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モーター スポーツ コラム 2019年9月11日

SUPER GT第6戦レビュー

SUPER GT by 秦 直之
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気まぐれな天候を味方につけた、DENSO KOBELCO SARD LC500が優勝飾る

全8戦で争われるSUPER GTも、6戦目を迎えていよいよ終盤戦に突入した。舞台となる九州のオートポリスは高低差の激しいテクニカルコースとして知られ、また今回まで獲得したポイントの2倍がウエイトハンデとなる戦いだ。レイアウトそのものが重い車両に、様々な負担を抱えさせるため、ランキング上位陣には厳しい一戦となるのは必至であった。
さらにふたつも発生した台風の、直接の影響こそ受けなかったものの、台風一過で大気が不安定になったことが、決勝レースにさまざまなドラマをもたらした。まさに「お天道様」をも味方につけ、GT500ではDENSO KOBELCO SARD LC500のヘイキ・コバライネン/中山雄一組が、そしてGT300ではSYNTIUM LMcorsa RC F GT3の吉本大樹/宮田莉朋組が劇的な優勝を飾っている。

予選はやはりNSX勢強し! KEIHIN NSX-GTがポールポジションを獲得

いろいろ天候が心配されたオートポリスでの第6戦だが、こと予選は9月らしい穏やかなコンディションの下での走行となった。GT500のQ1トップは、KEIHIN NSX-GTのベルトラン・バゲットが獲得。KEIHIN NSX-GTは公式練習でもトップで、仕上がりも上々のよう。続くQ2を担当した塚越広大もトップタイムをマーク、2番手につけたARTA NSX-GTの伊沢拓也にコンマ7秒もの差をつけ、ポールポジションを獲得することとなった。 「セットアップが公式練習から順調に進み、Q1でバゲットがトップに立ってくれたので、僕はプレッシャーを受けながらQ2に挑みましたが、しっかりタイムを出せて良かった。結果には結びつかなかったけれど、タイのレースでいいセットが見つかり、それがきっかけで全体的にいい方向に持ってこられたんじゃないかと。ドライバーふたり、そしてチームと全力を発揮して優勝したいと思います!」と塚越。
2番手はARTA NSX-GTの野尻智紀と伊沢が獲得し、今年もNSX勢でフロントローを独占。3番手はリアライズコーポレーションADVAN GT-Rの佐々木大樹とヤン・マーデンボローで、4番手はau TOM’S LC500の中嶋一貴と関口雄飛が獲得。そして5番手にDENSO KOBELCO SARD LC500がつけていた。
一方、ランキングトップにつけるWAKO’S 4CR LC500の大嶋和也と山下健太は、14番手と下位に低迷。だが、ウエイトハンデは上限の100kgを超えているため、これはやむを得まい。決勝でどこまで粘って順位を上げてくるか注目された。

GT300では、HOPPY 86 MCを駆る韋駄天、松井孝允が今季3回目のポールポジションを獲得。公式練習でABS(アンチロックブレーキシステム)にトラブルが発生し、満足に周回を重ねられなかったにも関わらず、Q1で佐藤公哉が8番手で無事突破。「いきなり予選でニュータイヤという状況の中、メカニックがトラブルをきっちり修復してくれたとはいえ、いつもQ1を通ってきてくれる佐藤選手は、相方としてとても頼りになる存在」と松井。感謝の思いは、しっかりタイムに表れた。松井はオートポリスで3年連続ポール、あとは決勝でいかに結果に結びつけるか。
2番手は前回のポールシッター、埼玉トヨペットGBマークXの脇阪薫一と吉田広樹が獲得し、マザーシャシー(MC)勢がフロントローを独占。3番手には徐々に進化がうかがえるD’station Vantage GT3の藤井誠暢とJ.P.デ・オリベイラがつけ、JAF-GT勢の上位独占を阻止。そして4番手には、SUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人と山内英輝がつけていた。ランキングトップのARTA NSX GT3を駆る、高木真一と福住仁嶺は6番手。重さを考えれば、かなりの好位置からのスタートとなる。

