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「FIMスーパーバイク世界選手権」は約2ヶ月のサマーブレイクを経てシーズンが再開。第10戦の舞台はポルトガルのアルガルヴェ・インターナショナルサーキットです。「J SPORTS」では9月6日(金)〜8日(日)に開催される第10戦の模様を9月9日(月)にオンエアします。
さて、この長いサマーブレイクの間に様々なことがありました。まず、鈴鹿サーキットで開催された「鈴鹿8耐」には数多くのスーパーバイクライダーが出場しましたね。最後はコース上に出たオイルに乗ってジョナサン・レイ(カワサキ)が転倒し、赤旗終了。ヤマハ優勝という形で表彰式が行われたものの、急転直下でカワサキワークスの優勝に結果が覆るという何とも後味の悪い幕切れとなりました。しかし、ジョナサン・レイ、レオン・ハスラム、トプラック・ラズガットリオーグルという3人のスーパーバイクトリオが走り、スーパーバイク世界選手権のフルワークス「Kawasaki Racing Team」での参戦というドリームチームで26年ぶりの優勝という快挙を成し遂げました。
スーパーバイク世界選手権でランキング首位に立ち、ノリノリの状態で鈴鹿にやってきたジョナサン・レイは気持ちよくサマーブレイクを過ごし、残り4戦に挑みます。そして、優勝したカワサキに対抗したヤマハワークスに乗ったアレックス・ロウズ、マイケル・ファンデルマークも鈴鹿8耐ではさらなる進化ぶりを見せました。一方でホンダワークスに乗った清成龍一は残念ながら決勝では出番なし。その反面、光り輝いたのは全日本JSB1000の王者でもある高橋巧でした。
その高橋巧が今回の第10戦・ポルトガルにスポット参戦することになりました。レギュラーのレオン・キャミア(ホンダ)の怪我の回復がまだ万全ではなく、高橋巧を代役で起用することになったのです。高橋巧(ホンダ)は来季以降の「スーパーバイク世界選手権」へのフル参戦も噂されており、8月末のテストに続いての代役参戦決定ということは、いよいよその噂が現実になる流れなのかと推測されます。
また、もう1つ大きなニュースが。カワサキとチャンピオンを争うドゥカティの来季ラインナップが早くも発表され、元MotoGPライダーで今季は英国スーパーバイク選手権を戦うスコット・レディングの加入が決定。チャズ・デイビス(ドゥカティ)の残留もあわせて発表され、ランキング2位のアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)は1年せずにチームの離脱が決定しました。
アルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)は新型パニガーレV4Rのポテンシャルを存分に発揮し、開幕11連勝を含む14勝をマーク。前半戦の台風の目となりましたが、以前からMotoGPへの復帰が噂されていました。彼の去就はまだ発表にはなっていませんが、離脱が決まったからと言って、そこはワークスライダーですから残り4戦も攻めた走りを見せてくれるでしょう。ただ、バウティスタは前戦・アメリカのスーパーポールレースで肩に怪我を負ってしまい、まだ本調子ではない模様です。
そんな中で迎える第11戦・ポルトガルを前に改めて現在のランキングを見ていきましょう。首位はジョナサン・レイ(カワサキ)=433点。シーズン中盤から9勝を飾り、リタイアは一度もなし。表彰台を逃したのは全28レース中わずかに3回だけという安定ぶり。王者らしい引くところは引く戦い方で着実にポイントを稼いでいます。
ランキング2位はアルバロ・バウティスタ(ドゥカティ)=352点。ルーキーながら14勝を飾っていますが、第7戦・ミサノのスーパーポールレース以来、勝利から遠ざかっており、それ以降は3位表彰台が1回だけ。取りこぼしが多く、レイからは81点もの差を付けられてしまいました。残り12レースあるとはいえ、残りの12レースを全て優勝しても、レイが全て2位に入ればバウティスタは逆転することができません。レイの安定ぶりを考えると厳しい戦いと考えられる条件です。
ランキング3位と4位は接近しています。ランキング3位がアレックス・ロウズ(ヤマハ)=220点、4位がマイケル・ファンデルマーク(ヤマハ)=215点。トップ2からはかなりポイント差があるのでこちらは現実的にはチームメイト同士による年間ランキング3位争いといった様相です。どちらも表彰台からしばらく遠ざかっていますので、そろそろ先ずは表彰台。そして残りのレースで1勝はしたいところでしょう。
ランキング5位はレオン・ハスラム(カワサキ)=202点。6位はトプラック・ラズガットリオーグル(カワサキ)=191点。こちらもその差は僅か11点差という接戦です。片やワークスライダーのハスラムとサテライトチームのラズガットリオーグル。どちらが最終的にランキングが上になるのかも終盤戦の注目どころでしょう。鈴鹿8耐ではラズガットリオーグルには決勝での出番なしでしたが、ハスラムはレースで優勝に大きく貢献。スーパーバイク世界選手権での勢いはラズガットリオーグルにあります。今やどこのメーカーも天才的なレーサーであるラズガットリオーグルは気になっている存在のはずですから、来季の去就も含めて注目したい争いです。
10月末まで続く「スーパーバイク世界選手権」の終盤戦。チャンピオン争いの行方、ランキング争いの行方を大きく決定づけるポルトガルの戦いは見逃せませんよ!
文:辻野ヒロシ
辻野 ヒロシ
1976年 鈴鹿市出身。アメリカ留学後、ラジオDJとして2002年より京都、大阪、名古屋などで活動。並行して2004年から鈴鹿サーキットで場内実況のレースアナウンサーに。
以後、テレビ中継のアナウンサーやリポーターとしても活動し、現在は鈴鹿サーキットの7割以上のレースイベントで実況、MCを行う。ジャーナリストとしてもWEB媒体を中心に執筆。海外のF1グランプリやマカオF3など海外取材も行っている。
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