリバー・ロウランドのコンビを継続。終盤戦の追い上げて1勝を挙げてチームランキング4位を得た昨シーズンを超える成績を狙います。昨年は予選での速さが光り、2人合わせて5回のポールポジションを獲得しましたが、今季は日産が使用したツインモーターが使用禁止になり、アドバンテージを失う可能性があります。レースは常に荒れるフォーミュラEではありますが、やはり予選で上位グリッドにつけることは勝利への近道であることは変わりませんから、予選での速さと信頼性を手にすることができれば、ドライバーラインナップからしてもチャンピオンを争える可能性は充分にあるでしょう。
また、昨年のチャンピオンチーム「DSテチータ」にはジャン・エリック・ベルニュに加えて、「BMW」からアントニオ・フェリックス・ダコスタが移籍。昨年も度々速さを見せ、ストリートコースを得意とするダコスタの加入で、ディフェンディングチャンピオンの「DSテチータ」は今年もシーズンの主役になっていきそうです。
今季は12チーム24台に台数が増加したフォーミュラE。開幕戦のディルイーヤは2レースで行われることになり、今季は史上最多のレース数となる全12ラウンド14レースで争います。学生らによるデモが深刻化する香港でのレース、モナコ市街地、スイスでの3レースがカレンダー落ちし、新たに韓国のソウル市街地のレース、そしてインドネシアでのジャカルタ市街地でのレースが開催されます。さらに4年ぶりとなるイギリスのロンドン市街地でのレースが最終戦として2レース制で設定されているなど、Gen2シャシーでのデータがないコースが3つ。今年も混戦は必至のシーズンになりそうです。
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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