リアライズコーポレーションADVAN GT-Rがトップに浮上。だが……

決勝レースを前にして、サーキット上空は雲の切れ間から青空がのぞいていたものの、問題はその雲だった。その理由として、「スタートからしばらくすると雨が降る」という天気予報が出ていたことによる。最終コーナー側の雲は白いのだが、1コーナーの雲はどす黒く、なるほどいつ降り始めてもおかしくなかった。実際に降るとすれば、どのタイミングか?
さて、カルソニックIMPUL GT-Rにドライバー変更が。ジェームス・ロシターにドクターストップがかかり、急きょ千代勝正が起用されることに。レース中に10秒ストップのペナルティが課せられるため、勝負権は失われるが、極めて異例の事態となった。
注目の決勝で、まず1コーナーへのホールショットを決めたのは、2番手スタートのARTA NSX-GTの伊沢だった。しかし、KEIHIN NSX-GTの塚越も負けてはおらず、3コーナーですぐトップを奪い返す。再びトップに立ってからの塚越は、オープニングの1周だけで2秒のリードを獲得し、早くも逃げの構えに打って出る。その後方はやや渋滞気味。ARTA NSX-GTの後ろには、リアライズコーポレーションADVAN GT-Rのマーデンボロー、au TOM’S LC500の中嶋一貴、DENSO KOBELCO SARD LC500のコバライネンらがピタリと食らいついていたからだ。
ところが、3周目からセーフティカーが導入される。RAYBRIG NSX-GTの山本尚貴がセクター3、ブリッジ手前のコーナーでクラッシュ。コース脇にマシンを止めていたためだ。山本は無傷で降りていたものの、ダメージは大きく、連覇に向けて赤信号がついに灯る。
7周目からレース再開。塚越が鋭いダッシュを決めて、伊沢らを寄せつけず。わずかにリードを失うに留めていた。12周目にはGT300のバックマーカーをうまく使った、マーデンボローが2番手に浮上。その一方で、伊沢の後ろは依然として渋滞状態が続いていた。
だが、その均衡は15周目、3コーナーで中嶋一貴が伊沢をかわして崩される。次の周にはコバライネンも伊沢をパス。続いてCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの平手晃平も伊沢に迫るが、その逆転は許さず。その一方で、1コーナー付近ではポツリポツリと雨が! 天気予報どおりだったということか。同じ頃、平手にKeePer TOM’S LC500のニック・キャシディが迫るようになり、5番手争いがより激しさを増す。
21周目、1コーナーの雨が突然勢いを増し、水しぶきさえ上がることに。ただし、3コーナーからはまったく雨は降っていない。まだタイヤを変えるわけにはいかず。22周目の1コーナーで静かに近づいていた、ZENT CERUMO LC500の立川がまずキャシディをパス。だが、3コーナーではキャシデイが立川だけでなく、平手をもまとめて抜き去っていく。勢いに乗るキャシディは、24周目に伊沢をついにかわして5番手に浮上する。

チーム全体の力で、DENSO KOBELCO SARD LC500が逆転優勝

その間にもKEIHIN NSX-GTの塚越は盤石の状態。やがて1コーナー付近の雨はやんだこともあり、より危なげない走りを見せていた。30周目、5番手のKeePer TOM’S LC500が上位では最初にピットインし、平川亮への交代と併せドライタイヤに交換。その直後のことである。いったんはやんだ雨が、今度はコース全域で降り始める。34周目、続いてau TOM’S LC500もピットイン。関口もまたドライタイヤを選択する。その直後にセクター3で大雨が! 35周目にKEIHIN NSX-GTがピットイン。バゲットへの交代と併せてドライタイヤを装着するも、続いて入ってきたZENT CERUO LC500や、DENSO KOBELCO SARD LC500はウェットタイヤに交換して石浦宏明、中山をコースに送り出す。この判断が、どう出るか? また、コース復帰にZENT CERUMO LC500は手間取ったこともあり、DENSO KOBELCO SARD LC500が前に出る。
そして、その直後に2回目のSCランが……。急に雨足が強まったため、GT300にクラッシュ車両があったためだ。この間にトップに浮上したのは、リアライズコーポレーションADVAN GT-R。マーデンボローは41周目のリスタートと同時にピットに入り、高星明誠に代わる。選んだタイヤはドライ。これでトップには、ついにDENSO KOBELCO SARD LC500の中山が立ち、2番手はZENT CERUMO LC500の石浦。一方、早めにドライタイヤを選んでいた、KEIHIN NSX-GTは43周目にウェットタイヤに再交換したこともあり、大きく順位を落としていた。
しかし、ドラマはこれに終わらず、44周目から3度目のSCランが実施される。またもGT300車両のコースアウトがあったためだ。リスタートは50周目。トップのDENSO KOBELCO SARD LC500の中山にとってラッキーだったのは、真後ろにドライタイヤを履いていたバックマーカーがいたこと。ペースを上げられず、後続が封じ込められている間に差を一気に広げたからだ。再びスタンド前を通過した時点で、中山はZENT CERUMO LC500の石浦に12秒もの差をつけていた。
一方、リスタートと同時にau TOM’S LC500はウェットタイヤに交換したが、その後雨はやんで路面が予想以上に早く乾いていったため、順位を落とすこととなる。逆に早めにウェットタイヤに戻していたKEIHIN NSX-GTのペースが速い。53周目の第2ヘアピンでは、石浦をバゲットがかわして2番手に浮上。だが、この頃、雨は完全にやんでいた。
同じウェットタイヤでも、周回数や状態の違いもあって、バゲットはトップの中山にも迫っていったが、あと3秒7及ばず。DENSO KOBELCO SARD LC500とコバライネンが久々の優勝を飾り、中山はGT500での初優勝を達成することとなった。2位はKEIHIN NSX-GTで、ドライタイヤで粘ったKeePer TOM’S LC500が最終ラップだけで3台をかわして3位に。一方、WAKO’S 4CR LC500は6位でゴールして、ランキングのトップをキープした。

「今回は天候がめまぐるしく変わって、自分が降りた後の展開はまったく予想がつかなかった。フィニッシュするまでどうなるか分からなかったから今回勝てて、すごく嬉しい。僕はミスせず走っただけ。すごい楽しいスティントでもあったよ」(ヘイキ・コバライネン)
「今年はレクサス勢が好調な中、SARDだけが思うような結果を残せずにいたのですが、今回は普通こうはしないだろう、というセットがバッチリ合って。ヘイキさんの走りもすごかったですし、僕が出ていった時、ピットは大渋滞で。でも、タイミングが最高で、ピットの作業も完璧でZENTの前に出られたので、チーム全体で得た勝利になりました。リスタートが完璧で、追いついてくるまではタイヤを温存して走ろうと思っていたんですけど、ブリヂストンのタイヤはGT300の頃から経験していたので、こういうコンディションの中でも信頼して走れました。今日は本当に嬉しいです!」(中山雄一)

レース序盤はグッドスマイル初音ミクAMGがリードしたGT300

GT300はHOPPY 86 MCの佐藤が、埼玉トヨペットGBマークX MCの脇阪を抑えて、トップからレースを開始。3番手にはSUBARU BRZ R&D SPORTの山内がつけ、4番手はグッドスマイル初音ミクAMGの片岡龍也。逆にD’station Vantage GT3のオリベイラは、オープニングラップのうちに5番手に後退していた。  そのまま逃げようとしていた佐藤ながら、最初のSCランでせっかく築いたリードが水の泡に。だが、そのSCランでSUBARU BRZ R&D SPORTがついていけず。駆動系トラブルに見舞われたため、やがて後続に道を譲ってピットイン。ファンシートが設けられるほど、地元九州に多くのファンを持つ、井口にバトンを託すことなくレースを終える。
リスタート後、佐藤、脇阪、片岡による三つ巴のトップ争いが繰り広げられる。いや、それだけでなく、やがてオリベイラやエヴァRT初号機X Works GT-Rのショーン・トン、さらにARTA NSX GT3の高木らも続くようになって、まるで隊列が組まれたような状態となる。この中で、まず動いたのが脇阪だった。12周目の1コーナーで佐藤を抜いて、トップに浮上。第1ヘアピンでは片岡も続いて2番手に。第2ヘアピンで佐藤は、オリベイラにも抜かれて4番手に退くこととなる。
代わって激しく競われたのが、埼玉トヨペットGBマークX MCの脇阪、そしてグッドスマイル初音ミクAMGの片岡によるトップ争いだ。これにD’station Vantage GT3のオリベイラを加えたあたりから、雨が降り始める。それが影響したのか17周目、1コーナーで片岡がトップに浮上。そして、3コーナーではオリベイラも脇阪を抜いて2番手に躍り出る。一方、その後方では20周目にARTA NSX GT3の高木が5番手に浮上していた。高木は次の周にHOPPY 86 MCの佐藤を、さらには脇阪もパス。その脇阪は23周目に早くもピットイン、吉田への交代と合わせ、ドライタイヤに交換する。
一方、トップを行く片岡は好調そのもの。1コーナーの雨がやんでからは、さらにリードを広げていく。4番手を行くHOPPY 86 MCが27周目にピットイン。松井孝允への交代と併せ、ドライタイヤに4本とも交換する。しかし、その直後にまた雨が降り始める! 30周目、2番手のD’station Vantage GT3がピットイン。藤井に代わる際にドライタイヤに敢えて換えるも、インパクトレンチのトラブルか、交換に手間取って、大きな遅れを取ってしまう……。

気まぐれな天候変化を、完璧に味方につけてSYNTIUM LMcorsa RC F GT3が逆転優勝

GT300では30周目を超えたあたりから雨が強くなり、ピットインが相次ぐように。まず動いたのがARTA NSX GT3で32周目、ウェットタイヤを装着する。しかし、ピットを離れる際に福住はGT500車両と接触してしまう。その直後にSCが入ったことは、果たして吉か凶か? 依然としてトップはグッドスマイル初音ミクAMGの片岡ながら、SCラン明けはタイヤの違う車両が混在していたこともあり、大渋滞が起こって、その間にARTA NSX GT3の福住はトップに躍り出る。
40周目、先の大渋滞で順位を落としていたグッドスマイル初音ミクAMGが、片岡から谷口信輝に代わる際にウェットタイヤに交換。そして、同じ周に予選12番手から、人知れず2番手にまで上がっていたSYNTIUM LMcorsa RC F GT3が宮田から吉本に交代。飯田章監督の判断は、なんとドライタイヤへの交換! しかし、その直後にコースアウトした車両があって、3度目のSCランが行われたため、谷口も吉本もタイミング悪く順位を落としてはいた。
一方、2番手に上がっていたのは、マネパランボルギーニGT3の小暮卓史。予選22番手からのレース開始だったものの、スタートを担当した元嶋佑弥がじわりじわりと追い上げていたことが、功を奏した格好だ。3番手はK-tunes RC F GT3の新田守男で、4番手はなんと19番スタートだったMcLaren 720Sのアレックス・パロウ。今回は予選の結果など、あってなかったような印象だ。
リスタートをしっかり決めた福住の後ろでは、パロウが新田を1コーナーでかわして3番手に。雨に強いマクラーレンの、まさに面目躍如だ。そして、ARTA NSX GT3にはドライビングスルーペナルティが命じられる。やはりピットでの接触が危険行為と判定されたのだ。これにより事実上のトップに小暮が浮上。しかし、パロウが背後につけて激しいバトルを繰り広げる。そして51周目にARTA NSX GT3がピットに。それでもなんとか福住は4番手に踏み留まる。
小暮、パロウ、新田のトップ争いはなおも続き、GT500が独走状態にあっただけに、観客の視線は釘づけに。しかし、まだ誰もSYNTIUM LMcorsa RC F GT3の吉本が、他を圧するペースで走り始めていたことに気づいていなかった。すでに雨は上がって、路面が一気に乾いていたからだ。10番手にまで落ちていた吉本のオーバーテイクショーが、残り8周から開始される。
57周目の第2ヘアピンでパロウはトップに浮上。ピットで見守っていた荒聖治も、きっと勝ちを確信したことだろう。ところが、それから2周後にまさかの吉本が! 背後につけると抗う術もなく、パロウは第1ヘアピンで吉本にトップを明け渡してしまう。飯田監督のギャンブル大正解。吉本は100戦目のレースで久々の優勝を飾り、宮田にとってはこれが初優勝となった。
McLaren 720S、マネパランボルギーニGT3に続いて、4位でゴールしたのはグッドスマイル初音ミクAMG。最終ラップにK-tunes RC F GT3をかわしていた。これに続く6位でARTA NSX GT3がゴールし、やはりランキングのトップをキープした。ただし、ランキング2位に急浮上したマネパランボルギーニGT3との差は、一気に5ポイントにまで短縮。まだまだ予断は許されそうもない。

「LMcorsaで、このRC Fでは開発期間を含め、長いこと苦労していたんですが、今回は監督のアキラさんが素晴らしいジャッジをしてくれて、序盤は莉朋が若者らしくない走りで繋いでくれて。あとは天候とすべての運がはまって、勝てる時はこんなに簡単に勝てるのか、と思うぐらい。ホッとしましたけど、チームのみんなに『おめでとう』と言いたいです」(吉本大樹)

「まさかこんな展開になるとは思いませんでしたが、去年からこのチームに加わって、みんな勝ちにこだわって、なかなか勝てませんでした。決してすごく速くはなかったですが、ダンロップタイヤの特性を活かして、ついに勝つことができました!」(宮田莉朋)

文:秦 直之

秦 直之

秦 直之

大学在籍時からオートテクニック、スピードマインド編集部でモータースポーツ取材を始め、その後独立して現在に至る。SUPER GTやスーパー耐久を中心に国内レースを担当する一方で、エントリーフォーミュラやワンメイクレースなど、グラスルーツのレースも得意とする。日本モータースポーツ記者会所属、東京都出身。

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